機械学習とメンタルヘルス

数年前からAIという言葉が流行り、どんなものにもAIという言葉がつくようになりました。
コロナ禍においても流行予測などにもAIという言葉が使われ、この言葉を聞かない日がないくらいです。
この記事ではAI等にも使われるデータ分析技術である機械学習(Machine Learning: ML)とメンタルヘルスに関するレビューをもとに、精神疾患のある人への支援にどう活用されていくのかを紹介したいともいます。

※前提として、この記事の執筆者はMLについてほとんど知りません。
「あ~教師ありとなしとかですね」や「あ~Googleの猫だっけ?」とかそんな感じです。

機械学習とは

詳しくは成書を当たってもらうとして、簡単に言うと、「機械学習とは、コンピューターがデータから反復的に学習し、そこに潜むパターンを見つけ出すこと。そして学習した結果を新たなデータにあてはめることで、パターンにしたがって将来を予測することができる」ものです。

今回の論文
前置きはこのくらいにして、ここで扱う論文は、
Machine learning in mental health: A systematic scoping review of methods and applications
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30744717/
です。
この論文は、タイトルから分かる通り、スコーピングレビューであり、メタ分析などはせず、ML技術を使用する際の現状の課題を明らかにすることが目的です。

このレビューから分かったこと
メンタルヘルス領域においてMLが使用されている領域は以下の4つが中心です
1)検知・診断
2)予後・治療・支援
3)公衆衛生への応用
4)研究・臨床管理

ここでは特に2の治療や支援でどんな研究があるのか紹介したいと思います。
治療や支援でのMLの活用には、
●モバイルデータやセンサーデータを利用して,メンタルヘルス状態を示す 
 行動の変化を検出
●パーソナル化されたタイムリーな治療や介入の提供
があります。
タイムリーな介入では、うつ病やギャンブル依存、アルコール依存を対象にした研究があり、
例えば、うつ病を対象にした研究では、携帯アプリが感情データを収集、うつ病を引き起こす外的要因を分析し、パーソナライズされた推奨支援を提案、行動を促すシステムが開発され、一定の有効性を示されています。
https://link.springer.com/article/10.1007/s11036-017-0929-3

うつ病や統合失調症をはじめ多くの精神疾患の症状は「ストレス」に影響を受けることが示されていますが、
どんなストレスが、どんな時のストレスが、どんな風に影響を与えるかは、
個々人で違い、また同じ人でも、その時々で違うとい感覚が
経験的にあります。
こういったデータを収集、分析し、要因に対する解決策の提案は非常に困難です。
それをウェアラブル端末やディバイスを用いてタイムリーにできることは機械学習技術を用いたテクノロジーの強みであると思いました。

紹介したレビューでは
「Netflixは、推薦アルゴリズムを使用して、ユーザーの体験を調整し、パーソナライズしており、これがパーソナライズされたメンタルヘルスの評価と介入に応用できるのではないか」
と述べられています。
この分野の研究は始まったばかりであり、わかっていること、できることも限定的と言われていますが、
今後、この分野の研究が進み、精神的苦痛を持つ人がより良く生活できる技術が開発されることを期待してしまう論文でした。

文責:的場

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