劣化ウラン弾の供与・使用に抗議
広島の市民団体である核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)は、ウクライナの戦闘で英国が劣化ウラン弾を供与しようとしていることや、ロシアによって既に使用されている疑いがあることに強い懸念と抗議の緊急声明を3月27日に発表した。声明のなかで、劣化ウラン弾の危険性について次のように指摘している。
劣化ウラン弾は核兵器ではないが、核兵器の製造や原子力発電に必要なウラン235の濃縮プロセスから生ずる膨大な放射性廃棄物(いわゆる劣化ウラン)を利用したものであり、30ミリ砲弾一発に約300グラムの劣化ウランが含まれていると言われる。
劣化ウランは核分裂性ではないが、放射性物質であることに変わりはなく、強い化学的毒性も持つ。したがって劣化ウラン弾は、使用されれば、戦場であるか演習場であるかを問わず、また不発弾の場合でも、人体や環境に広範かつ長期的な影響を及ぼすこととなる。
実際、湾岸戦争やイラク戦争で大量の劣化ウラン弾が使用されたイラクでは、小児がんや白血病、先天性異常などの増加の原因の一つとして大きな問題となった。また、これらの戦争に従軍した米英などの兵士たちのあいだで「湾岸戦争症候群」が大きな国際的論争の的となり、旧ユーゴ紛争の後にPKOとして派遣されたヨーロッパ諸国の兵士のあいだでも「バルカン症候群」の原因として問題となった。
イギリスは、今回の供与にあたって、劣化ウラン弾の毒性を否定しているが、実際は、その危険性をはっきりと認識しているのである。事実、イギリス軍は2004年、イラク駐留中の自国兵士に対し、劣化ウランのリスクを知らせる「劣化ウラン情報カード」を発行していることが報道され、問題となった。
また、この問題を長年にわたって調査・検討してきているUNEP(国連環境計画)は、すでに広く報道されているように、昨年10月に公表した報告書「ウクライナにおける紛争の環境への影響」において、劣化ウランは「皮膚刺激や腎不全を引き起こし、がんのリスクを高める可能性がある」と指摘している。また、すでにイラク戦争の頃、米軍の放射線生物研究所(AFPRI)による動物実験から引き出されていた、劣化ウランは胎盤を通過してしまうという結論を、改めて国際社会は深刻に受け止めるべきである。