JCI金沢会議レポート
一般社団法人川崎青年会議所理事長の大沢です。いつもありがとうございます。
2月22日から24日まで、2泊3日の行程で「JCI金沢会議」に参加してきました。理事長挨拶などで簡単に報告はしていますが、伝わりきらない部分もあると思いますし、今後のための情報共有としてレポートを書いておきます。
(※2015年JCI世界会議金沢大会のジャパンナイト)
JCI金沢会議とは、2015年11月にJCI世界会議が金沢で開催された際に、同年9月に国連で採択された「UN SDGs」に対してJCIとして協働を約束する「金沢宣言」がなされ、それを受けて毎年金沢にて全世界のメンバーがSDGsへの知識を深めること、各国の取り組みを報告しあうことを目的に開催されています。2019年は「Global Goals in Action」~Better Society,Better Life~をテーマに多くの海外メンバーと国内メンバーが集まる中開催されました。
【2月22日 金曜日】
仕事を少し早上がりして、北陸新幹線「かがやき」で金沢に向かいました。
2015年の長野-金沢開通の年に自分も世界会議に参加しましたが、北陸地域も東京から2時間半程度で行けるようになりかなり近場に感じます。ちなみに今年の日本青年会議所全国大会は金沢の一つ前の駅である富山で開催されます。みなさん参加しましょう。
何気なく取った宿が会場から徒歩3分でした。近すぎました。
会場では「日本の女性力フォーラム」が寬仁親王妃信子殿下を講師としてお迎えして開催されていました。信子殿下は全国大会などにも多くご来場され、我々青年会議所の運動に多くのご協力を賜っております。今回は残念ながら事前登録の関係で拝見することができませんでしたが、今回の金沢会議はSDGsのゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」を中心に構成されていることを示すオープニングだったのかと思います。
夜は、同日に金沢入りしていた神奈川ブロックの他理事長とともに、金沢青年会議所メンバーのお店で食事をしました。料理も酒もとても美味しくいただくことができました。
【2月23日 土曜日】
一夜明けて少し寝坊しましたが、先述の通り会場近くの宿だったため事なきを得ました。この日は3つのフォーラムに参加しました。
(※それ以外にも多くのセミナーやワークショップも行われていました。)
【みんな違ってみんな良いフォーラム】
鈴木スポーツ庁長官による講演、その後に山野金沢市長、地元プロスポーツクラブであるツェーゲン金沢西川代表取締役GMを加えて3名によるクロストークでした。まず鈴木長官からは、健常者・障碍者ともに学ぶ「インクルーシブ」という考え方を通じた「スポーツを通じたSDGs」が紹介され、その上で共生社会を実現することでSDGsゴール10「人や国の不平等をなくそう」の達成を目指そう、という講演がされました。
神奈川県においても2016年に「やまゆり園事件」が起こり、また2014年に発生した「川崎老人ホーム連続殺人事件」など、社会的弱者が犠牲となる事件が多く発生しています。
ダイバーシティ社会を実現していくために、我々としても様々な手法を考えていくうえで、スポーツというコンテンツは有効なものであると考えさせられました。
また、その後のクロストークにおいては、来年開催される東京オリンピック・パラリンピックを地方活性にも活かす取り組みが紹介され、スポーツを通じた「支え合う心の育成」について話されました。川崎市においても来年に向けては「かわさきパラムーブメント」という取り組みがされています。考え方について共通項が多いと感じ、青年会議所としても市の取り組みがより地域に浸透するような協力や提言をしていかなければならないと感じました。
【企業パフォーマンス向上フォーラム】
野村アセットメントマネジメント株式会社 執行役員の中川 順子氏、そしてJTB執行役員・働き方改革・ダイバーシティ推進担当の髙﨑 邦子氏の2名によるご講演でした。
まずは中川氏から、多様性が進化しきれていない、単純に女性就業率を上げるだけでは意味がない、多様性がゴールではなく、それだけが企業の成長に直結するわけではないというお話をいただきました。女性や多国籍な人材を受け入れるだけではなく、その多様性を通じて新たなアイディアを創造して競争力を高めていく必要があり、その為にSDGsは便利な対話ツールとなりえるという内容でした。
次に髙崎氏からは、社員の成長→報酬の向上→会社の成長→成長への再投資というサイクルを作ることで持続可能な流れができるということ、女性だけでなく社員全体にテレワークなどの新しい働き方への参加を推進し、男性社員・女性社員という区別をなくし、全社員を同じく社会人として扱う取り組みが紹介されました。SDGsゴール5を達成することはゴール8の「働きがいも経済成長も」達成のために必要な要素であるという内容の講演でした。
その後はパネルディスカッションとなり、日本企業がこれからも世界的な競争率を保つためには、変化を受け入れていかなければ退化するのみであるということ、今までの延長上には未来はないという危機感をもって取り組まねばならならず、男女に限らず多様な人材を経営に参加させることが重要であるという話がされました。
我々のビジネスをより拡げていくためには、常に新しいアイディアを創造していかねばなりません。そのためには、やはり多くの才能を受け入れ、またそれを正しく評価していくことが大事であるかと考えられます。青年会議所運動においても同様であり、現在はどうしても男社会となっている青年会議所の構成を是正し、より多くのアイディアを運動展開に活かしていくためには女性や、地域に住み暮らす多様な人材の意見が必要です。その為には組織としてどう変わっていなかければならないのかについて考える時期なのではないでしょうか。
【外務省基調講演】
続いて、今年1月に開催された京都会議の前段において、日本青年会議所と「SDGs推進タイアップ宣言」を締結した外務省から、河野太郎外務大臣がお越しになり、基調講演をしていただきました。
河野大臣は神奈川ブロック平塚青年会議所出身でもあり、青年会議所に対する理解も深く「青年会議所では理事もやっていない私がJCI会頭の前で講演をするのは恐縮だ」「私が青年会議所入会したての時、英語ができるという理由でJCI世界会議神戸大会(1994年開催)の神奈川ブロックブースで通訳をやらされた」「ところで私の出身の平塚青年会議所はちゃんと来ているか?(常盤理事長が出席していました)」というツカミから講演がスタートしました。
まずは、SDGsの解説からはじまり、17のゴールはひとつひとつ達成するのではなく、すべてが同時に達成されなければならないものであるということをご説明いただきました。
まず、日本青年会議所として当初から取り組んでいる「Smile by Water」についてもお話をいただき、この運動とは、
水の安定供給 → 子供の健康の向上 → 子供の就学向上
女性の水運びの仕事がなくなる → 別の収入を得る仕事へ → 女性の地位向上
という持続可能な社会を作るとともに、ゴール6を中心に、ゴール3、ゴール4、ゴール8、ゴール11など複合的な達成を目指すことができるという解説でした。SDGsとは単純に1つのゴールを見るのではなく、他のゴールも意識しながら取り組まねばならないということであるかと思います。
また、世界的なSDGsの流れとして、2030年の達成までには年間で3兆9千億ドルの投資が必要であるという試算が発表されました。1年間のODAの総額は1500億ドルであり、持続可能な社会を作っていくためには単純な資金提供ではなく経済的な投資が必要であるということです。本年はアフリカ開発会議(TICAD)が横浜にて開催されますが、そこにおいてもアフリカ首脳からは今までのような援助だけではなく、投資によって経済発展を図り、お互いに利益のある形を望む声があがるだろうとのことでした。
SDGsが採択される前はMDGs(ミレニアム開発目標)というものが存在しました。その頃は主に途上国に援助をする方法を考えるのが主でした。しかし、今の時代においてはそうではなく、ビジネスにおいていままであったCSR活動として捉えるよりも本業として、機会として捉えて取り組むことが重要であると考えられます。
SDGsは政府のみが取り組むものではかく、個人一人ひとりが、またそれぞれの企業、団体、自治体、学校などがそれぞれの強みを活かしあいながら達成するものです。
SDGsの目指す「誰一人取り残さない社会」とは、誰もが「何かができる」社会ではないかという大臣のお話でした。我々青年会議所、3万人以上の青年経済人の集まる場として、それぞれ自らの企業が何ができるかを考えることで、SDGs達成の社会に一歩近づくことになるのではないでしょうか。
2日目の夜は能登牛の焼肉に行きました。こちらも美味しかったです。海産物も肉も酒もうまい。弱点がない。この後も土曜日入りした神奈川ブロック内のメンバーとラーメンを食べたり楽しく過ごしました。
【2月24日 日曜日】
盛りだくさんの金沢会議でしたが最終日です。この日は1ワークショップと2フォーラムに参加してきました。
【SDGsカードゲーム(ワークショップ)】
最終日は朝一番からSDGsカードゲームに参加申込をしていました。
SDGsをカジュアルに理解できると聞いていて前々から受講したかったのですがタイミングが合わず、この金沢会議の機会に参加してみました。
まずはコーディネーターの方よりざっと解説を受けたのちにゲーム形式でSDGsのビジョンを達成していくのかの流れをシミュレーションするというワークショップでした。これからSDGsについて知りたい、という人に適したワークショップだったと思いますので、こちらは是非川崎でも実施できればと考えています。
【日本JCプログラム】
少し時間がかぶってしまっていたのですが、お隣横浜青年会議所の野並晃理事長が登壇しているとのことで急いで別会場のフォーラムに参加しました。途中からの参加になってしまったのですが、青年会議所のSDGs、またそれを国際的なビジネスに生かす取り組みについて紹介されていました。中でも横浜青年会議所が推進しているLIMEXを通じた取り組みが紹介され、石灰石から紙に近い素材を創出し、名刺や袋に使用することで工業廃水の減少やビニールごみの減少を図るというものです。また、このLIMEXは再利用も可能であり、余った名刺などを回収してペレット化し、スマホカバーを作ることができるそうです。横浜青年会議所はこれらの取り組みを2020年JCI世界会議で発信するとともに、様々なビジネスの可能性や雇用を生み出していくきっかけとしたいということでした。
前日のフォーラムでも同様の結論がありましたが、我々中小企業であっても日々の活動にSDGsの観点を持ち、それぞれの強みをつなぎ合わせて目標を達成していくことで、さらなる経済の機会を大きくしていくことが持続可能な社会の創造に近づくと実感させられました。
【UN Womenフォーラム「HeForShe」】
続いて、この日のメインとなるジェンダー平等に関するフォーラムに参加しました。講師はUN Women日本事務所長の石川 雅恵氏でした。「ジェンダー」という昨今特に声高に叫ばれている問題に対して、我々はもはや他人事ではなくすべての人が当事者として取り組まなければならないという内容でした。
世界の半分は女性であり、つまりは世界の可能性の半分もそこに存在します。特にこの日本においては少子化や高齢化が問題となっている中で、その可能性を社会的慣習や環境で潰してしまっているのではこれから先の発展はありえません。ビジネスにおいても、また青年会議所のような社会運動においてもより女性のアイディアを採用するために、すべての企業団体がほんの少しずつ変わっていけばより公平でよりよい社会が達成されるのではないでしょうか。
また、講師の石川氏より「He For She」という世界的な運動についての説明がありました。こちらは世界的な女優であるエマ・ワトソン氏を親善大使とし、女性から声を上げるだけでなく、ジェンダー平等について男性も運動に共感し、我々のような大きな市民団体も共に推進していくことが目標達成の近道であるということが紹介されました。この運動においてはSNSにおいてハッシュタグ「#HeForShe」を利用した発信がされ、世界では200万人以上の署名が集まっていますが、日本における署名は8000人に留まっています。上記リンクから署名できますので是非ご参加ください。
【帰路】
2泊3日の短い期間でしたが、SDGs漬けとなりました。社会課題を解決し、自らも、自らの家庭も、また地域が豊かになることで、我々のビジネスも向上していくと思いますし、それこそが持続可能な社会であると思います。我々青年会議所メンバーも若者らしく、このSDGsという世界的な潮流に乗り遅れないようにしなければなりません。
日本青年会議所では7月18日から21日の日程で「サマーコンファレンス」を横浜で開催します。こちらのテーマは「World SDGs Summit」となっています。この金沢会議以上の規模で日本で最もSDGsを推進する団体として、様々な社会課題解決に向けたヒント、また我々のビジネスにも大きく活かすことのできるような要素が詰まったものとなるでしょう。是非多くのメンバー、できれば全員で参加したいと思います。よろしくお願いいたします。