どの福音か?:ガザでのイスラエルのジェノサイドにおける聖典の軍事化
Which Gospel?: The Militarization of Sacred Texts in Israel’s Genocide in Gaza
ヨセフ・カマル・アルコ―リ Yousef Kamal Alkhouri
ベツレヘム聖書大学助教授 Assistant Professor of Biblical Studies at Bethlehem Bible College, Palestine
(International Journal of Public Theology, November, 2024)
稲垣久和 訳
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要約
聖書は、時として、人々を抑圧し抹殺していくことを正当化するために使用されてきた。本論稿はキリスト教徒とユダヤ人のシオニズム、それがパレスチナへの入植者のイデオロギーと化したときにジェノサイド的になることを論ずる。そのイデオロギーは、シオニストの移住者たちがパレスチナ人に対して仕掛ける戦闘行為の中で、その植民地主義を正当化するために、聖書諸書が軍事化していく道筋を見せている。さらに、イスラエル軍は“福音”と呼ばれる人工知能的な軍事組織を展開した。この論稿は次のような疑問を投げかけたい。パレスチナ人はこの言葉を聞いた時にどんな“福音”を思い浮かべるのか。イエスの王国(神の国)のものかジェノサイドのものか。近年の聖書学の帝国批判を適用して、本論稿はこの概念が帝国的なものか反帝国的なものか、その意味の広がりを示してみたい。初期の頃は帝国的な“福音”であり、それが後にキリスト教の出現とともに反帝国的な王国の“福音”に変化したのである。王国の福音の伝達を担っている教会は抑圧に面して真に預言者的であるべきだ。
1. 序
ガザへのイスラエルの戦闘行為は、何か月にもわたり公共空間の主要ニュースとなった。この出来事は各種メデイアを通して、SNSや学術機関と研究所の大きな話題ともなった。神学者や学問研究者たちも緊急声明を出して、イスラエルの“自衛”という主張とそれを支援する主張に対しては強く非難した。権威ある聖書文献協会(SBL)は2023年10月7日のおぞましいハマスのテロ攻撃に対して10月16日に非難声明を出した。しかし70年以上にもわたるシオニストの定住植民地主義(settler-colonialism:入植)と、そのパレスチナ人の大量虐殺への批判はその非難声明にはない。(注1) 批判の嵐を受けてSBLは10月20日にさらに注意深く明確な声明の草稿を出したのだが、やはりイスラエル政府の残虐行為への言及はなかった。(注2) 他方で世界中の著名大学の研究者や学生たちは、現在進行中のガザでのパレスチナ人の殺戮と飢餓状況に対して、反対の声をあげている。これまで、西洋教会は沈黙するかまたはシオニストの入植プロジェクトを支援してきたか、どちらかであった。後者ははっきりとその神学的・聖書的主張があってのことだった。
この論稿は聖書諸書の軍事化という現象を調べる。それは(2024年6月のように)イスラエル政府がその戦争を正当化するために、聖書諸書を軍事的に解釈する手法を始めたことを意味する。それはガザ地区のパレスチナ人攻撃に対して、多様な高度な兵器類を展開することも含んでいる。特に注意すべきは、人口知能によって強化された“福音”と命名された高度で破壊的な新兵器についてである。(注3) これまで聖書学者にしても神学者にしても、新約聖書の最初の4冊とイエスのミニストリーに込められたこの言葉の基本的な意義について、いくら間違ってもまるで反対の意味を賦与した人たちはいなかった。
本論稿は帝国批判のアプローチという手法を取ることにする。その目的のために、リチャード・ホースレー、ジョン・ドミニク・クロッサン、ワレン・カーター、アダム・ウインの聖書学研究を参照する。その中で特に、新約聖書には反帝国主義的な要素がある、(注4) という主張に注目する。これら一連の研究は、もっと最近のクリストフ・ヘイリグ、クリステイーナ・ペッターソン、スコット・マックナイトの仕事に踏襲されている。(注5) それはパレスチナ人の研究者や神学者のミトリ・ラヘブ、ナイミ・アテーク、ムンサー・イサクによっても支持されている。(注6)
ガザでのイスラエルの戦争犯罪が本論稿の内容である。筆者はガザ出身のパレスチナ人キリスト者であって、家族がガザに住んでいる。聖書諸書の軍事化への批判は、筆者にとってまさに最優先事項である。特に、ジェノサイドの行為ともみなせる入植計画をすすめるに際して、AI兵器を“福音”と呼ぶような事態を思うならばなおさらだ。“ジェノサイド”という言葉は法律的には確かに論争を呼んでいることには注意したい。ただこの分野で多くの専門家によっても主張されている言葉だ。例えば、アモス・ゴールドバーグはイスラエルの歴史家でエルサレムのヘブライ大学のホロコーストとジェノサイドの研究者である。2024年4月17日にヘブル語で出版された彼の論文のタイトルは、「そうだ確かにそれはジェノサイド、まさにジェノサイドとは何かを見せつけるもの」というものだ。(注7) ゴールドバーグによればイスラエル当局のレトリックの“結果”は、パレスチナ人たちを非人間化してガザにおける破壊と死に追いやる行為で、「疑いもなくジェノサイド的」(注8) である。もっともゴールドバーグの結論は、イスラエル系アメリカ人でブラウン大学のホロコーストとジェノサイド研究の教授であるオメル・バルトフとは対極に位置している。彼は「ガザで起こっていることは現時点でジェノサイドといえる証拠はない」(注9) と。それでもバルトフは、イスラエル政府が戦争犯罪を行い、人道上の罪をも犯しているだろう、ということは認めている。法的な意味で、ジェノサイド行為を犯しているかどうかの論証には時間がかかるであろう。
今のところ、国連人権委員会は2024年3月25日の報告の草案で「イスラエルがジェノサイドぎりぎりのことを犯したと信ずる十分な基盤がある」(注10) と書いている。この報告は証拠のいくつかをひも解いている。それはラファエル・レムキンのジェノサイドの定義に言及していて、「民族浄化」や「強制送還」の行為も含むとしている。(注11) 今ここで出されている疑問点というのは、“福音”という言葉を聞いた時に一体どの“福音”をパレスチナ人が思い浮かべるのか、ということである。それは神の国につながったものか、それともジェノサイドにつながったものなのか。この論稿の目的は、いかに福音の概念がその明白さを失ってしまい、パレスチナ人を混乱させているのかを示すことである。
2. 文脈におけるジェノサイド:パレスチナのシオニスト的入植
国連は1946年12月11日に、ジェノサイドの犯罪への禁止とその罰則に関する条約を通過させた。そこでジェノサイドとは、「国際法の下での犯罪であり国連の精神と目的に反し文明世界によって非難される行為」(注12) と宣言した。その条約は法的基盤と規則を持っていて、それによってジェノサイドとは「全体的にしても部分的にしても国民的、民族的、人種的または宗教的グループの破壊という意図をもって為される行為」(注13) と定義される。この条約は第二次世界大戦での直接の経験と、そしてホロコーストを通して生み出されたものである。「ジェノサイド」という言葉は、ポーランド系ユダヤ人法律家ラムキンが1944年に作り出した。(注14) 彼は1930年代にナチの進行と同時にポーランドを逃れた人物だ。そのすぐ後の1948年に、今度はユダヤ人によってパレスチナ人が民族浄化に会う、つまり約75万人がシオニスト軍隊の犠牲になってしまった(注15)。パレスチナ人たちはアル・ナクバとして、この戦争犯罪を共に記憶し続けている。
シオニスト運動の創立の父たちは、パレスチナへの入植プロジェクトを打ち立てる意図が、まさにパレスチナに代々住みついた人々の強制退去、民族浄化、絶滅となってしまうのだ、ということをすでに理解していた。ユダヤの植民省の責任者ヨセフ・ワイツは「この国で二つの民族が一緒に住む場所はない。唯一の解決はアラブ人のいないパレスチナである。そして彼らすべての立ち退き。すなわち一つの村も、一つの部族も残さずに」(注16) と語っている。イスラエル・ザングウイルは1905年の書き物で、シオニズム運動というのは「我々の父祖たちがしたように目の前にいる部族の剣による一掃か、または多くの異質な人々との格闘か、どちらか一方へ準備をせねばならない」(注17) と忠告していた。ザングウイルはシオニストの入植プロジェクトを完遂するために、パレスチナ人たちの「剣による一掃」(注18) というヨシュア方式の軍事的征服(ヨシュア記3:1-17)を予想していた。
シオニズムの歴史は複雑である。ヨーロッパのナショナリズムと反ユダヤ主義は、ホロコーストの何十年も前から、シオニズム運動とそのパレスチナへの入植プロジェクトという計画の大きな要素を形作っていた。20世紀前半のナチの行為、すなわちヨーロッパの600万人ユダヤ人抹殺は、シオニズム運動の目的を加速した。ホロコーストを生きのびたヨーロッパの多くのユダヤ人移住者たちにとって、パレスチナは安全な天国となっていった。ヨーロッパのユダヤ人たちがこの地域を住み家とすることによって、逆にパレスチナ人たちが住み家を失うこととなった。
入植とジェノサイドは重なり合う。ユダヤ人たちが新しい社会を建設する目的はもとからの住民を犠牲とし、かつ自分たちこそがもとからの住民だったという主張となる。(注19) このような主張の中で根絶、追放を通してもとからの住民への被害は増していった。UNRC(国連難民委員会)の報告によれば、入植とは「運動的で構造的過程と、強制退去、もとの住民グループの根絶を目的とした行為とが合流したものであり、その頂点がジェノサイド的な根絶・消滅である」(注20)、 と認定した。移住の実現がジェノサイド的な様相を帯びてきているとはいえ、パトリック・ウオルフはすべての入植プロジェクトがジェノサイド的であるわけではないと注意を促している。(注20) それはロレンツオ・ヴェラシニの主張ともつながる。移住計画の背後にある関心というのは「もとからの住民を難民化すること」であり「移住者をもとからの住民として扱うこと」(注22) という主張だ。換言すれば、入植イデオロギーというのは、全体的にしろ、部分的にしろ、移住者への場所を造るためにもとからの住民の共同体を根絶する上に成り立つ、という言い方になる。エルサレムのヘブライ大学のアーノン・デガニは同じように言う。入植の前提は元の住民の根絶でありかつ「移住者の社会はもとからの住民に対して暴力的、場合によってはジェノサイド的傾向を持っている」(注23) と。
次の文はこのジェノサイド的な意図を反映している。シオニズムの創立者であるテオドール・ヘルツル (1860-1904)の主張で、パレスチナにユダヤ人国家をつくるためには、アラブの国々の全体でパレスチナのアラブ人を受け入れることが必要だ、と。すでに1895年にヘルツルは次のように宣言していた。
もし我々がその土地を占有すれば国家は直ちに我々に利益をもたらす。我々にあてがわれた私有の土地は政府が穏やかに所有する。こういった移行期の国においては、雇用をうまく調達することによって一文無しの人々に魂を吹き込もうとする。財産所有者は個人ではなく我々政府の側にある。この調達と貧困の除去のプロセスはともに慎重に用心深く遂行されねばならない。(注24)
ここではジェノサイドとは一つの出来事ではなく、プロセスであることに注意したい。(注25) 大量殺人や民族社会の物理的破壊というのは、必ずしもジェノサイドという排他的な行為のみではないのだ。「全体的にしても部分的にしても、その物理的破壊をもたらすように仕組まれた人生の条件」(国連報告項目ⅡC)を屈折させながら、結局は深刻な物理的、精神的害悪を生じさせることもジェノサイド的である。これらのことを考慮すると、ヘルツルの述べていることのいくつかの要素は次のように分類される。第一にシオニストの政策に対して次のことを指摘する。まずパレスチナ人の土地を、そして彼らの主な社会的、経済的な力を奪うこと。そのようにしてシオニスト運動はパレスチナ人を体系的に貧しくさせていくことを意図する。第二にヘルツルは、何よりも「貧困の除去」を掲げた。つまり雇用を拒否されて貧困になった人々、特にそこで生まれたパレスチナ人たちを周辺の国々に追いやる精神を吹き込むこと。ヘルツルが書いていた初期のシオニストのスローガンがあった。そして「人々のいない一つの土地、土地のない一つの民族」は、実はザングウイルのもので、彼はまさにパレスチナを指していた。(注26) この特別のスローガンはさらにさかのぼって1842年のスコットランドの聖職者のアレンサンダー・ケイト(1791-1880)と1854年の英国の政治家で聖職者の第7代シャフツベリー伯爵(1801-85)に至る。(注27) 彼らのレトリックはイザヤ書6:11を彷彿とさせ、これを拡大解釈して、パレスチナの土地には人影がないといったシオニストの言い方へと至る。さらに誇張されて、シオニスト運動の一方的で特有な使命に従って「花嫁(パレスチナ)は美しいが彼女は別の男(アラブ・パレスチナ人)と結婚している」(注28)といった具合だ。
シオニズムという運動は生まれからしてジェノサイド的なのであった。それはヨーロッパのユダヤ人たちにとっては、虐殺と反ユダヤ主義から逃れるための安全な避難所として始まった。シオニズムは必ずしも英国(注29) やドイツ(注30) のユダヤ人共同体に特有なものではなかった。ここでの主な問題はこういうことだ。ユダヤ人が安全な避難所を見つけることが、パレスチナ人の安全な避難所を否定することになるということである。パレスチナ人たち、特に1967年以後はガザの人々が抑圧され、無視され見えなくされていった。2006年以後イスラエル政府は360平方キロにわたり海岸地区を最低限の生命維持を除いて壁で封鎖した。いくつかのメデイアと人権団体によれば、イスラエル政府はガザが一日に費やす基本カロリーを“計算”して、(注31) 人々の出入りを統制し、彼らの生命維持のみをはかっている。(注32) この非人間的な条件について、すでに2006年以前にユダヤ人社会学者のバルク・キンバーリングはガザを「世界最大の収容キャンプ」と表現していた。(注33) 2000年と2023年の間にイスラエル政府はガザに少なくとも4回の軍事作戦を行った。(注34) 何千人ものガザの人々が殺され、傷つけられ、追い出され、財産を失った。
今回2023年10月以降のガザでのジェノサイドは、これまでのシオニスト入植のジェノサイドの歴史の中でも新しい出来事である。イスラエル政府高官の使うパレスチナ人の非人間化、悪魔化、劣等化の用語法は、まさに彼らイスラエル政府とシオニズムの入植者たちのジェノサイド的な意図を明確に示した。(注35) ガザでのイスラエル軍のキャンペーンについて、大学間人権ネットワークは包括的な105頁にわたる報告書を出し、イスラエル当局の声明の表現を指摘し、2023年10月7日以来のガザでの軍事行動がジェノサイド的であることを論証している。(注36) この文書は以下のような著名なグループの連名になっている。国際人権クリニック、ボストン大学国際人権クリニック、コーネル法科大学院人権法センター、プレトリア大学ローエンスタイン人権プロジェクト、イエール法科大学院。ハーグ国際司法裁判所はイスラエルのガザでの軍事行動はジェノサイドに「相当する」(注37) と判決している。
これら諸報告と正反対の立場を取るのが、イスラエル軍が推進している攻撃への正当化の言説である。その中にはキリスト教徒のロビーイストのグループでイスラエルのためのキリスト教連盟(CUFI)(注38) やアメリカ合衆国の何名かの政治家たちがいる。またテイム・ウオルバーグは議員でかつムーデイー聖書学院とホイートン大学卒の牧師でありながら、「ナガサキ、ヒロシマのように」ガザに爆弾を落とすべきなどと言った。(注39) たとえジェノサイド的戦闘であってもイスラエルを支援しそれを「聖書の教え」などと言うのはマイク・ジョンソンで、彼は米国連邦下院議員だ。(注40) イスラエル支援の福音派の牧師たちの中には、ジェノサイドを聖書の預言と終末論の視点から解釈している人たちがいる。(注41) 彼らにとってガザで何千ものパレスチナ人が殺されているのは避けられない出来事であり、キリスト再臨の際の先導となる祭壇上での犠牲だとして正当化されてしまっている。これらの諸例は西洋キリスト教からのイスラエル政府への無条件の支援を示していて、そのジェノサイド的イデオロギーと機械的見方は、まさに問題だらけの聖書解釈と神学によって為されているのである。
3.聖書諸書の軍事化:ジェノサイドのソフトウエアとしての聖書
ヨーロッパの帝国主義の植民地主義とシオニズムは、その統治と植民地主義と現地の人々の搾取を正当化するために聖なる宗教テキスト類を道具化してきた。R・S・スギルタラジャーのようなポストコロニアルな批評家たちは、聖書は征服のための書物であるという議論を展開している。(注42) パレスチナの神学者でルター派牧師のミトリ・ラへブは、シオニストの移民計画を正当化するようなシオニストのキリスト教神学と聖書テキストの使用は「ソフトウエア」である、つまりパレスチナ移住のための軍事力である「ハードウエア」のもとになっているものだ、と。(注43) キリスト教徒であれ、ユダヤ人であれシオニストというのは、ユダヤ教とキリスト教の聖書諸書をパレスチナへの移住とそれに伴うガザでのジェノサイドへの正当化として発動するのだ。
マイケル・プライオールは『聖書と植民地主義:道徳的批判」の中で、シオニストによるパレスチナへの軍事征服への適用としての聖書の武器化を論証している。宗教的な、かつ世俗的なシオニストたちは共に聖書的な権利、または民族的・宗教的ルーツをパレスチナという土地に対して主張した。あるシオニストとキリスト教徒のグループにとって聖書は彼らの植民地化に対して正統性を与える「所有契約書」(title deeds)(注44) である。約束、征服、亡命、帰還という物語は本質的な構成要素になっていた。創世記12:1-3,7、13:15、17:8はよく引用される。土地としてのパレスチナは「住民がいなかった」というシャフツベリー卿(1801-1885)の初期の頃の言明はイザヤ書6:11を想起させる。
西洋のキリスト教の原—シオニズムがユダヤ人のシオニズムを形作ったのは明らかである。ユダヤ人のシオニスト運動が出てくるだいぶ前に、ケイス・アレクサンダー(1791-1880)とシャフツベリー卿がキリストの再臨への前提条件としてユダヤ人たちの「約束の地」への「回復」という想像をした。ゲルション・シャフィールはいとも正確に次のように言った。
ユダヤ人のメシア願望が具体的なシオニストの計画になるずっと前に、キリスト教の願望があった。それは英国のキリスト教徒の回復主義の中に現れた。それはキリストの再臨の前提として大量のユダヤ人たちがパレスチナに移住することを要求し支援する運動でありその時に彼らはキリスト教徒に改宗するというものだ。(注45)
「シオニスト聖書」において、パレスチナの歴史家のヌア・マサルハ(1957- )はシオニストの運動は、ヨーロッパのナショナリズムと植民地への移住の延長上にあると論証している。それはキリスト教の側で聖書の道具化、聖書考古学と神学を導入してシオニストの入植を正当化してしまった、と。マサルハによればシオニズムは「多くのヘブル語聖書の神話、特に戦争による征服の伝統を収集して、パレスチナへのシオニト戦闘移民の諸テーマを構成した」。(注46) カナンの征服とペリシテ人の一掃、へブル人の宿敵であったカナン人やアマレク人との戦いといったテーマは、シオニストたちとシオニスト的なキリスト教徒たちにとって、パレスチナ人の根絶とその土地の植民地化が神学的に正当化されるように利用された。こういった実践はまさに神の命令である、ということになろうか。
シオニスト的なキリスト者たちにとって、ガザのパレスチナ人たちへのジェノサイドは独特な方法で黙示録的になっている。シオニストの移民計画をめぐる主な出来事はどんなものも聖書に戻って20世紀、21世紀的に適用されている。最近の一例としてはオランダの名誉領事のロジャー・ファン・オオルドのイスラエル国家への言及がある。オオルドは「イスラエルのためのキリスト教」の1992年から2020年までのオランダ委員長であった。彼にとってハマスはカオスと暴力を意味する。創世記6章の読解に基づき、「その当時、主は地上に人間を創造したことを悔やんだ、そこは暴力に、そしてハマスに満ちたからである」。(注47) それは単なるこじつけである。オオルドがきちんと理解していないのはハマスというのは以下の頭文字にすぎない。Harakat al-Muqawama al-Islamiya,すなわちイスラーム抵抗運動(Islamic Resistant Movement)の略である。また彼以外の人々も、現在の出来事を彼ら自身の勝手な聖書解釈に結びつけている。聖書のアマレク物語を独特の終末論に結び付けたり、AI軍事システムを“福音”の名で読んだりしていることがまかり通る。
ガザへの戦争宣言で、イスラエル現首相のベンヤミン・ネタニヤフはサムエル記上15:3のサウル王への神の命令を引用している。(注48) 「さあ、行ってアマレクを討ち、アマレクに属するものはすべて滅ぼし尽くしなさい。容赦してはならない。男も女も、子どもも乳飲み子も、牛も羊も、ラクダもろばも打ち殺しなさい」。この物語は古代のへブル人とアマレク人との間の戦闘である。最初の油注がれた古代イスラエル王が、預言者サムエルを通して神から受けた最初の命令であった。それはアマレクを討って破滅させることである。このテキストにおいてパレスチナ人はアマレクと見なされている。ネタニヤフはこのような軍事的使命において、自らが神から油注がれているサウル王の役割を果たしているというわけだ。
このようなサムエル記上15章への言及は最近なされるようになったわけではない。ユダヤ教とキリスト教的シオニスト (注49) の、古代のカナン人やペリシテ人やアマレク人への敵意を示した箇所はこれまでも繰り返し引用されてきた。ジェフリー・ゴールドバーガーは「ニューヨーカー」への寄稿においてヨルダン川西岸のシオニストのヘブロン定住者たちへの調査を載せている。彼は定住の指導者たちへのインタビューを紹介しそこでもやはり聖書からの引用によって町づくりを合理化している。アマレク物語に関してゴールドバーガーは「ある定住指導者たちはパレスチナ人たちを現代に受肉したアマレク人たちと見ている」(注50) と。移住者委員会委員長のベンツイ・リーベルマン(1959- )とのインタビューの中で、確かにベンツイは「パレスチナ人はアマレクである!」(注51) と明言している。
マサルハは「アシュケナジの主だったラビたちや霊的指導者たちはヘブル語聖書の物語を現代のパレスチナに住むイスラーム教徒、キリスト教徒と昔のカナン人、ペリシテ人、アマレク人、イシマエル人に見立てて、「神の計画」によって根絶されるか追放されるかという運命にある」(注52) と。同様にエルサレム国際キリスト教大使館や福音連盟は似たような文書を出していて(注53)、イスラーム教徒、アラビア人、パレスチナ人をアマレク人と呼んでいる。一例はキリスト教大使館の副委員長のデイヴィッド・パーソンズで、彼は10月7日の事件を永遠の宗教戦争の一部分で、アベルに対するカインの妬み、イシマエルとイサク、エソウとヤコブ、そしてアラブ人イスラーム教徒とイスラエルのユダヤ人にまで及んでいると解釈している。(注54) バーミンガム・アラバマの福音連盟のセオポリス研究所長ピーター・レイサートは、ハマスは攻撃の際にアマレクの戦術を使った、と言っている。パレスチナ人とハマスの区別はするもののレイサートは注意深く「ハマスとアマレクを比べることがジェノサイドを正当化したり示唆したりすることにはならないのだが」と指摘する。それでも彼は、イエスは「すべての敵を彼の足で踏みつける。たとえそれがハマスという名のアマレク人のみならず、暴力を愛し憐れみを憎むすべての者に対してだ」と結論する。(注55)
10月7日の事件とガザの状況に対して、シオニスト的キリスト教徒の反応はきわめて多様である。その多様性は原理主義者、字義的解釈者、リベラル派と広く分かれている。それでも一致点らしいものが見えるのは、イスラエルのシオニストの「自衛」という表現である。(注56) 多くの字義的解釈者はシオニストの入植の事実を神の奇跡として歴史的に見なした上で、多くの出来事を彼らの視点からの聖書の預言と解釈している。そのような聖書の預言へのアプローチは、イスラエルのためのキリスト教連合のような機構を生み出している。その働きは重要な政治的役割を負い、神学的な確信からイスラエル政府を支持しているのである。(注57)
もう一つの例はグレッグ・ロック(1976-)の働きであろう。ロックはテネシー州の福音派のグローバル・ヴィジョン聖書教会の牧師である。彼の10月8日の説教では、後ろにイスラエル国旗を掲げてイスラエル政府がガザを破壊するように要求し、岩のドームを吹き飛ばして第三神殿を建造するように、と。このような行動が、終末の印として、キリストの再臨と神の国の到来を早めるのだ。(注58) 同様なものは、別の福音派のメガチャーチ牧師グレッグ・ローリー(1952- )のYouTubeビデオでこれは約150万人が視聴している。その中でローリーは「エルサレムは終末時の出来事の焦点である」と述べる。(注59) ハマスの攻撃はゼカリア2章とエゼキエル37章、48章の読解を通して解釈されている。ロックやローリーは米国キリスト教指導者たちのほんの一例に過ぎず、10月7日の出来事直後の、はっきりした言動であった。(注60) 彼らの立場は、他のキリスト教グループや指導者たちが暴力行為の停止と停戦を呼びかけているところから、ほど遠いところにある。(注61)
第三の例は“福音”という言葉をAI軍事システムに使用することについてである。国連専門委の報告書によれば、イスラエル軍隊は「福音」、「ラベンダー」、「お父さんはどこ?」という三つのAIシステムを「市民」「インフラ設備」「住宅建物」への攻撃として使用している。(注62) これらのシステムは「市民の多数に住宅、生活サービス、インフラ設備に対する前例のないコミュニケーションギャップ」を引き起こす。(注63) パレスチナ人とイスラエル人ジャーナリストによって運営されている+972というオンライン雑誌がガザにおけるこの語のシオニストの使用について報告した、そのシステムはヘブル語で「ハブソラ」(Habsora)と名付けられ英語で「福音」(Gospel)と翻訳された。前のイスラエル情報局高官がそのシステムを「大量暗殺工場」と表現した。(注64) その報告は福音と言う語の幅広い使い方が「ガザにおける市民生活への広範な害悪」になる理由の一つである(注65)、と。イスラエル軍隊の以前の長官アヴィヴ・コチャヴィが福音システムの情報・軍事能力を「かつてはガザで年間に50の標的だったが、今ではこの機械は一日に100の標的を狙える。たとえそのうちの50%が攻撃されても」という段階にまで引き上げた。(注66) オックスフォード大学のジェニファー・カシデイは、戦争機械のアルゴリズムへのイスラエル軍隊の信頼の一つとして、“福音”の自然的そして倫理的課題があることを説明している。(注67)
キリスト教徒たちの中には、シオニズムやディスペンセーショナリズムに加担しない人々もいるだろう。(注68) しかしシオニズムというのは、確かに宗教的伝統と聖書諸書をシオニストの入植への支援への正当化のために利用しているのである。クリスチャニティ・トゥディ編集長のラッセル・ムーアは1948年以後の入植プロジェクトを聖書預言の成就とは信じていない。それでも「アメリカ人キリスト教徒はイスラエル支援の見えない攻撃に結び付けられている」と語っている。(注69) ムーアはローマ書13章を挙げ、イスラエル政府が「それ自身を守る」権利があるとしている。(注70) ムーアの立場はシオニズム支援がキリスト教原理主義者の中だけでなく、進歩派や自由主義者たちの間にもあることを例証するものである。
4. どの福音か?
アラビア語のinjeel(福音)という言葉は、パレスチナ人キリスト教徒の間ではよくキリスト教聖書全体を指すのに使われている。パレスチナ人イスラーム教徒はinjeelという語をもっと一般的にヘブル語聖書にまで必ずしも広げないで、キリスト教の聖なるテキストという意味で使う。このような福音への包括的な言及がアカデミズムの世界でも起こっている。スコット・マックナイトは、福音を、救済をもたらす神の介入といったメタナラテイヴと見なす、すなわち「救済の福音」という言い方だ。(注71) マックナイトに従うならば、「福音書は彼らがイスラエルの物語をそれ自身イエスの物語で完成すると見ている」ということである。(注72) グラハム・スタントンはこの言葉は初代キリスト教徒に三つの意味を持ったとしている。「口頭での宣言」「書かれた福音」そして「良い知らせ」。(注73)
破壊的なAI軍事システムと機械という意味で「福音」を使うのは、特にキリスト教徒のサークルにおいて関心事なのである。パレスチナ人にとって、よい知らせの聖なるテキストとしての「福音」という唯一の意味が、死と破壊をもたらす軍事的な武器と混同されていることは危機的だ。「福音」は帝国的に植民地化する力の代名詞であって神の(王)国の代名詞ではない。疑問はこういうことだ。この言葉を聞いた時にどちらの「福音」をパレスチナ人が想起するのか。王国なのかそれともジェノサイドなのか。
「福音」evangelionという概念はいくつかの意味を持つ。新約聖書の最初の四つの本というだけではなく、解放と、人間および被造物への贖いをもたらす神の介入という良い知らせという意味もある。マルコによる福音書はまさによい知らせの中心である。神の国はイエスの中心的メッセージと彼の福音そのものを示している。今から何年も前にG・S・ビーズレ-ムレイ(1916-2000)は新約聖書の研究者の間で一つの合意があると言った。それはイエスの神の国と彼のミニストリーに関する教えこそが、まさにイエスの信頼と中心にある、ということだ。
イエスへの福音の証言の領域について、ほとんどですべての新約聖書の研究者の一致があるとすれば、それはイエスの神の国についての教えである。それは福音諸書に記録されたイエスの全体の宣言にまで浸透しているし、彼のミニストリー全体を決定したように思われる 。(注74)
ビーズレ-ムレイにとって、神の国の宣言は「イエスのミニストリーの序章のクライマックス」である。(注75) マルコにとっては良き知らせ(1:1)とは、すなわちイエスの神の国が近いことの宣言にほかならないし(1:1、14-15 NRSV)、したがってイエスの福音とは神の国の福音である。それはヘブル人にとって、帝国支配と抑圧からの回復と解放への熱望の成就であり、イザヤ書52:7,61,62に言われていたことであった。(注76) ジョージ・エルドン・ラッド(1911-1982)は語っている。
イエスは神の国の到来を宣言した。彼はヘブライーユダヤの思想の背景に対峙して、人々が罪、悪、死の支配する状況の中で生きそこから救済される必要がある、と語った。彼の神の国の宣言は希望と旧約預言者たちに戻ったところ、すなわち新時代への期待にある。そこには今の時代の悪のすべてが神の行為によって人間と地上の存在から追放される、と。(注77)
福音書の中心メッセージとしての神の国を解釈することは問題をはらんだ。特にパレスチナの文脈ではそうだ。神の国の将来的解釈は、シオニスト的キリスト教徒と彼らの見方によるならば、シオニストのパレスチナへの入植が預言の成就となってしまうからだ。アルベルト・シュヴァイツアーとヨハンネス・ヴァイスのような学者は、神の国を将来の黙示的出来事として解釈した。シュヴァイツアーとヴァイスは入植プロジェクトについて触れなかったし支援もしなかったに違いない。にもかかわらず、彼らの神の国の将来的な見方がシオニスト的なキリスト教徒のイデオロギーとして影響してしまった。ヤーコフ・アリエルは次のように言う。「聖書の字義的な読解とメシア的な信仰に固執して、多くの福音派のキリスト者は今日のユダヤ人を聖書的イスラエルの相続人であり、メシアの時代のダビデ王国の回復についての預言の対象として見なしている」(注78)。ラッドも次のように注意している。
アメリカや英国のある福音派サークルでは神の国の新奇な見方が大きく影響力を持っている。すべての旧約聖書のイスラエルへの預言は文字通り成就されるべきだという前提から出発して、ディスペンセーション主義者は神の国と天の王国をはっきり区別した。天の王国は地上における天(神)の支配であり、旧約聖書のイスラエルに約束された地上の神権的な王国に関係している。(注79)
この種の王国の解釈はシオニスト移民の「ソフトウエア」となった。王国の福音が破壊的でありかつ帝国主義的暴力と支配という批判を受けてすらも、なおそのように解釈し続けている。
今日のジョン・バークレイ(注80) 、ラウラ・ロビンソン(注81) そしてシェイン・ウッド(注82) のような研究者たちは、ローマ帝国は新約聖書の著者たちの中で周辺的だがはっきりした役割を果たしたと言っている。例えばバークレイは、パウロは非政治的な人間ではなかったと認めている。「パウロの福音は深く反定立的で対決面がある、すなわち彼は二つのまったく異なる反定立的な王国を知っていた」(注83)。似たような表現でスタントンも次のように語る。
帝国内に流布した宗教観が、必ずしも初代キリスト教徒がその言葉(福音)を使用する原因となったわけではないが、それでも背景にはなった。はっきりとキリスト教的な使用法を作り上げる必要があり実際にそうしたからだ。キリスト教徒たちの主張はこうである。キリストにおける「良き知らせ」は神の無類の出来事でローマ皇帝たちについて繰り返される誕生やら、健康やら、帝国加盟の儀式やらへの「良き知らせ」とは比べようのないものだった。(注84)
スタントンは確かに帝国の福音と初代キリスト教徒の共同体で使用されていた福音のいくつかの意味を区別している。彼は「イエス・キリストの福音の宣言はローマの皇帝たちに関する諸「福音」への対抗概念となっていた」(注85)。『イエスと神の帝国』において、ウオーレン・カーターはテキスト間比較方法を駆使して初代キリスト教徒のその言葉の使用法は反-帝国的だったと語っている。
帝国は、唯一の皇帝や統治者や兵士や税金が言及されていれば諸福音が現れている。ローマの制裁、エルサレムを基盤とした地方的指導者、病気の蔓延、食料調達の不安定、外国支配、主権者の言語、復讐のファンタジー、新たな正義の世界はすべてローマの帝国的構造と実践と相互作用している。(注86)
換言すれば、福音の概念は1世紀においては異なる響きを持っていた。ある人びとには福音は背景にある帝国の役割と支配の宣言であった。初代キリスト教徒の共同体では福音は反帝国的でありローマ帝国への否定的な対応物である。カーターの結論は「イエス・キリストの一つの福音とカエサルの諸福音との間には強い対抗関係があり福音という言葉全体をおおっていた」(注87)。その中心において、福音は神の国の心(heart)であり、神の支配であり、カエサルがあらわす帝国の福音への挑戦である。神の国が目の前にあると言明することは必然的に帝国の指導者たちの王政と主権への挑戦を意味した。新しい世界への別のヴィジョンを示すことにより、イエスは「神は、パレスチナにおけるローマ帝国的な秩序を崩すであろう『政治的革命』のプロセスの中にある」(注88) という宣言をしつつあった。
イエスの福音をこのように理解し、その政治的な含みを考慮しながらも、その福音は神に属し神へと回復する世界を見据える。そして、その神は帝国的な抑圧のシステムではなくて、人間と被造世界に対して生き生きと贖いの業をなしている。(注89) 神の国の福音は帝国にとっては脅威であり、他方で、帝国の福音と植民的移住者たちによる統治は、もとの住民たちには禍である。イエスは福音の具現化であり癒しと解放をもたらす神の国そのものである(ルカ4:16-19、イザヤ58章、61章)。イスラエルのガザにおける標的という文脈では、帝国的「福音」は殺人と破壊の戦争機械として物資化されている。「福音」はジェノサイドの具現化となってしまった。
シオニスト的キリスト教徒の王国の解釈と、そのシオニストの入植プロジェクトの必要性の支持は、福音がパレスチナ人たちには災厄のニュースとなっているということだ。「パレスチナの時、Kairos Palestine=KP」という2009年作成文書の中で超教派のパレスチナ・キリスト教文書で「福音の中の「良い知らせ」は我々にとって「死の前触れ」となってしまった」。同じ文書は以下のように告白している。
(イエスは神の国の宣言の中で)すべての人間の人生と信仰における革命を挑発した。彼は「新しい教え」(マルコ1:27)をたずさえて来た、旧約聖書に新しい光を投げかけ、我々のキリスト教信仰と日々の生活に関わる主題について、約束、選び、神の民とその土地などに関する主題についての教えである。我々は、神の言葉は生ける言葉であること、歴史の各時代についての光を投げかけ、神が我々に今もここで語っていることを信じる。このような理由から神の言葉を石の文字に変換すること、つまり、神の愛とそして人々と個々人の両方の生における神の摂理をゆがめること、それらは受け入れられない。原理主義者の聖書解釈は間違いである。それは神の言葉を石化させ世代から世代へと死の文字として伝達させてしまう。この死の文字は今日の歴史において我々の土地の権利を奪うための武器として使われる(KP,2.2.2)
「パレスチナの時」という文書は、このように移民と帝国的抑圧を正当化するための聖書諸書の軍事化と武器化を拒否しこれに強く反対している。神の国の福音の預言的代行者としての今日の教会の使命、それは以下のようなものである。
神の国を宣言すること。その国は正義と平和と尊厳の王国である。生ける教会としての我々の召命は神の善きことと人間の尊厳への証人となることである。我々は祈ること、声を出すことである。その声は人間がそれ自身の尊厳と敵対者の尊厳を信じるところに新たな社会が到来すると叫ぶ声だ。(注90)
パレスチナの解放の神学に従って、ナイム・アテークは言う。
神に忠実であることは帝国の暴力に抵抗することである。そして不正義の悪に抵抗することは信仰深いということだ。イエス・キリストに従う人には、帝国の道具や戦術を使わず平和と非暴力の方法に沿った抵抗がある。(注91)
パレスチナの神学者と聖職者にとって、イエスの福音は帝国の暴力への抵抗へと必然的に導く。それは帝国の戦術ではなくイエスの神の国の道である。ムンサー・イサクは「イエスの道、神の国の道は帝国の道とは根本的に異なる。帝国を批判するだけでは十分ではない。帝国に挑戦する最良の方法は代替案を提供することだ」と言う。(注92) アテーク、ラへブ、イサクの確信は「パレスチナの時」の中に見いだされ、(注93) それは愛の論理をもって抑圧に抵抗することである。
5. 結論
私は入植のイデオロギーとしてのシオニズムが、パレスチナ人の根絶を意味しジェノサイド的であることを語ってきた。ジェノサイドは2023年に始まったことではなくて、まさに、シオニズム運動が生まれた原—シオニズムの想像力にまでさかのぼれる。シオニスト的キリスト教徒たちのヘブル語聖書に見いだされる預言の読解と未来的な王国の解釈が、やがてはシオニストの入植計画のイデオロギー的なソフトウエアとなってしまった。キリスト教徒とユダヤ人のシオニストたちは、聖書テキスト類をパレスチナ人たちのもとの住み家であった土地からの根絶と、民族浄化という目的で軍事化した。さらに悪いことには、最近のAIシステムと「福音」と名付けられた武器を、軍事的ハードウエアにまで発展させた。このようにしてシオニスト入植者たちは、聖なるテキスト類をソフトウエアからハードウエアにまでしてしまった。
この論稿は二つの福音があると仮定した。一つは帝国の福音で、皇帝たちの支配を暴力と軍事力という手段で祀り上げる。もう一つは神の国の福音で、抑圧の帝国的なシステムに挑戦する。パレスチナ人たちが「福音」という言葉を聞いた時に、この二重の意味で想起してしまうのはきわめてあり得ることである。それは解放と生命を与えるものなのか。それとも暴力と死を生じさせるものなのか。
福音の代弁者としての教会は預言者の声と呼ばれる。抑圧の支配と、その帝国イデオロギーと戦術を正当化してしまうような聖書テキストの悪用に反対し批判する。イエスの福音と、彼の宣言し具現化した神の国、これこそが今まさに問題になっていることだ。教会は抑圧と福音の悪用を目の前にして沈黙を選択できないはずだ。かつて、ディートリッヒ・ボンヘッファーは教会の沈黙に直面した。そして言った。「決断を遅らせるまたは決断に失敗することは、信仰と愛から誤った決断することよりもっと罪深い。この世への我々の恐れを振り切ろうではないか。今、問われているのはまさにキリストの出来事なのだ。我々は眠ったままでいるべきなのか?」。(注94)
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このような表現には「殺すか、移送か」などいくつかの解釈がある。にもかかわらず社会に深刻な害悪をもたらすことは明白である。
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例えば次の見出し参照。 “Impact Making Israel Stronger and Her People Safer”. “Impact”, Christian United For Israel, https://cufi.org/about/about-us/ [accessed 6 September, 2024]
Al Jazeera, ‘Republican Congressman Suggests Nuking Gaza’ 31 March, 2024, https://www.aljazeera.com/program/newsfeed/2024/3/31/republican-congressman-suggests-nuking-gaza. [accessed June 17, 2024]
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例えば以下を見よ。Gary Hamrick’s sermon on Ezekiel 38. Cornerstone Chapel, ‘Israel, Hamas, and End Times | Ezekiel 38 | Gary Hamrick’, YouTube, 15 October, 2023, https://www.youtube.com/watch?v=dNs2tt7auQ4. [accessed June 17, 2024]. また以下も参照せよ。‘Evangelical Attitudes toward Israel Research Study Evangelical Attitudes towards Israel and the Peace Process Sponsored by Chosen People Ministries and Author’, LifeWay Research, December 2017, https://research.lifeway.com/wp-content/uploads/2017/12/Evangelical-Attitudes-Toward-Israel-Research-Study-Report.pdf. [accessed June 17, 2024]. ネタニヤフは繰り返し福音派はイスラエルの“最良の友”、と語っている。また以下も参照。Maayan Jaffe-Hoffman, ‘Netanyahu Assures Evangelicals: Christians Are Israel’s Best Friends’ The Jerusalem Post, 3 September, 2023, https://www.jpost.com/christianworld/article-757395. [accessed June 17, 2024].
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Middle East Eye, ‘Netanyahu Faces Backlash for Evoking Biblical Amalek amid Heavy Civilian Casualties in Gaza’ YouTube, 29 October, 2023, https://www.youtube.com/watch?v=pMVs7akyMh0. [accessed June 17, 2024].
キリスト教シオニズムは特定のキリスト教の伝統ないしは特定の国に限られない。むしろ世界のキリスト教の伝統にも存在する運動である。ミトリ・ラへブはキリスト教シオニズムを次のように定義している。「ユダヤ人のパレスチナ地方への入植活動を支援するロビー活動で、それは聖書的‐神学的構成を使用しつつグローカルな考察をさしはさむメタ物語である」。Mitri Raheb, Decolonizing Palestine: The Land, the People, the Bible (New York: Orbis, 2023), kindle.
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エルサレム国際キリスト教大使館は、その支援しているシオニストの入植プロジェクトを「聖書的かつ神学的である」と言明している代表的存在であり、特に「シオニズムの聖書的根拠」なるものを強調している。Aron Engberg, Walking on the Pages of the Word of God: Self, Land, and Text Among Evangelical Volunteers in Jerusalem (Leiden and Boston: Brill, 2020), p. 13.
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