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手と目でまもる「看護」の影響を調査?
看護師ならば誰しも、若かりし頃に「看護とは、その字の通りに、患者さんを手と目で護ること」と講義室で学んだ記憶があると思います・・。私は修士課程の時にも、基礎看護学の授業で、その意味についてディスカッションした記憶があります。
看護の「看」という字は、複数の字を組み合わせてその意味を表現する会意文字に分類され、「手」と「目」の組み合わせで成り立っています。そのような人の手と目(視線)が、実際に人に与える影響について調査した文献をマッピングしたスコーピングレビューを紹介します。
JBI Evidence Synthesis
https://journals.lww.com/jbisrir/fulltext/2019/02000/neurophysiology_of_human_touch_and_eye_gaze_in.8.aspx
DOI: 10.11124/JBISRIR-2017-003549
Neurophysiology of human touch and eye gaze in therapeutic relationships and healing: a scoping review
治療的な関係性と癒しにおける人のタッチングと視線の神経生理学:スコーピングレビュー
このスコーピングレビューは、64の文献が分析対象となっており、日本の調査も6件含まれていました。
まず、タッチングといった身体的接触や、アイコンタクトなど視線の相互作用の神経生理学的効果として、何をアウトカムとしたかというと、最も多かったのがコルチゾール(唾液中、血清中、尿中)の変化でした。
※コルチゾールは心理的・身体的な健康状態を捉える上で重要なホルモンです。
血清中コルチゾールと唾液中コルチゾールと相関が高く、唾液中コルチゾールは酵素による分解からも安定的で、非侵襲的に採取できるという利点があるようです。
私は、唾液中コルチゾールを用いた調査をした経験がありませんが、調べてみると、世の中には、唾液中コルチゾールの定量・測定キットというものが存在しており、比較的簡便に調査できる測定項目のようです。
また、本レビューで指摘されていたのが、多くの研究が制御された環境で実施され、実際の看護現場の複雑な相互作用を反映していない点です。この研究テーマには、実験的な設定ではなく、実臨床に近いプラグマティックな設定での調査で、より興味深い結果が得られるのではないかと思います。
結論としては、この文献は、スコーピングレビューのため、掲載されたそれぞれの調査の批判的な吟味はされておらず、介入の有効性には言及されていません。
【有益な影響】
タッチングは、コルチゾールやオキシトシンの分泌に影響し、免疫系や患者の癒しに役立つ可能性がある。
視線は、社会的つながりや共感を促進し、治療的関係に影響する可能性がある。
しかし、上記のように、多くの研究において、手や目(視線)がもたらす有益な影響について十分な傾向の一貫性があるとしていました。要するに、講義室で学んだように、我々看護師の手と目による看護には、人に有益な影響があるだろうということですね。
2025年のはじまりに、タッチングや視線といった基本的な看護・ケアの価値を再認識しました。そして、この文献を読むと、システマティックレビューとスコーピングレビューの大きな違いを理解できるとも思います。
ぜひ、ご一読ください。
(文責:樋上)