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【暮らし・経済―アベノミクスがもたらした“どん詰まり”。「暮らし応援」の「経済再生プラン」で政策の転換を】日本共産党創立102周年記念講演会

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https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-07-15/2024071504_01_0.html

※上記のページより転載



暮らし・経済―アベノミクスがもたらした“どん詰まり”。「暮らし応援」の「経済再生プラン」で政策の転換を

「生活が苦しい」が過去最悪の6割―アベノミクスの12年の結果

 まず一つ目に、暮らしと経済です。「何より、暮らしに希望がほしい」、みなさんの実感ではないでしょうか。今、政府が発表するさまざまな調査は、私たちの暮らしがかつてないほどに苦しくなっていることを示すものばかりです。

 今月、厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」では、「生活が苦しい」が59・6%、統計が始まった1986年以降、最悪となりました。内訳をみると、高齢者で59%、18歳未満の子どもがいる世帯では65%、どちらも前の年から10ポイント以上も増えていて、物価高騰で「もう節約も限界。なんとかしてほしい」という悲鳴が聞こえてきます。

 「生活が苦しい」という実態はどういうものか、東京都内で10年以上、街頭での食料支援や生活相談に取り組み続けている、谷川智行さん――医師で党中央の政策委員会副責任者でもあります、この谷川さんにお聞きしました。

 ――コロナ危機の前は、食料を受け取りにくるのは、住居を失った方がほとんどだった。最近は、圧倒的に、仕事がある、住まいがある、保険証がある、けれど長期にわたる賃金の低迷、年金カット、そこに物価高騰で、きょう、あすの食事に事欠くという方々が増えている。派遣で働く40代の女性は収入が安定せず、国民健康保険料は何とか払っているが、生活がとても苦しく、体調が悪くても病院には行けない。「今後のことを相談しましょう」と持ちかけるが、「今は何も考えられません。毎日生きているだけで精いっぱいです」と、毎週、食料やマスク、ばんそうこうなどを受け取って帰られる。次の支援につながればと祈るような思いで渡している――お話を聞いて胸が痛くなる事例ばかりです。

 食料支援の現場からは、物価高騰の影響があまりに大きいという声が、どこでも聞かれます。なぜ物価高騰が止まらないのか。アベノミクスの「異次元の金融緩和」が、異常円安をもたらしていることが最大の要因です。エネルギーも食料も輸入に依存しているために、異常円安が食料品、電気・ガス料金の高騰に直結しています

 何よりも今の深刻な生活苦の根本には、実質賃金が減り続けているという大問題があります。実質賃金は、1996年をピークに年74万円も減っていますが、2012年から23年でみても33万6000円も減少しています。そして、2度にわたる消費税率の引き上げで17・3兆円、人口で割れば、国民1人あたり13万9000円も消費税負担が増えてしまった。かつてない生活苦は、まさにアベノミクス以来12年の自民党政治の結果なのです。

大企業と富裕層に巨額の利益が流れ込んだ

一方で、大企業と富裕層はどうでしょうか。大企業の純利益はアベノミクスからの10年間で3倍(12年→22年)、内部留保は178兆円増えて511兆円。日本の大資産家、上位40人の資産は、12年間(12年→24年)で、7・7兆円から29・5兆円へと3・8倍にも膨れ上がりました。

 例えば、トヨタ自動車は、今年3月期決算で5兆円の利益です。史上最高益を更新し続けています。このうち2兆円が配当などで株主に回る。一方で、賃金総額は46億円増えただけ。賃金に回ったのは、利益に対して0・09%、1000分の1、ほとんど見えないほどということになってしまいます。

 それでは会長である豊田章男氏の役員報酬はどうでしょうか。前年比6割増の16億2200万円。つまりは60%の賃上げということになります。豊田会長は大株主でもあるので、これ以外に配当を17億6000万円、あわせて33億8000万円を1年間で受け取っています。

 下請け企業にはどうでしょうか。トヨタは、24年度に、取引企業への支払いを3000億円増やすと言いますが、これに対して、日本商工会議所の小林健会頭が次のように述べています。

 「本当はその実もうけの中に、経費として下請けに値増し分を払ってやる分が1兆円ぐらいあってしかるべき」「大企業活動のコストとして必要なコストとしてあらかじめ入れておかないとおかしい」――後から払うんじゃない、最初から1兆円ぐらい中小企業に渡る分だったじゃないか、こういうお話ですね。日本商工会議所は、経済3団体の一つですが、小林会頭の指摘は全くその通り、私も同感だとお伝えしたいと思います。(拍手)

 今月5日、トヨタの子会社が下請法違反で行政指導を受けました。下請け会社6万社に対して不当な費用負担を強い、賃上げの阻害までしていたということです。となれば、そもそもが、中小企業から搾り取った利益ということではありませんか。

 安倍・菅・岸田政権の12年、大企業の内部留保、富裕層の所得や資産へと巨額のお金が流れこみ、ためこまれ続けています。その一方で多くの国民が、生活苦に追い詰められ、中小企業も苦しんでいます。こんな不公正でゆがんだ状態を、自民党政治は変えようともしません。変える策もありません。まさに“どん詰まり”状態に陥っているのです。

「トリクルダウン」(大企業の利益優先)から「ボトムアップ」(暮らし優先)への大転換が、経済再生・暮らしに希望の道

 日本共産党は、このどん詰まりを打開しようと、昨年9月「経済再生プラン」を打ち出しました。(1)政治の責任で賃上げと待遇改善をすすめる――人間を大切にする働き方改革、(2)消費税減税、社会保障充実、教育費負担軽減――暮らしを支え格差をただす税・財政改革、(3)気候危機打開、エネルギーと食料自給率向上――持続可能な経済社会への改革。この三つの改革を柱とした政策提言です。党中央のホームページにも全文が載っていますので、ぜひお読みください。

 ここでは、どういう立場での政策なのかをお話しします。アベノミクスは、「まずは大企業をもうけさせること。そうすれば、賃上げにつながる」という、典型的な「トリクルダウン」(利益がしたたり落ちる)という政策です。2013年アベノミクスが始まったときの国会論戦を振り返ると、日本共産党は「政治の責任で賃上げが必要」だと繰り返し求めましたが、当時の安倍首相は「何が足りなかったかと言えば、思い切った金融緩和」あるいは「成長戦略で、企業収益を向上させ、雇用拡大や賃金上昇という好循環をもたらす」という答弁に終始しています。まさに「トリクルダウン」です。

 しかしどんなに待っても、したたり落ちてこなかった。もう失敗を認めて、「ボトムアップ」――暮らし最優先の経済政策に転換しよう、というのが「経済再生プラン」です。

 アベノミクス以降増えた大企業の内部留保に課税して、中小企業への直接支援として賃上げにそのお金を回す新たな仕組みをつくる、最低賃金1500円、ケア労働者の賃上げを政治の責任でなど、大幅賃上げの現実的な政策を提案しています。

 税金の集め方、使い方も同じ考え方です。アベノミクスは、大企業に減税しながら消費税を増税しました。大企業の税金の負担が軽くなれば経済が活性化して、いずれ暮らしに回る。そのために国民の家計に負担を増やしても仕方がない、ここでも「トリクルダウン」です。これを転換して、利益を大きく増やし巨額の資産をつくった大企業と富裕層に、応分の負担をしてもらい、消費税を減税する。教育費の負担を軽くし、社会保障を充実する。「暮らしの応援」という「ボトムアップ」こそ、国民の切実な願いに応え、格差と貧困をなくしていく。同時に、経済を活性化させるという改革提言になっています。

 また、再生可能エネルギーを大幅に増やし、エネルギー100%自給の戦略をもつ。そして、食料も「いくらでも輸入できる」という時代は終わった、3割台に落ち込んだ食料自給率を、早く50%に回復させる戦略をもち、農業・畜産・酪農の危機を打開することも柱にすえました。

 明日に希望がみえてくる経済政策ではないでしょうか。私たちは今、各地でシンポジウムや懇談にとりくんでいますが、大阪では、関西の経済団体に「経済再生プラン」を届けて懇談したところ、共産党が真剣に日本の経済のことを考えていることに共感が表明されたということです。

 日本の経済の現状をどうにかしたいというのは、経営者も同じではないでしょうか。大企業にとっても、投資にも賃金にも回らず内部留保が膨張し続けるというのは、健全な企業経営ではないでしょう。お金は生きた経済に回らなければ、新たな富を生み出すこともありません。しかし、一つひとつの企業では身動きがとれない。だからこそ、ゆがみをただし、経済を再生させる政治の転換が求められているのではないでしょうか。

職場のたたかい、各分野の運動を広げてこそ実現できる

 それでも、政治の転換には、妨害・抵抗があるのが世の常です。国民的な運動、たたかいのなかにこそ、「経済再生プラン」実現の希望があります。私たちは、今とりくまれている運動・たたかいに連帯して、それを、政治を変える力につなげていく決意です。

職場のたたかい――闘う労働組合とともに

 賃上げ・労働条件の待遇改善は、なんといっても職場のたたかいがあってこそ実現します。今、日本でも世界でも、闘う労働組合、ここに注目と期待が寄せられていることをご存じでしょうか。

 アメリカの自動車産業の労働組合、全米自動車労組(UAW)は、昨年、米国ビッグ3の自動車メーカーの主要工場で、大規模なストライキをたたかいました。7週間に及ぶストライキをたたかったといわれています。「経営トップの役員報酬は4年間で40%増えている。ならば労働者の賃金も4割アップを」と要求をかかげ、4年半で20~30%の大幅賃上げを勝ち取ったのです。このたたかいは世界の注目を集め、多くの労働者に勇気を与えています。

 実はこのストライキの先頭に立ったショーン・フェイン委員長が、全労連にビデオメッセージを送っていて、私も全労連のユーチューブチャンネルで見てみましたが、実に感動的なメッセージです。5分30秒を超えるメッセージですが、その一部を紹介します。

 「米国の地から、みなさんの春闘を注視し、公正な経済を目指す闘いに連帯します」「大企業の強欲はとどまるところを知らず、世界中のどこででも1ドルでも多く労働者から搾取しようとします」「人間性を求める私たちの闘いは国境を超えてつながっています。資本に国境はありません。労働者にも国境はないはずです。職場と家庭でより良い人生を実現するために立ち上がっている全労連と労働者のみなさんに、UAWが連帯していることを誇りに思います。みなさんの闘いは私たちの闘いです。みなさんが歩む道は私たちの歩む道です。企業経営者に目にもの見せてやりましょう」

 実に熱いメッセージですね。こうしたメッセージが届いたのは、全労連を先頭とした春闘が、ストライキも構えて大幅賃上げを勝ち取ろうとしている、そのことが、国境を超えて伝わっているからだと思います。

 日本医労連はストライキを正面にすえて春闘をたたかいました。「ストライキによって労使対等になれることを、実感できた」「看護師や医療人だけでなく、患者さんや地域とともに変えていきたい」「看護師の賃上げだけを要求するのではなく、すべての労働者の底上げが必要」――看護師をはじめ病院の職員のみなさんがストライキに団結するというのは、相当な勇気も決断も求められるものだと思います。たたかいの中で、自分の生活のためだけでなく、労働者全体のため、患者さんや地域のため、連帯し団結することが大切だと語られていることに、敬意を表し連帯したいと思います。

 非正規で働くみなさんが、職場の違いを超えて労働組合に結集して、非正規春闘がたたかわれたことも大きな激励になっています。また、公務職場の労働組合に、非正規の職員が結集して、理不尽な雇い止めをやめろと声をあげています。このもとで、ハローワークなど国家公務の職場で起きている、非正規は3年で機械的に雇い止めという国の方針がついに見直されました。この見直しは自治体にも波及するでしょう。私も国会で、その仕事が継続しながら、その人が必要とされているのに機械的に雇い止めをするのかと、何度も取り上げてきました。公務職場の労働組合のみなさんとたたかいとった一歩を、とてもうれしく思います。民間も公務も、人生を細切れにするような雇い方を規制し、明日に希望が持てる安定した働き方を保障する、それでこそ安心してスキルアップもできるのではないでしょうか。

 職場のたたかいに連帯して、人間を大切にする働き方への改革を実現していこうではありませんか。

若者たちの新たな運動――学費値上げ反対、学費半額・無償化へ

 暮らしをめぐる各分野の運動にも大いに連帯したいと思います。その一つが、大学学費値上げに反対し、値下げと無償化を求める青年・学生の運動です。

 5月中旬、東京大学で現在の授業料53万5800円の2割、11万円近い値上げが検討されていることが大きく報じられ、学生のみなさんは、すぐに反対の声をあげました。学生自治会のアンケートをはじめ、多くの学生が、学生投票、学内集会、国会での集会などに立ちあがり、値上げの検討を断念するよう迫っています。当初、6月にも値上げが発表されるのではないかとみられていましたが、学生たちの運動でこれを許していません。昨日の報道では「11月までに決定される予定」とのことですが、値上げ撤回へ、学生たちの運動へエールをおくろうではありませんか。

 学生のみなさんがどういう思いでこの運動に立ち上がっているのか、教養学部学生自治会発行の「学費問題を考える」というパンフレットには、行動を起こした学生たちの思いがたくさんつづられています。「東大だけの問題でも国立大学だけの問題でもない。歯止めを今かけなければ、他の大学も追随するだろう」、「同じ大学で、同じ教室で、同じことを学んでいるのに、何百万円の借金を背負って卒業する学生と、一円も借金を背負わずに卒業する学生がいる。私はこの事実をどう受け止めていいかわかりません」――学生たちの真剣な議論が伝わってきます。

 それに対して自民党や政府の中の議論はどうでしょうか。今、自民党の中でも文科省の審議会でも、大学の国際競争力を確保するためには、教育・研究費を増やさなければならない、だから、学費値上げが必要という議論が出てきています。しかし、自民党政治は、国立大学の運営費交付金を1割以上削減し、物価高騰で大学から悲鳴があがってもまともに予算を増やすことさえしていません。こんな政治を続けながら、学生に頼ろうというのは、あまりにも情けない議論ではありませんか。こんな議論をしているから国際競争力、教育や研究、世界から立ち遅れているのではないでしょうか。

 日本の高等教育への公費負担はOECD(経済協力開発機構)諸国でワースト2。学生が学費のために深夜バイト、子育て世代が生活を切り詰める、若い世代が奨学金という借金を総額10兆円も背負っている。こういう国に未来があるのか。学生たちに連帯して、教育予算の大幅増で、ただちに授業料半額、無償化へと政治を転換する大きな運動を起こしていこうではありませんか。

 社会保障が暮らしの安心になるように、また農業、気候危機など、あらゆる分野で要求が強まり、運動が広がっています。要求の一致点で連帯し、ともに運動を広げたいと思います。同時に多様な要求を、自民党政治を終わらせて新しい政治へ転換する国民的な運動へとつなげていくために、力を尽くそうではありませんか。

 たたかいと一体に政治を変えることが求められています。来たるべき総選挙では、財界・大企業の利益最優先の政治をもとから変える、日本共産党をどうか躍進させてください。どうぞよろしくお願いいたします。


  1. ビデオメッセージ

  2. 冒頭あいさつ・都知事選挙について

  3. 暮らし・経済―アベノミクスがもたらした“どん詰まり”。「暮らし応援」の「経済再生プラン」で政策の転換を ←今ココ

  4. 平和―強権政治で「平和国家」のあり方を根底から壊す暴走。憲法9条にもとづく平和外交を進める日本へと転換しよう

  5. ジェンダー平等―人権後進国から先進国へ

  6. 未来社会―資本主義の危機。社会主義・共産主義の展望を語ろう

  7. 時代を変える歴史的チャンス―日本共産党への入党を呼びかける


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