![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/171184595/rectangle_large_type_2_d8f9a959ea08cae4b04cf664d50571dd.jpeg?width=1200)
母校の高専で学生向けにキャリアについて講演してきた話~偶発的機会を結びつけながら広げるキャリアの選択肢~
JDSC 製造・物流ユニットの早川です。
2021年から母校である福井工業高等専門学校(高専)で開催されるビジネスアイデアコンテストに審査員として毎年参加しているのですが、今年は学生に向けてキャリアに関する講演も実施してきました。今回は、この講演の概要をご紹介できればと思います。
学生向けの内容ではありますが、私自身が悩みつつ歩んできたキャリアを振り返ってお話しした内容ですので、同じように工学系出身だけどビジネス側にも興味がある方や、現在キャリアに悩まれている方にとって何か参考になれば幸いです。
自己紹介
私は福井高専の電気工学科を卒業後、長岡技術科学大学(高専卒業生の編入を前提に設立された大学。全体に占める高専卒業生が約7割という変わった大学)に編入しました。その後、そろそろ高専というコミュニティから抜けてみようと思い(笑)、大阪大学の大学院に進学しました。高専と長岡技術科学大学では太陽電池、大阪大学ではダイヤモンドを用いたパワー半導体の研究をしていました。
社会人になってからは総合電機メーカーであるパナソニックで設計や企画に従事し、その後、総合コンサルティングファームのアクセンチュアを経て、東大発AI企業のJDSCに入社しました。JDSCではプロジェクト推進と並行して、関西の組織立ち上げについても担当しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1737626096-RyfUAwdG3pCPNlZSJM2WbcEX.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1737548143-IK9AqMGhEVeo8FBUZrCzH75W.png?width=1200)
これまでのキャリアを改めて振り返ってみると、職種軸では技術職/ビジネス職、会社軸では大企業/スタートアップ、日系/外資と比較的幅広く経験を積んできたのではないかと思っています。
キャリアの各ステージでの学びと転機
パナソニックではルームエアコンのエレキ(回路)設計者としてキャリアをスタートし、パナソニック初となるwifiモジュール搭載機種の開発等に携わりました。エアコンへのwifiモジュール搭載は、単に遠隔操作機能が追加できるようになるだけではなく、運転状況等のデータを蓄積し、エアコンのサービス化や他の機器との連動を実現するためのコアとなる技術であり、非常にやりがいのある仕事でした。
また、設計業務を通じてモノづくりの楽しさと難しさ、さまざまな専門性を持ったチームで課題解決に向けて取り組むことの醍醐味を学ぶことができました。パナソニックでは入社時に「1件の不良でも、その商品を購入したお客様にとっては100%の不良率」と教えられるのですが、ルームエアコンは各機種を年間数十万~数百万台も生産するような製品です。それだけ大量に生産する中で不良を出さないようにするために、6σ等の品質管理手法も使いながら、厳しい基準で設計を行っていました。設計に取り組んでいる最中は、正直ここまで厳しい基準はいらないだろうと思うこともあるのですが、そこまでやっても、試作段階では見つけられなかった不良が量産以降に出てくるケースがあります。それぐらい品質を保ちつつ大量にモノを作るということは難しいことなのだと学びました。不良が発生してしまった際には、限られた時間内に問題解決ができるように、エレキ、メカ、ソフトの各設計者や品質管理、調達担当者等、さまざまな関係者が一丸になって原因特定と対応検討に取り組んでいました。大変なことも多かったですが、さまざまな専門性を持ったメンバーと協力しながら課題解決ができた時の達成感は、何物にも代えがたいものがありました。
また、家電量販店などに自分が開発に関わった商品が並んでいるところを見た時にすごく感動したのを覚えています。この頃から、要素技術を世の中に実装することにやりがいを感じるようになりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1737548206-I5QbJpsoCOYr2xDXZFa7hP0A.png?width=1200)
前述のように設計業務にやりがいも感じていたのですが、一方で家電業界を見ると、海外メーカーや別業界の企業の参入により競争環境が変化し、会社の業績も低迷していました。現場メンバーは必死に頑張っているのに、業績につながらず疲弊している状況に葛藤を感じ、このような状況を打開するために、技術者である私自身もビジネスがわかるようになりたいと思うようになりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1737548263-15TfWXUcKDFMZk9vRbqeO38G.png?width=1200)
https://kakakumag.com/av-kaden/?id=19310
https://toyokeizai.net/articles/-/11128
そんな思いからプライベートでビジネススクールに通い始めました。中学を卒業して以降、ほとんど工学ばかり勉強していたので、ついていくのに必死だったのですが、体系的に経営全般について学ぶことで、目の前の業務や課題と経営とのつながりを意識して取り組めるようになったと思います。また、在学中に出会ったさまざまな企業、役職の方々とは、今も気軽に相談できる仲であり、貴重な財産になっています。
![](https://assets.st-note.com/img/1737548402-0bimOQgCzMVp4jAE3f6sBGYq.png?width=1200)
せっかくビジネスについて学んだということで、設計業務の傍ら、新規事業アイデアの提案をしていたところ、新規事業開発部門に異動することになりました。ボトムアップでの新規サービス検討(なぜかパナソニックでC2Cのインバウンド観光客向けガイドマッチングサービスに取り組んでみたり)や、全社プロジェクトであったIoT家電のデータを活用した新規事業の検討に取り組みました。いろいろな種類の新規事業を検討している中で感じたのは、やはり自分は要素技術を製品・サービスに実装し社会に浸透させるような取り組みが好きだということです(事業として良い悪いではなく、好みの話)。
ただ、新規事業は千三つ(千個アイデアがあったら成功するのは三つ)といわれるぐらい難しく、なかなかうまくいかないことも多く、自分自身の力不足を感じました。
![](https://assets.st-note.com/img/1737548423-LfU3YJ4FO92rXjSg5DEsdeW8.png?width=1200)
また新規事業に関わるようになってから、技術者時代に比べて多くの社外の方々と交流する機会が増えました。さまざまな方々と連携する中で、自分自身も一社に留まるのではなく、さまざまな企業、業界を経験し、幅広い視点を持つ必要があるのではないかと考えるようになり、パナソニックを出てみることにしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1737548473-TniVC3PWBL9zd0uZ58h2w1J6.png?width=1200)
https://news.panasonic.com/jp/topics/164499
いくつか企業を見ていたのですが、テクノロジーに強そう、且ついろいろな専門家と連携できそうだったアクセンチュアに転職することにしました。
アクセンチュアでは、期待通り戦略コンサルタント、エンジニア、データサイエンティスト、デザイナー等、多くの方々とコラボレーションしながら、さまざまな業界・テーマのプロジェクトを経験することができました。
多くのプロジェクトを経験する中で感じたのは、スペシャリスト同士の媒介になるような役割を担うのが好きだということと、やはり私は要素技術を社会に実装するようなプロジェクトに関わっているときが一番ワクワクしながら働けるということです。
![](https://assets.st-note.com/img/1737548532-t9ajI8bGJf1VwlR7kODocEUe.png?width=1200)
約三年間、ビジネスコンサルタントとして務めた後、東大発AI企業のJDSCに転職し、データサイエンス・AI等を活用したソリューションの社会実装に挑戦しています。JDSCに入社してからは、更に高い専門性を持ったメンバーとの連携を楽しみながら、コアな業界の課題解決につながる仕事に取り組めていると感じています。例えば、クライアントの現場社員も驚くような製造現場の知識を持っているにも関わらず、若手エンジニアやデータサイエンティストと未来の製造業について気軽に意見交換しているベテラン製造業コンサルタントや、グローバルに活躍し、データサイエンティストとして一定の地位を築いているにも関わらず、JDSCに入ってから貪欲に製造業の金型について学んでいるメンバーのような素晴らしいメンバーがいます。
また、JDSCはダイキン工業様に出資いただいており、四年以上にわたってさまざまなテーマで協業をさせていただいているのですが、私もダイキン工業様とプロジェクトをご一緒させていただいており、気がつけばまたエアコンに携わっていました(笑)。
製造業の現場→新規事業→ビジネスコンサル→AI企業の事業開発と、悩みつつ紆余曲折ありながら歩んできたキャリアでしたが、今はそれらの経験がうまくつながり、より面白いことに挑戦できるようになってきたと感じています。スティーブジョブズが”Connecting the dots”※と言っていましたが、まさにそのような感覚です。
※「将来を予想して、点(知識や経験など)と点をつなぐことはできない。後々の人生で振り返った時にしか、点と点をつなぐことはできない。今やっていることが、将来、自身の役に立つ(点と点がつながる)と信じて取り組みなさい」みたいな話
![](https://assets.st-note.com/img/1737548568-d6i1CmGqZ2K5PbTofeN0I9EQ.png?width=1200)
https://jdsc.ai/service/casestudy/casestudy-4588/
以上のように、キャリアを振り返って見ると、各ステージで目の前の業務に一生懸命取り組みつつ、その時感じた課題感や興味に沿って一見関係が薄そうな領域にも挑戦することが多かったのではないかと思います。いろいろな領域に取り組んでみた結果、自分自身の価値観についても徐々にクリアに認識できるようになってきました。また、後から振り返ってみると関係がなさそうな経験同士がつながり、更にいろいろなことに挑戦するための糧になってきているとも思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1737548632-goGvrHbJdlCPwkQxWqmjMFSE.png?width=1200)
学生の皆様へのアドバイス
キャリアに正解はありませんが、私の視点でのアドバイスを最後に共有させてもらいます。もし少しでも共感できる点があれば、今後の参考にしてもらえればと思います。
一つ目のアドバイスは、定期的に振り返りを実施し、自分自身の価値観がどこにあるのか見つける努力をしてみてください、ということです。例えば、私は「要素技術を社会実装すること」、「自分一人では解決できなさそうな課題に、さまざまな領域のスペシャリストと一緒に取り組むこと」に楽しさを感じるのだと認識しているのですが、このことを最初から自覚できていたわけでなく、キャリアの節目節目で振り返りをすることで徐々に自分自身のことがわかるようになってきました(と今思っているだけで、数年後はまた違うことを言っている可能性もあります)。自分自身の価値観が見えてくると楽しみながらキャリアを歩みやすくなるのではないかと思います。
二つ目のアドバイスは、新しい領域の学びや挑戦を継続してくださいということです。先程も”Connecting the dots”の話をしましたが、当時は一見関係ないような取り組みに感じられたことが、後から振り返ってく見るとすごく活きているということがあります。高専生の立場でビジネスアイデアコンテストに参加しているような皆さんは、この点は問題ないかもしれませんね。
三つ目は、常識や先入観に囚われたり、他者と比較しないようにしてくださいということです。これは言うは易しですがけっこう難しく、周囲の声などに引っ張られて自分の意図とは違う決断をしがちです。私もたくさんそんな決断をしてきました。ただ、そういう決断をした時は、だいたい後から後悔します。
![](https://assets.st-note.com/img/1737548691-ZWTFwmh3kSyCRrIHquQjsg6a.png?width=1200)
以上です。ありがとうございました!
◇採用強化中ポジション