『リスタート ゼロからのレベル上げ』分析と解説|33 3週間かけた渾身の動画は1週間でたったの30再生
この記事は、YouTuberであるマイティー氏の著書「リスタート ゼロからのレベル上げ」の中で、第4章「いつだって会心の一撃をねらっている」に書かれている内容に関して分析するとともに、これまでの検証結果との関連性を解説しています。
また、権利者都合によりスクウェア・エニックスの製品である「ドラゴンクエストシリーズ」を始めとした製品群、および作品内に登場する固有名詞が他の言葉に置き換えられているため、あわせて解説しています。
本シリーズの記事一覧はこちら。
会社員退職からYouTuberになるまで
本の中での会社退職からYouTuberになるまでの経緯
マイティー氏は、著書の中で会社員を辞めてからYouTuberになるまでの経緯を次のように語っています。
これでは何を話しているのか分からないので、まずは具体的な言葉に置き換えた上で、時系列で整理すると次の通りになります。なお、ここで登場する4本の動画の概要は『分析と解説|序章「はじめに」 その①』で解説済なので、把握している前提で解説を続けます。
会社を退職する
2018年10月29日 PSP用ゲーム「ヴァルキリープロファイル -レナス-」(スクウェア・エニックス)のプレイ動画を投稿
2019年11月02日 スーパーファミコン用ゲーム「ドラゴンクエストVI 幻の大地」(スクウェア・エニックス)のプレイ動画を投稿したところ、動画再生数が10万再生まで伸びる
2020年04月17日 10万再生まで伸びたことに気分を良くして、同ゲームの別のプレイ動画を投稿する
2020年07月26日 PS1用ゲーム「ファイナルファンタジーVII」(スクウェア・エニックス)のプレイ動画を投稿
一見すると、「そういうものだろう」で済ませてしまう程度の話ですが、このエピソードには2箇所の誤りと2箇所の脚色が含まれています。
2箇所の誤りと2箇所の脚色とは?
どのような誤りや脚色が含まれているのかについては、以下にまとめた箇条書きの通りです。これらを一つずつ解説していきます。
(誤り1) DQ6の動画とFF7の動画の投稿間隔を半年後と表現しているが、実際には3ヶ月。
(誤り2) 2019年11月02日に2本目の投稿した動画が10万再生を突破してから、2020年4月17日に3本目の動画を投稿したかのように書かれているが、実際に10万再生を突破したのは、2020年6月上旬。
(脚色1) 少なくとも2019年11月02日に投稿した動画は完全に趣味の動画であり、YouTuberになるために投稿したものではない。
(脚色2) 最初の動画を投稿した2018年10月29日より前に会社を退職し、その後YouTuberとして再始動する2020年7月26日まで、約2年の空白期間があるように読めるが、実際に退職した時期は、2019年11月以降である可能性が高い。
誤り1 実際のDQ6とFF7の動画投稿の間隔
DQ6の動画とFF7の動画の投稿間隔は半年後と語られていますが、実際は3ヶ月後です。こちらは単純に動画投稿日を比較するだけで分かります。
2020年04月17日 DQ6のプレイ動画を投稿
2020年07月26日 FF7のプレイ動画を投稿
誤り2 実際の2本目の動画が10万再生を突破した時期
2019年11月02日に投稿した『2本目の動画』が10万再生を突破してから、2020年4月17日に3本目の動画を投稿したかのように書かれていますが、実際に10万再生を突破したのは、2020年6月上旬です。
こちらはマイティー氏のX(旧Twitter)の過去の投稿を見れば、実際に10万再生を突破した時期がわかります。なお、このXアカウントはYouTuberになる前に主に使用されたもので、2022年4月23日に動画を投稿した後に活動休止状態になった中、2022年5月10日にアカウントが削除されました。
脚色1 実際の2019年11月02日に動画を投稿した目的
マイティー氏のX(旧Twitter)の過去の投稿にて「完全趣味のモノ」と語っており、この時点でYouTuberを志していた様子はありません。
脚色2 ① 会社を退職した時期に欠けている要素
最初の動画を投稿した2018年10月29日より前に会社を退職したかのように書かれていますが、このエピソードについては、序章「はじめに」に関連のある内容が書かれており、これを考慮すると実際の時期がみえてきます。
失業保険についてエピソードが加わったり、YouTuberになるためのはずの動画投稿が、動画業界に進むためのポートフォリオの作成に変わっていたりと、すでにちぐはぐですが、注目すべきは失業保険です。
失業保険は失業者が再就職するための支援の仕組みです。そのため、受給できる日数には制限があり、これは勤務した期間や退職時の年齢によって受給日数が決まります。また、退職理由が会社都合の場合は、すぐ受給できますが、自己都合の場合は2~3ヶ月、受給までラグが生じます。
つまり「失業保険でしばらくは食べていける状況」とは、受給までのラグの期間、あるいは失業保険の受給期間内を指しているわけですが、この受給期間というものは、前述の通り、退職理由や年齢によって変化します。
例えば、同じ勤務期間1年だとしても、退職時の条件によって受給期間は90~180日まで様々に設定されているのです。
ただし、いずれにおいても確実なことは「失業保険でしばらくは食べていける状況」と、『2つ目の動画』の再生数が10万再生を突破したタイミングは重なっているということ。
すなわち、失業保険の受給日数が予測できれば、そこから会社を退社した時期が推定できると考えられるわけです。
脚色2 ② 退職時の年齢の推測
マイティー氏の年齢自体は非公表となっていますが、X(旧Twitter)に投稿された逸話から、年齢を絞り込むことができます。
このような調査をする場合、年齢についての言及だけではなく、例えば当時流行していた商品と併せて語られている方が参考になります。
商品には必ず発売年というデータがあり、また販売ターゲット層が存在する以上、エピソードの妥当性も確認しつつ進められるので、精度が確保しやすい側面があります。
関連のあるポスト(旧Tweet)の1つ目は、「ドラゴンクエスト バトルえんぴつ(1995年から流行)」。マイティー氏がドラゴンクエストを初めて知った商品であり、流行下で遊んでいたと語られています。
関連のあるポストの2つ目は、三菱鉛筆の「かみつきばあちゃん(1987年と1996年のオマケ)」。同じく流行したときの思い出ですが、こちらは幼稚園から小学校低学年であったと、時期についても語られています。
「かみつきばあちゃん」についてのエピソードだけでは、1987年あるいは1996年の思い出かは分かりませんが、「ドラゴンクエスト バトルえんぴつ」という、鉛筆を主に使う小学生向けの商品のエピソードを考慮すれば、1996年の時期に「かみつきばあちゃん」で遊んでいたことになります。
すなわち、1996年当時に幼稚園から小学校低学年(3~8歳)であり、さらに、マイティー氏の誕生日が10月22日である点を考慮すれば、YouTuberとして活動を開始した2020年7月時点は、25~30歳であったと考えられます。
当然ですが、この程度の調査では年齢を特定するための精度は確保されていません。ただし、今回に限っては世代が分かれば十分で、つまりは2020年時点でアラサー(25~34歳)だった、という予測は立ちます。
脚色2 ③ 失業保険の受給日数と時期の推測
これは前述した話につながりますが、失業保険は、勤務期間や退職時の年齢、そして退職理由によって受給日数が決まります。
退職時の年齢についてはアラサーであることが推測できていますが、残る勤務した期間については「1年くらい」と本人が語っています。
よって、失業給付金を受給する期間は次の通りです。
会社都合退職:退職後じきに受給が始まり90日
自主都合退職:退職後2~3ヶ月の給付制限期間の後90~120日
条件別の受給日数が分かりましたので、残りは受給時期ですが、失業保険でしばらく食べていける状況だった時期に、『2つ目の動画』が10万再生を超えたことで、YouTuberになるという考えに至った、と書かれている点に注目すれば分かります。
10万再生を超えた時期については、前述した通り2020年6月上旬です。この時期が受給最終月だと仮定した場合、退職した時期については次の通りとなり、この計算により「どんなに早くても、この時期より前に退職していない」という時期を推定することができます。
会社都合退職:2020年3月退職、同年4~6月受給
自己都合退職:2019年11月退職、2020年3~6月受給
総括 実際の会社退職からYouTuberになるまでの経緯
ここまで指摘してきた、誤りや脚色を考慮した上で、あらためてマイティー氏がYouTuberになるまでの経緯を整理すると以下の通りになります。
2018年10月29日 PSP用ゲーム「ヴァルキリープロファイル -レナス-」(スクウェア・エニックス)のプレイ動画を投稿
2019年11月02日 スーパーファミコン用ゲーム「ドラゴンクエストVI 幻の大地」(スクウェア・エニックス)のプレイ動画を投稿
2019年11月以降 会社退職
2020年04月17日 同ゲームの別のプレイ動画を投稿する
2020年06月上旬 2019年11月02日に投稿した動画の再生数が、5月末からの1週間だけで12万再生を突破
2020年07月上旬 YouTuberとして最初の動画作成に着手
2020年07月26日 PS1用ゲーム「ファイナルファンタジーVII」(スクウェア・エニックス)のプレイ動画を投稿
考察 ポートフォリオとして有効な動画?
本の中では、2019年11月に投稿したDQ6の動画がヒットしたことに気分をよくして、2020年4月にDQ6の別の動画を投稿したかのように書かれていましたが、実際はヒットした動画がない中で投稿されたものでした。
しかもこちらは、2本目の動画の企画焼き直しで、使っているセーブデータも転用しています。動画の概要は以下の通り。
2019年11月02日 裏ボスを3ターン数で撃破
2020年04月17日 裏ボスを最小ターン数で撃破(キャラクター1人)
また、この動画を上げた理由を「動画クリエイターになるためのポートフォリオとして」と語っています。
厳しいことを言いますが、これはどうみても素人が試行錯誤した程度の品質です。これを本気でポートフォリオにしてしまうと自分の首を締めるくらいしか効果がありません。
逆にどういう動画かといえば、これは動画制作に強い興味のある人の作品ではないのです。専門知識はないけど、フリーソフトを用意して、使える機能もそこそこに動かしてみたら出力された動画のレベルです。
仮に本気でポートフォリオとして作るなら制作環境を載せるのも当然のことですが、肝心の動画の概要欄には、それすらありません。Adobe PremiereやDavinci Resolveを使っているならまだ分かりますが、AviUtlを使ったようにしか見えないレイアウト。動画制作を主業務としている企業と関わりたい人としては、肝心の勉強がすっぽり抜け落ちています。
ということで、動画クリエイターとして生きていきたいという割には知識も経験も足りず、ポートフォリオとしても機能していない。つまりは、後付で考えられた理由と解釈した方が無難かな、と思っています。
出典・関連記事
出典
5月末に1週間で12万回再生まで伸びた(アーカイブ)
その動画は僕の完全趣味でドラクエ6を上げている(アーカイブ)
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その他の補足
編集履歴
2024-06-16:作成
2024-06-17:軽微な表現修正
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