「ヒートポンプ」~少ないエネルギーで未利用エネルギーをしっかり活用
その環境性や経済性だけでなく、エネルギー安全保障にも通じる手段として、欧米ではあらためてヒートポンプに注目が集まっています。
ヒートポンプとは
簡潔に言うと、部屋の中から部屋の外(屋外)へ・・・というように、片方から熱を集めて、それをギュギュっと圧縮して他方へ熱を送り込む、「熱移動ポンプ・システム」のことだと考えて頂ければよいと思います。
身近なところでは、エアコンがヒートポンプの仕組みを使っていますので、ここでは、エアコン冷房を例として、順を追ってシステムの骨格となる部分の働き/役割を見て行きゆきます。
挿し絵とあわせてご覧ください。
熱を冷媒に集める(蓄える)
まず、氷が周囲の空気の熱を得て溶け出すように、熱は温度の高い所から低い所に向かって流れ込むので、その性質を使って、部屋の中の空気にある「熱」が、室温より低温になっている「冷媒」と呼ばれるガスに、「熱交換器」を介して集められます。
熱の伝導をよくするため、熱交換器は、銅管やアルミ板などを使って作られています。
圧縮して冷媒の温度を高くする
ヒートポンプでは、その熱を蓄えた(乗せた)冷媒を、「圧縮機」を使ってギュギュっと圧縮することで、高い温度にします。
冷媒から熱を放出させる
そして、高い温度になった冷媒を、冷媒よりも温度が低い大気がある屋外に運び、蓄えられている熱を、もう一つの「熱交換器」を介して、大気へ放出させます。
これにより、熱が集められた側(部屋)の温度は下がり、同時に反対側(屋外の大気)の温度が上がります。
膨張させて冷媒の温度を低くする
その後、熱を放出させた後の冷媒を集めて、今度は「膨張弁」で冷媒の圧力を下げます(圧力を開放し膨張させる)。
そうすると、冷媒の温度がググっと下がり、また熱を集めることができるようになります。
繰り返し熱の収集と放出を行う
あとは、その冷媒を再利用して熱を集めて、圧縮して・・・の繰り返しです。この繰り返しを通して、徐々に、部屋の温度が屋外よりも低い温度になって行く・・・というのが、エアコン冷房の仕組みです。
ちなみに、「エアコン暖房」は、部屋と屋外とが入れ替わるように冷媒の流れを切り替えることで実現しています。
「低い温度の所から熱を集めて高い温度の所へ熱を供給」
上記では、身近にあるエアコン冷房を例にヒートポンプの仕組みを概説しましたが、ご存じの通りエアコンは、部屋の温度が屋外より低い温度になっても、設定温度になるまで熱を屋外へ移動させ続けます。
また、エアコン暖房では温度がより低い、冬の外気から熱を集めて部屋に熱を供給します。
そういった点からは、ヒートポンプを「低い温度の所から熱を集め、高い温度の所へ熱を供給するシステム」と捉えておくほうが、本来の役割/仕組みの勘所を理解しやすいように思います。
ということで、次はそういった観点に切り替えて、ヒートポンプの代表的な特徴を紹介することにします。
ヒートポンプの特徴
エネルギー効率がとてもよい機器
「熱エネルギーを供給する(得る)機器」として見たときに、エネルギー効率がとてもよい、という点が大きな特徴になります。
ヒートポンプを使って供給できる(得られる)熱エネルギーにくらべれば、ポンプを動かすために必要なエネルギーは、その数分の1程度ですむからです。
例えば、電気ストーブの場合、電気エネルギーから熱エネルギーを得る仕組みになりますので、電気ストーブを置いた部屋に供給できる熱エネルギーの最大値は、どうがんばっても、使った電気エネルギーの100%分になります。
一方、ヒートポンプは、大気などにある熱を取り込んで部屋に運ぶ仕事をするので(だけなので)、ポンプを動かすのに使った電気エネルギーを100%とすると、その300~700%に相当する熱エネルギーを部屋へ供給することができます。
この効率は、COP(Coefficient Of Performance:成績係数、エネルギー消費効率)と呼ばれています。
この高いCOPに着目し、部屋の空気の代わりにタンクに貯めた水を温め、高温にして家庭で利用するようにしたものが、”エコキュート”(登録商標4575216)などの名称でよばれる給湯システムの仕組みになります。
未利用エネルギーの活用手段
集めることができる熱にも特徴があります。
熱交換器を介して、大気中の熱だけでなく、工場の低温排熱、河川水や工場排水の熱、地中熱など、特に利用されることがなかった熱エネルギー(未利用エネルギー)を広く利用対象とすることが可能、という点がもう一つのヒートポンプの特徴です。
概要を学びたい!と思ったときの参考ウエブサイト
国立環境研究所さんのウエブサイトでは「環境技術解説」と題して、ヒートポンプに関する解説が掲載されています。
ヒートポンプの仕組みに関する図解や統計データのほかに、東京スカイツリータウンの熱供給などの概説もされています。
わかりやすい内容だと思いました。
ヒートポンプ・蓄熱センターさんのウエブサイトも、挿し絵を多く使った簡潔な解説が掲載されています。
ヒートポンプについて、まずはその概要を学びたい!と思われた際の端緒・参考にして頂ければと思いましたので、こちらをご紹介します。
~振り返りウエブサイト訪問/読本。
国立環境研究所さんのウエブサイト
ヒートポンプ・蓄熱センターさんのウエブサイト
他にも多数、圧縮機の構造やCOPの計算など、ヒートポンプについて技術的に詳しい解説が掲載されたウエブサイトがありますので、興味が湧きましたら、ネットサーフィンしてみてください。