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電力メーターについて ~検定制度と有効期間、その進化

先日、近所へ買い物に出かけた折りに、電力量計の取替工事を見かけました。戸建住宅でしたので、関西電力送配電さんのものだと思われます。
同計量器は、「電力メーター」の名前で呼ばれることが多いかもしれません。

作業者の方は実に手際よく作業をなされており、買い物を済ませた帰路、同じ家の前を通ったときには既に作業が終わっていました。
その間、おそらく15分もなかったように思います。

電力量計(電力メーター)

ご家庭の例でいうと、電気の供給で使用される電力メーターは、引込線が接続されている付近(戸建住宅)や、玄関扉付近の機器ボックスなど(集合住宅)に設置されていることが多いかと思います。

透明なカバーがついた地味な灰色の箱に入っており、普段、気にかけることがない機器だと思いますが、電力メーターは使用料金などの算定の基となる電力使用量を計測する大切な装置です。

ということで、出会いがあったので、電力メーターについて少し振り返ってみることにしました。

(引用)「電気の計量制度について」@資源エネルギー庁ウエブサイト

(参考URL)
 ・「電気の計量制度について ~計量法に定める特定計量器として計量法の適用を受けるものの範囲」 @資源エネルギー庁https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/measure/faq/001.html

電力メータ今昔

シニアの方だとご記憶にあるかなと思いますが、30年ぐらい前までは、中に銀色の円盤があって、その円盤が電気の使用量に応じてクルクル回って使用量をカウントするという仕組みの電力メーターが中心でした。
電気の使用量が多くなると、メーターの数値表示の変化とあわせて円盤の回転が速くなりましたので、たくさん電気を使っているときは、ひと目でわかりました。
小気味好くクルクル回る円盤が、どことなく可愛らしい装置であったようにも思います。

その後、時代とともに電力メーターの電子化・デジタル化が進みました。
現在ではご家庭に設置されている電力メーターのほぼ全てが、30分ごとの電力使用量の計測とその情報の遠隔取得(自動検針)が可能な「スマートメーター」になっています。
また、「ユニット型」と呼ばれる設計の電力メーターでは、計量、通信、開閉といった機能がそれぞれユニット化されてひとつの計量器の箱の中に納められており、個別のユニットの取付け取外し/取替ができるようになっています。

新旧のメータの「顔写真」が、こちらのウエブサイトに掲載されていました。
純実用機器でありながら、エネゲートさんの「メーター歴史館」に見る電力メーターの顔には、趣を感じてしまいます。

(参考URL)
 ・「スマートメーター」 @関西電力送配電さん
https://www.kansai-td.co.jp/technology/smart-meter.html

 ・「メーター歴史館」 @エネゲートさん
https://www.enegate.co.jp/now/mater_history/index.html

計量法にもとづく検定と更新

皆さんは計量器(メーター)の「検定」について、お聞きになられたことがありますでしょうか。

需要家保護の観点を含む制度として、料金の徴収など取引又は証明(以下、「取引等」)に使用される計量器については、計量法により、検定等に合格したことを証する検定証印(又は基準適合証印)が付され、かつ、検定証印等の有効期間内のものを使用しなければならないことになっています(計量法第16条)。

 ※同法第2条第2項において、「取引」とは、「有償であると無償であるとを問わず、物又は役務の給付を目的とする業務上の行為」をいい、「証明」とは、「公に又は業務上他人に一定の事実が真実である旨を表明すること」と規定されています。

そのため、電気の使用に支障が生じないように、通常は有効期限が過ぎる前に現地での取替えが行われます。この点は、水道メーター、ガスメーター等も同じです。
出かけた折に目にした今回の取替工事も、おそらくこの有効期間満了に伴うものだったのでしょうね。

(参考URL)
 ・「電気の計量制度について」 @資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/measure/faq/001.html

 ・「電気計量制度に関するQ&A」 @資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/measure/faq/

集合ビルでテナントごとに設置する電力メーターなども対象

冒頭にお話したような、電気事業者が設置・管理し、取引等に使用される電力メーター(親メーター)だけではなく、貸しビル、アパート、分譲・賃貸マンションなどにおいて、それとは別に施設管理者等が設置・管理する電力メーター(子メーター)を使って各室(各テナント)の使用量に応じた費用配分を行う場合も※、同法の規定に該当します。
検定証印等がついた有効期間内のメーターを使用しなければなりません。

 ※電気事業者が各戸個別にメーターを設置するケースも多くあります。

(参考URL)
 ・「子メーターの取扱い」 @経産省
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/measure/faq/011.html

電力メーターの検定証印等の有効期間

有効期間は、次のように計量の対象や機器の仕組みなどによって異なります。
詳しくは参考URLより規定内容をご確認くださるよう、お願いします。

(参考URL)
 ・「電気の子メーター(証明用電気計器)の有効期限について」 @近畿経済産業局
https://www.kansai.meti.go.jp/3-9kaihatsu/keiryou/171120keiryou.html

 ・「計量器の有効期間にご注意ください」 @経産省ウエブサイト
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/11_gaiyou_tani6.html

特定計量制度(2022年4月施行)

事前届出が必要であるなど一定の要件がありますが、上述の検定制度の適用外となる場合もあります。「特定計量制度」を利用したケースがそれです。

特定計量制度は、太陽光発電や蓄電池、電気自動車等の分散型リソースの普及にあわせて導入された制度で、家庭等の分散リソースを活用した新たな取引等に限り、事前に届出を行なった事業者に対し、適切な計量の実施を確保し、使用する特例計量器の精度の確保や需要家への説明を求める等、一定の要件を満たした電力量の取引等においては、「特例計量器」※の計量値を使用できるようにする制度です。
一定の基準をみたした、例えば、太陽光発電設備のパワーコンディショナーや電気自動車充電設備に内臓された電力メーターが特例計量器として使用され、それらは計量法の定める検定制度の適用から除外されます。

 ※計量法2条4項で定める「特定計量器」と単語が似ているので、ご注意ください。

(参考URL)
 ・「特定計量制度に基づく電気の計量について」 @資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/measure/tokutei/index.html

メーターの進化

主役の電力メーターにも、通信性能や作業性の向上など進化がみられます。

例えば、関西電力送配電さんなど一般送配電事業者の使用する電力メーターについては、新たに全国10社共通仕様が決定されしました。
「電力レジリエンスの強化」や「需要家利益の拡大」、「新たなビジネスモデルの構築」等、社会便益の増大と効率的な設備形成・運用に資するツールとして活用できるよう、メーターの性能向上やコスト低減の取組み、標準化が進められ、「次世代スマートメーター」として、2025年度からの使用(設置)が予定されています。

(参考URL)
 ・「【知っトク!送配電】次世代スマートメーターの仕様検討」 @送配電網協議会
https://www.tdgc.jp/information/2022/06/02_1000.html

メーターの歴史

計測・計量の仕組みは科学とともに進化を続け、法制度も政治経済の変化・拡大とともに歴史を刻んできたようです。

電力メーターに限られた内容ではありませんが、ネット検索すると計測工学を含め、計量・計量器に関する様々な情報に出会うことができます。
参考までに以下のURLをご紹介します。
人間の創意工夫の歴史、その一面をたどる端緒として頂ければ幸いです。

(参考URL)
 ・「計量の歴史について」 @堺市
https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/shohi/keiryo/zatugaku/measurement-history.html

 ・「計量の歴史」 @大阪府
https://www.pref.osaka.lg.jp/o110120/keiryo/rekisi2023/index.html

 ・「知られざる「計量」の奥深い世界。社会・経済活動を支える科学の力」 @METI Journal
https://journal.meti.go.jp/p/32322/

電気関係業界の健全な発展のために

適正な計量は、生活の安心・安全と経済活動の信頼性確保に、とても大切な役割を担っています。
普段意識しないところですが、目に見えない電気・電力の量を計る「電力メーター」の信頼を守ることは、電気関係業界の健全な発展のために必須の前提であることを改めて感じました次第。
電力メーターの取替工事をされていた作業員の方に感謝です。

本日は、電力メーターについて振り返ってみました。

~振り返りウエブサイト訪問/読本。


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