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【音声3.0のUXを考える】第2回 音声の情報性と機能性の活用事例

XTechグループで音声配信の事業を行っているRadiotalk代表の井上(@JD_KAORI)です。先月IVS2021にて「これからの音声テックの話をしよう」セッションに登壇して語った、音声関連市場の変遷から見た考察を書いていく連載2/3回目です。

3回の記事を通して、聞く・話すの双方まとめた「音声」の持つ役割を、情報性/機能性/情緒性、の3つに分類した上で、
 音声1.0 :情報性(前回)
 音声2.0:情報性+機能性(今回)
 音声3.0:情報性+機能性+情緒性
と拡張している時代の過程にいる、という考察をしていきます。前回の記事はこちらをどうぞ。

音声の「機能性」とは?

たとえば布団に入って「アレクサ、おやすみ」と言えばカーテンが閉じ、電気が消え、明日の予定を伝えられ……と、Google Nest(旧Home)やAmazon Echoなどスマートスピーカーの普及により、ハンズフリーにモノに指示できるようになりました。電子レンジ、冷蔵庫、掃除機、照明、カーテン、コーヒーメーカー、加湿器etc... Alexaに対応した家電家具は10万を超えています。スマートスピーカーという新デバイスの発売、そのコアである音声アシスタントの発展が、音声の手と目を自由にできる強みの認知に繋がりました。このことが、音声の機能性が着目される契機となります。現にスマートスピーカーの世界の販売台数は今年1.6億台と予想され、USでの普及率は34%に達しました。USの10代の約55%が音声検索を毎日使うように、音声入力が自然な体験になっています。

音声の機能性が代表する特性
・音声入力の体験:マルチタスクをやりやすくする利便性
・音声の再生体験:情報収集の時間を作り出す効率性

音声アシスタントの利用を代表するスマートスピーカー/スマート家電は、国内では2017年に発売開始し、2018〜2019年にかけてビジネス化していきます。前回の記事の通り、Radiotalkも含めこの時期に増えていった音声配信は情報性に特化していて、ポッドキャストのような収録型のイメージが定着します。これは私の考えですが、音声アシスタントを通じて音声の入力体験におけるマルチタスクをやりやすくする「利便性・効率性」が着目されたことで、再生体験においても情報収集できる時間を作り出すことが効率的だと後押しされたためかと思っています。

(ちょっと脱線するのですが次回触れる点で、)情報性に特化した配信の一例として、「優良なオリジナル音声コンテンツを発掘すること」を目的としたニッポン放送主催の「ポッドキャストアワード」においても2019年は歴史、論文、英会話、など手と目を自由にしながら教養のインプットが可能な番組が多く集まっています。すべて生配信ではなく収録・編集したものをアップロードする形式となっている点が特徴的です。これはリスナーの時間を効率化するほど新たな知識/情報の詰まったものは収録・編集したほうが作りやすいということの象徴的な例かなと思います(もちろん生配信で不可能なわけではないのですが、生まれやすさという点で述べています。たとえばYouTubeでいうメンタリストDaiGoさんは、生配信でも実現できている例だと思いますが、相当な知識量が必要になることがわかります)

音声を「機能性の高い情報」としたビジネス展開例

情報性に機能性が加わった音声ビジネスの展開例として、音声アシスタントと家電が連携したコマースの他にも、店舗に誘導する事例も生まれてきました。

ここについては、現時点はあくまで始まりたての芽の状態です。というのも前回の記事の通り、日本では音声入力そのものへの抵抗があったために機能性を支える音声認識技術の日本語対応に時間がかかっていることで、英語圏と比較して市場に遅れをとっているからです。音声広告に絞った市場規模は、国内では来年度145億円(2025年で420億円)程度と推定される一方で、USでは来年度で190億ドル(約2兆円)規模が期待されています。つまり機能性を向上できればアップサイドが期待されますが、どんな新しいビジネスを生めるのでしょうか?
今回はこの問いを考える上でのヒントになればと、まだ認知のとれていないビジネスの芽を2パターン紹介していきます。

①音声再生中に近くの店舗へ誘導

北米のAdsWizz社(Pandoraが買収)やInstreamatic社(国内でも博報堂が提携)という会社などが運用しているのが、チャットボットでも使われる"Conversational AI"を活用した音声広告(対話型広告)です。音声や音楽の再生中に、最適な店舗や商品の広告を提案します。するとたとえばオフィスから自宅を毎日運転する位置情報を取得したら、帰宅時間であると仮定検知し、ユーザーに近くのファストフード店のクーポン情報を音声で配信する、というものです(カリフォルニア州の調査では実際に行き先を店舗に変更したCVRが46%程度と聞いたことがあります、文献が見つからなかったのですが‥)。

対話型広告は、音声を流すだけでなく、ユーザーは興味があれば「興味ある」と答えればさらに詳しい情報を流してくれて、「興味ない」と答えれば別の提案に切り替えてくれる仕組みです。運転中に来店を誘導する音声広告は、フォルクスワーゲンやダイムラーが対話型AIを開発する他、国内でも電通がトライアル導入していたり、エフエム東京とパイオニア社が共同開発していたりもします。

②位置情報ごとの副音声を配信して来店促進

これはRadiotalkで事業化した事例ですが、音声は「すべてのものを副音声つきの新しいコンテンツにできる」という機能性もあります。それを活用したビジネスです。
たとえば、東京駅の近くにある三菱一号館美術館で開催された「画家が見たこども展」では、アイドル和田彩花さんが語りかける音声を聴きながら美術館をめぐる体験ができます。「ここ天井が高いの、見てほしい!」「階段を降りようか」など本当に一緒に歩いているシチュエーションの音声となるため、絵ごとに解説する音声ガイドとはまったく異なる音声です。東京駅〜美術館までは無料公開、美術館の中は(位置情報で制限されるため)チケットを購入して入館した人だけが聴ける、まるで美術館を通じた体験をフリーミアム化したようなモデルです。

(開催中に緊急事態宣言が発令されたことから、特別無料公開することとなりました。歩くことはかないませんが、試聴は上記URLからどうぞ)

インプットする情報性が求められつつ、目と手を自由にする機能性が必要となる場面として、美術館・博物館の他、観光名所も挙げられます。説明書のDXなることができるかもしれません。
・観光促進事例:南海電鉄(堺駅〜御廟表塚古墳周辺)

・来場促進事例:大阪・光の饗宴(御堂筋イルミネーション2020)

・観光促進事例:千葉県茂原市(ロケーションサービス/聖地巡礼)

・来場促進事例:国営飛鳥歴史公園(ウォークラリー) 

・観光促進事例:愛媛県松野町


今回は「情報性 + 機能性」に着目した企業向けのマネタイズについてご紹介しました。そうこうしているうちに歴史的パンデミックが到来し、ここでやっと情緒性に着目できるフェーズに突入したと考えています。本質的な人間のコミュニケーションが問われるようになったからです。次回はwithコロナ以降を「音声3.0」と置いて、「情報性 + 機能性 + 情緒性」の音声UXを考察していきす!

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■今後書いていきたいメモ
・情報性+機能性+情緒性 = ?(次回)
・音声が情報を届け始めた歴史
・フィットする音声とは何か?
・ClubhouseのAndroid対応でブームは再発するのか?
・Apple, Spotify, Amazon, Facebook, Twitter..国内でどう戦うのか?
・私とラジオとDLSite(急にエッセイw)
書いてほしい、話してほしいリクエストがあれば以下からどうぞ。以下をアプリで開いて「ギフト」を贈ってくださった方は、優先します!!(平伏)

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■このnoteでは主に「問い」を連載していきます。そしてただ今、この「問い」を一緒に解いてくれるRadiotalkのCOO候補となるBizDevを募集しています。ポジションの詳細は以下をどうぞ。ご興味を持っていただいた方は、「まずは話を聞いてみる」またはDM(Twitter @JD_KAORI)をお気軽にどうぞ。まずはお茶しましょう!


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