
高圧受電設備の停電/復電操作の基本手順を学ぶ時 ~機器配置図、単線結線図の活用・読み取り
停電/復電操作の基本的な手順
電気設備の工事・維持・運用において必ず求められる作業のひとつが停電/復電操作です。
点検・補修作業の実施に伴い行う操作(作業停電)など平常時対応の他、設備事故時など非常時対応でも実施されます。
作業安全確保の上で大切な事項ですので、その基本的な手順に関する知識については、高圧受電設備を事例に、電験3種「法規」科目でも問われています。
(例)電験3種(法規/電気施設管理):1999年(平成11年)問10
単線結線図を示し高圧受電設備の全停電作業を開始するときの操作・確認手順を答えさせる問題・・・[ ]内の言葉を選択肢から答える方式

高圧受電設備における作業と設備に関する理解
作業に関連する、

などの手順を理解する際には、関係する機器、それらの呼称番号(名称)、外観、配置(相互の位置関係を含む)、結線状態など、設備事情を把握しておく必要があります。
作業前ミーティングなどにおいて指揮者と作業員の間で作業内容や注意点が正確に伝わり、相互チェックが働くようにするためにも、重要な前提になります。
電験三種でも図面の読み取り問題が出されていますが、そういった点が出題背景のひとつになっていると思います。
(例)電験3種(法規):2013年(平成25年)問10
単線結線図に示された機器や計器の名称を答えさせる問題
ただ、金属箱内に機器類を納める「キュービクル式」の高圧受電設備(後述)が多くなってきた現在、実際にキュービクル内部にある機器やその接続構成を目にできる機会はそれほどないようにも思います。
そこで重要となるのが、イメージ図や機器配置図、単線結線図の活用・読み取りです。
以下では、その点にごく簡単に触れつつ、機器配置図や単線結線図が掲載されている参考ウエブサイトを紹介したいと思います。
「機器配置図、単線結線図」の活用・読み取り
上記の電験問題に示された単線結線図はかなり簡略化されたものですが、実務で使う単線結線図も、電気回路系統や保護継電器等の構成を単線で簡略表示することが目的の図面なので、記号化されスッキリした図になっています。
なので、単線結線図だけではイメージがわかない・・・ということで、学び始めのころは(あるいは初めての現場の場合は)、最初に、イメージ図 →機器配置図 →単線結線図(概要を把握)という順で繋がりを捉え、次に、改めて単線結線図(少し詳しく読んで) →機器配置図 →現物・現場の外観目視 →操作・安全確認等の手順想定(手順書確認)、といった順で「知識の結びつけ」を行われることも多いのではないでしょうか。
ということで、あくまで一例ですが、キュービクル式における高圧受電設備の機器構成のイメージ図を書いてみました。
単線結線図で示される各機器の記号を絵に添えています。

キュービクル式の高圧受電設備の「機器配置図」や「単線結線図」については、日本電機産業さんのウエブサイトにサンプル図面が掲載されていますので、参考になると思います。
URLはこちらです。
(参考URL)
・機器配置図、単線結線図 @日本電機産業https://www.nihondenkisangyo.jp/product/pdf/0500c-1.pdf#page=3
※H20年の図面ですので、その点に留意し参照してください。
メーカーさんや年代の違い・需要設備事情などにより構成や配置が異なると思いますが、上記のイメージ図と日本電機産業さんの機器配置図、単線結線図とを照らし合わせると、繋がりや機器配置が目で追えて、全体像がイメージできるように思います(操作の途中段階における充電部がどの範囲かなど、シミュレーションもできます)。
「キュービクル式(閉鎖型)」と「開放型」
いきなりキュービクル式の設備について話をしてしまいましたが、電気設備について学び始めたところという方も居られるかと思いますので、少しだけ高圧受電設備の方式の違い(閉鎖型、開放型)について説明しておきます。
高圧受電設備は、送配電会社の設備(配電線)から高圧(6,600V)の電気を受電して低圧の電気に変換し建物/工場内の各所に電気を送り出す・・・という役割を担う電気設備ですが、機器の設置方法により「キュービクル式(閉鎖型)」と「開放型」の2タイプに分類されます。
よく使われる「キュービクル」という呼び名は、「キュービクル式(閉鎖型)高圧受電設備」を指して言う略称です。
変圧器や遮断器など高圧受電に必要な機器を、専用の金属の箱(キューブ)に納める設計になっているものが「キュービクル式」です。
屋内外に設置され使用されます。
スーパーマーケットなどの建物の横や屋上に設置されていることが多いので、比較的よく目にされる設備だと思います。
外観は、内外電機産業さんのウエブサイトで見ることができます。こちらを参照してください。
(参考URL)
・キュービクル外観写真 @内外電機産業
なお、もう一つの方式である「開放型」は、鋼材などで作られたフレーム内に機器を設置する「開放型高圧受電設備」を指して言う略称です。
開放型では、設置場所事情に応じたフレーム/配置設計が行われます。
金網などでフレームの周囲を囲む設計とされる場合もあり、こちらも屋内外で使用されます。
また、開放型なので基本的にそれぞれの機器の外観や機器間の接続関係を外部(周囲)から目視で確認することができます。
「認定キュービクル」
補足として、実務的な知識になりますが、認定キュービクルについてもご紹介しておきます。
「認定キュービクル」という呼び名は、消防法上の技術基準に適合していることが認定されたキュービクル式非常電源専用受電設備を指して言う略称です。日本電機産業さんのウエブサイトでは「認定機種」という表示になっていました。
日本電気協会は、登録認定機関(消防法施行規則第31条の5)として、適合認定業務を長年にわたり行っています。そちらについてはこちらをご覧ください。
また、認定制度の発足時期などが日本電機産業さんのウエブサイトにも記載されていましたので参考までに、あわせてURLをご紹介します。
(参考URL)
https://www.nihondenkisangyo.jp/company/history.html
電気安全確保のために
冒頭にも申しましたが、停電/復電操作や、これに伴う安全確認等は、電気設備の工事・維持・運用において必ず求められる作業のひとつです。
その手順・注意点に対する理解は、操作を行う作業者のみならず、作業等をともにする周囲の方たちの安全にも関わる重要な事項(前提)となります。
電気安全確保に必要とされる要素は様々ですが、図面の正確な読み取りや現物・現場の把握、手順のイメージ・トレーニングなどは、今も昔も変わらない基本的な部分として、個々の現場事情に応じた取り組みが続けられてきたものと思います。
ということで、本日は、いささか散文的になってしまいましたが、高圧受電設備の停電/復電操作の基本手順を学ぶ時の図面活用などについて振り返ってみました。
~振り返りウエブサイト訪問/読本。
皆さま、本日も、ご安全に!