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キャリコンの国家試験の前に

キャリコンの国家試験がまた近づいてきました。自分の教え子を含めて、次回の試験にチャレンジしようと思っている方に、ついつい勝手にメッセージを届けたくなります。お節介ですが、ちょっと整理してみます。主に実技テストに関する内容になります。完全な私見ですので誤解のないように。

まずは、試験合格はあくまでも目標であり、目的ではないこと。目標というのは、目的にたどり着くために通り過ぎなければならない一里塚です。一生懸命に試験勉強をしていると、試験合格が目的のように思えるようになりがちです。それだけ一生懸命だということですが、こうなってしまうと、どうやって試験に受かるかというノウハウばかりに心が奪われがちです。どの対策本がわかりやすい、どのサイトが役に立つ、そんなことに心が振り回されます。気を付けないと、軸がぶれていきます。

そして、怖いことに巷にはノウハウが各所に親切に山積みされています。キャリコン合格支援が1つのビジネスマーケット化しています。これはこれで悪いことではありません。でも、中にはこれでクライアント支援になるのかなあ、ということを語っているものも見られます。合格のための都市伝説が妖怪のように受験者の周りを闊歩しているともいえます。わかりやすく明快に説明している奴は、ちょっと怪しいと思っていいような気がします。だって、他者への支援ってそういうものじゃないですから。わかりやすくも、明快でもありません。

もちろん、それらの中には役に立つ指摘もあるでしょう。しかし、それを単に真に受けただけでは、あくまでもノウハウを身に着けただけの状態です。こうやるといい、これは駄目というリスト、まさにTO-DOリストとネガティブチェックリストを手にいれただけです。これらのリストを手にして、面談をすると何が起こるでしょうか。あなたの注意・関心は、クライアントではなく、リストを持った自分に向かいます。「クライアントをわかりたい」<「試験に受かりたい」といった15分を過ごすことになります。この態度は、もちろんクライアントにも伝わりますし、試験官にも伝わるでしょう。

もちろん、ここを強化したい、ここをもっと上手くやりたいという点を持つことは、上達のためには大切なことです。仲間とロープレをやりましょう。その時に、長々としたリストは持たずに、この15分ではここを徹底的に意識しようというポイントを決めましょう。そして、クライアントをわかろうとすることと、意識しようと決めたポイントを克服することを意識した15分を過ごしましょう。

ロープレで、クライアント役もしくはオブザーバー役になったときのフィードバックも大切です。必ず、論拠を持ったフィードバックをしましょう。ふわっとしたのは駄目です。フィードバックは、口頭試問のトレーニングにもなります。論拠を持ったフィードバックをするためには、しっかりと場をみなければいけません。クライアントの気持ちをわかろうとしなければいけません。あと、あら捜しのような駄目出しばかりするのもだめです。必ずよい点も見出すようにしましょう。よい点についてのフィードバックは、自分に軸がなければなかなかできないものです。軸を少しずつ持つ努力をすることは、何を習得するにしても大切なことです。

試験は、ある程度、メンタルの勝負でもあります。試験当日の自己効力感をどう保ち、高められるのかはとても大切です。そのためには、仲間内でのローブレでは、試験に近づくに連れて、ポジティブ・フィードバックを増やしていきましょう。もちろん、ここでも論拠をもったものでないと駄目です。もう、試験直前ともなると、どんなに詰め込んでも、そう大きく力量は高まりません。でも、自己効力感はかなりの幅でコントロールすることができます。できている点を認識することは、それに役立ちます。

試験当日は、ここまで学習をしてきた自分を認め、できないことなど気にせずに、目の前のクライアントに集中しましょう。今更、できないことを気にしてもできるようには絶対になりません。それでいいんです。何よりも、クライアントをわかろうとする態度が大切です。矢印(注意・関心)を自分に向けないことです。態度さえしっかりと持てれば、展開も大外れしないはずだし、自己評価だって冷静にできます。ゆっくりとやりましょう。
クライアントをわかろうという意味では、論述もまったく同じです。出題の意図はちゃんと押さえた上で、あとはクライアントをわかろうと一生懸命に「愛」をもって問題文を読むのです。論述(協議会)の設問はパターン化しているので、設問趣旨を間違いなく理解することは大切ですが、テクニックばかり学んだり考えても不安になるだけです。クライアントの気持ちを読み取り、わかろうとすることです。気持ちを理解した先に、問題も見えてきます。何を問題と感じるかはクライアントそれぞれなのです。客観的な問題などというものはありません。

ちょっと極端な書き方をしてきましたが、勉強すればするほど技に溺れたり、正しいやり方があるという幻覚に襲われたり、明確な方程式があるはずだと探したり、そんな感じで右往左往して、不安になってしまう人が少なくないのであえて書いてみました。ノウハウを学ぶのも大事だし、サイトにも時にいいことも書いているでしょう。そういったことを否定したくて書いているわけではありません。とにかく、本当に大切なのは自分自身の態度です。すべては相手をわかろうとすることから始まります。関心が自分に向いては、相手の理解ばできません。これはカウンセリングに関わらず、対人関係すべてに言えることのように思います。誰しもが相手をわかろうとする気持ちを持てば、世の中のいさかいの多くは消えうせるのではないでしょうか。
「本気で相手をわかろうと思えば、わかることができる力」を人間は本来、持っているはずです。文明社会の中、ビジネス社会の中で、私たちはその力を弱めてしまっているのです。
今こそ、私達の本来もっている「本気で相手をわかろうと思えば、わかることができる力」を力強く解き放ちましょう。

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