岸田首相、お金持ちから税金をもっと取ってください 中国新聞社説より
この30年余りの間、歴代政権は消費税を導入・増税する代わりに所得税や法人税の税率を引き下げてきた。広く薄く消費税を課す一方、富裕層や大企業の税負担を軽くし、消費や設備投資などを促して経済成長につなげる政策を続けてきた。
だが、この間の経済成長はあろうことか他の先進国に大きく後れを取ってしまった。所得格差は広がり、税優遇や補助金で企業に賃上げを促したものの効果は上がっていない。現状を踏まえれば法人税率を引き上げ、増収分を国民に再分配する手法も視野に入れるべきだ。
1989年に19兆円あった法人税収は21年度、13兆円にとどまる。75%だった所得税最高税率は今は45%に過ぎない。株売却などに伴う金融所得課税は原則20%で累進性はない。これが年間所得「1億円の壁」といわれる富裕層優遇と、格差拡大につながっているという批判は根強い。
岸田文雄首相は「新しい資本主義」を掲げ、富と所得の再分配をうたって政権の座に上り詰めたはずだ。ならば再分配を進めるため、自ら提唱した金融所得課税などの見直しをなぜ進めないのだろうか。
日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国中でも再分配が不十分と指摘される。高齢化がますます進み、社会保障費も増大する社会が目の前に迫る。
不安だらけの将来へ備えるには政府の取り組みは物足りないと言わざるを得ない。税制見直しなどに背を向けたまま、税収増を喜ぶことは許されない。