投稿 旧統一教会問題で立ち往生する岸田文雄首相
岸田文雄首相が、新型コロナウイルスに感染し、8月30日まで公邸にとどまって療養を続けるという。お気の毒なことであり早い回復を願うばかりだが、一方で、「本当にコロナ感染なの」といぶかるのは、私だけだろうか?
というのも、安倍氏銃撃事件をきっかけに自民党と旧統一教会の容易ならざる関係が表面化し、あわてて統一教会とかかわりの深い人物を「内閣から一掃」したはずなのに、その後、岸田首相からの政治メッセージがいっさい聞こえなくなってしまったからだ。
なぜか。考えれば無理もない。第2次岸田内閣と自民党の新執行部人事は、旧統一教会とにっちもさっちもいかないほどの深い関係にあることをあらためて証明し直してしまった。
岸田首相は、党内リベラル派の代表格ともされながら、その政治スタンスは定まらず、今回の人事を通しても、結局、何をしようとしているのかが、まったくうかがえない。
むしろ、このたびの組閣人事では、岸田さんの見識のなさをこれ以上ないほどさらけ出してしまった。その最たるものが、総務政務官に杉田水脈(みお)氏を起用したことであろう。(もちろん、ほかにもある。萩生田光一氏の政調会長起用などは稿をあらためて述べたい)
杉田氏は、差別的な発言を繰り返してきた国会議員として有名である。2018年、月刊誌『新潮45』への寄稿で、LGBTなどの性的少数者について「彼ら彼女らは子供をつくらない、つまり生産性がない」と記した。20年9月の自民党の会合では、性暴力被害者の相談事業をめぐって「女性はいくらでもウソをつけますから」と述べた。女性からの申告に虚偽があるかのように受け取れる発言だった。
次世代の党に所属していた14年の衆院本会議では、「男女平等は、絶対に実現しえない、反道徳の妄想だ」と述べ、男女共同参画という考えを真っ向から批判した。
これらの発言は、旧統一教会がこの間、あの手この手の政治家工作を通して実現しようとしてきた「政策」とよく似ている。
杉田氏が、このたびの政務官就任の会見で、過去の発言について現在の見解を尋ねられ、「過去に多様性を否定したことも、性的マイノリティーを差別したこともない」と言うにいたっては、白々しいにも程がある。
こうした価値観の持ち主と知ったうえで、自民党に引き込んだのが安倍元首相やその側近だ。衆院選の比例中国ブロックの名簿で優遇され、当選を重ねてきた。
政務官は大臣、副大臣に次ぐポストで、行政評価や統計などを担当する。性的少数者を差別したり、ジェンダー平等を否定したり、人権感覚が疑われる言動を繰り返す人物をなぜ政府の要職につけたのか。これでは、「差別を容認する内閣」というメッセージをわざわざ内外に発信しているようなものだ。
任命した岸田首相の見識を疑わざるを得ない。その責任を厳しく問いたい。(難波健治)