観戦記:面妖流さんvsこまちさん
指す将順位戦7thのA2リーグ3回戦、面妖流さんvsこまちさんの対局の観戦記です。(2022/07/15 22:30開始)
フリー対局でした。棋譜はこちらから確認いただけます。
戦型は後手一手損角換わり
対局が開始されてすぐに、後手番となった面妖流さんから角交換をして、戦型は後手一手損角換わりに決まりました。
角換わりは両者ともに得意としているところ。非常に速いペースで指し手が進んでいき、よどみなく真っ向勝負といった雰囲気です。
先手が攻めを見せる
受けと入玉に定評のある後手面妖流さんに対し、先手こまちさんも攻めを急がない棋風だと思いますが、まずは先手が攻めの形を作っていきました。
▲3五歩から歩交換したあと、歩を控えて打ち直す手筋。正統派の将棋という印象で、経験も豊富な形でしょう。
先手はさらに▲3五銀から積極性を見せます。決断が良く、先手自信ありそうな雰囲気が感じられました。
銀交換によってお互いに角銀を持ち合うことになりました。
しだいに指し手が悩ましくなってくるところかと思いますが、両者ともそれほど時間を使わず進めていきます。
筋違いの角
緊張感が増したのは、先手から筋違い角を放った局面。
思えばこの直前に▲5五歩と模様を張るかのように進めた歩が角のラインを確保しています。観戦室でも▲1八角が言われていたところで、しかし△6三銀で継続手がわからない、という評判。
本譜も△6三銀に対して先手は陣形整備の▲5八金右。空いた3九の地点から後手が馬を作り……。
右桂
次の局面は、先手が歩と右桂を活用して4筋の攻めを見せ、後手は飛車を回って受けようとしたものの構わず先手が仕掛けていったところ。
ここで後手面妖流さんは長考に沈みました。そして観戦室でも、先手の▲4五桂の狙いが思いのほか厳しいことに気づき始めます。後手の左銀は2二に下がっており、玉頭である5筋方面がどうにも手薄で、補強するのもなかなか難しい状況。
面妖流さんの手が動いたのは約10分後、5三の地点に備える△6二金でした。
苦心の飛車切り
5三地点に備えられたといっても、▲4四歩と取ったあとで取る駒がなくても、とにかく▲4五桂を実現させるのが好手です。
先手の飛角銀桂がのびのびと前を向いており、後手は駒の効率と玉形が悪く苦しい状況です。
ここでさらに少考した面妖流さんの決断は……桂を食いちぎる△4五飛でした。
▲4五桂の攻撃力が強すぎて放置できなかったということでしょう。しかし飛車桂交換で先手陣も固いので、後手つらいところです。
さわやかな寄せ
飛車金両取りの△4六桂に、▲8一飛と寄せにいったのはさわやかな手順でした。
以下、飛車を取った後手に対して正確に寄せる先手。▲4四歩を見て面妖流さんの投了となりました。
投了図では後手に受けがありません。
受けが強いはずの面妖流さんに粘りを与えなかったこまちさんの切れ味が光りました。
感想戦
感想戦で触れられたのは、後手が△3九角と打ち込んで馬を作りに行ったところです。
▲3八飛と寄ったときに後手は角を引かなくてはいけないため、次の▲3四歩がゼロ手で指されることになり、後手は△2二銀と壁銀の形を強要されてしまいました。
ここでは△5二玉とバランスを取る手などが代案だったようです。
しかし、観戦記者の言葉で言わせていただけば、この1つの疑問手が敗因になるというのは恐ろしいことです。
先手こまちさんがここから見せた右桂を活用する攻めがあまりにも的確で厳しいものでした。有利な局面から正しい攻め筋を突いて勝利につなげる、その流れがあまりに見事でした。
謝辞
最後に、観戦記を快諾いただいた対局者のお二人にお礼申し上げます。
3連休の前ということでテンションが上がった勢いで、対局の直前に観戦記を申し出ましたが、人によっては悩ましいことだったかもしれません。その日の将棋のできがどうなるかはわからないですし、私も対局前にはひどい将棋を指してしまう恐怖が少しあります。今回の私は同リーグに所属する身なので微妙な立場でもあります。そんなところを気にする素振りもなく許可いただき、ありがとうございました。
リーグの対局では全力でぶつからせていただく所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします。