組織版キャリアコンサルティング指導者養成講座から
およそ5カ月に渡り、毎週木曜日に慶應義塾大学丸の内シティキャンパスで開催されていた「組織版キャリアコンサルティング指導者養成講座」に通いました。素晴らしい仲間と一緒に久しぶりに学びのシャワーを浴びた感じです。毎回、終了後の課題では考えることを求められました。そして、最終回に向けての課題は、組織内で活動するキャリアアドバイザー向けの20回に渡る支援コースのシラバスを創ることでした。その最終回では、自分自身の経験や活動、日頃大事にしていることが、自分自身のキャリアアドバイザー活動にどう影響しているのかを説明することが求められました。そこで書いたものをこちらに引用しておきます。企業組織で長らく働くとともに、キャリコンを志す仲間の育成をもう1つ仕事の柱としている自分らしさは出ているかなと感じます。
■困難な状況に置かれている企業組織
私は長い期間、そして数社に渡り、企業人事に携わり、その責任者の役割を果たしてきました。企業は多様な課題に直面し続けています。属する業界の構造変化、マーケットからの要望の高度化、新商品・新市場への進出の必要性、既存のサービスの陳腐化、価格競争の拡大、日々訪れる多様な経営テーマに的確に手を打っていかなければなりません。しかし、いかに良い戦略を立案しても、それを実行するのは人です。人が元気に前を向かなければ、組織は変わりません。人が自分事として組織の課題を受け止めて、自分なりに対峙しようと思わなければ難題は解決しません。
■その中で翻弄されかねない個人、組織と個人の共生
組織に訪れる危機と変化の中で、ややもすれば人はそれに翻弄される存在です。環境変化を機敏に感じ、自ら必要なことを学び、新たな取り組みに身を投じていくことが必要です。しかし、それは容易なことではありません。私は長いこと人事の仕事を通じて企業とそこで働く人々と接していて、変化が激しく正解などを見いだせないこの世界の中で、組織と働く個人が共生してささやかな幸福感を持って生き抜くためには、自発的な学びの習慣化とキャリア自律が何よりも大切だと実感してきました。
■キャリアコンサルタントを目指す人たち
一方で私は副業としてキャリアコンサルタントの養成講座や更新講座の講師を勤めています。心ある多くの受講者が志を持って受講してくれています。真摯な態度で学習し、国家試験で一喜一憂をします。しかし、国家試験はあくまでも学びの一里塚です。その先に、それぞれが目指す支援を通じた活躍があるはずなのです。しかし、どれだけの人が最初に目指したかった活躍を果たせているでしょうか。組織は多くのキャリアコンサルタントからの支援を必要としています。しかし、今の養成講座と国家資格合格の実力では、十分な支援を行うのはなかなか難しいのが現実です。巷の更新講習も玉石混交が極まっています。そんな現状を少しでも打開できないかという思いを私は強く持っています。特に組織対応型キャリアアドバイザーに必要な知識・スキルは、養成講座ではほとんど語られません。アフター養成講座・アフター国家資格合格の学びの仕組みがまさに必要なのです。
■個人と組織の双方の元気を
まだまだ未熟な力量ながら、組織領域でのキャリア支援を志し、組織と個人の双方を元気にしたいという思いを抱いている人が、組織対応型キャリアアドバイザーとして機能できるには何が必要かを考えました。養成講座がターゲットとしているキャリアカウンセラーの役割を超えて、キャリアアドバイザーを中心的領域に位置づけながら、キャリアコンサルタントの全体領域も意識しています。個人と組織は共生関係にあります。個人の元気なくして、組織の活力向上はありません。組織の健全な発展なくして、個人の中長期的ウェルビーイングは成り立ちません。
■組織を知る
組織対応型キャリアアドバイザーとしてよい支援をするためには、支援相手である組織を知ることが大切です。そのために企業と企業で働く人、そして組織現場でのキャリア支援の中心的役割を担う管理職の理解にかなりの時間を割く必要があると考えました。また、組織支援の代表的な手法としてセルフ・キャリアドックを取り上げ、その企画運用ができる力の養成も意識しました。具体的な支援を考えることによって、より深く組織を知ることが可能です。
■支援者のあり方を考える
しかし、よい支援は知識やノウハウを得ただけではできません。自分がどんな動機でどんな支援をしたいのか、ひいては自分の支援者としての「あり方」を考え続けることが大切です。そのために、知識伝達のレクチャーはある程度抑えて、自ら考える時間、グループで討議する時間をふんだんに取る必要があると考えました。組織対応型キャリアアドバイザーとして機能するためには、支援者自身が自律的に動くことは必須です。組織のwhyと自分自身のwhyを問い続けることが大切です。そして、学び続ける覚悟が必要です。