はい喜んで

居酒屋などで、注文などをすると「はい、喜んで」と店員が答える店がある。これは、どうなんだろうか。当然だが、店員の顔をみると、明らかに本当に喜んでいるわけではなさそうだ。どんな気持ちで「はい、喜んで」などと言っているのだろう。
店員は、もっと素直な気持ちを出してみてはどうだろう。

「すみません、注文なんですが」
「はい」
「えっと、川海老の唐揚げ、一つお願いします」
「はい、幼少期のトラウマに苛まれながら」
「えっ」
思わず本音を漏らした店員。店員のトラウマと共に川海老が運ばれてくる。店員によっては、悲しみと共に枝豆が運ばれてきたり、人に言えない過去と共に冷奴が運ばれてきたり。いつもより複雑な味がするのは気のせいではない。

「すみません、注文なんですが」
「はい」
「チーズ揚げ一つお願いします」
「ほっ、本当に注文していただけるんですね」
「はあ、お願いします」
「ああ、はい、いえ、喜んで……」
涙を流す店員。
「すみません。この喜びを母に手紙で伝えていいですか」
そこまで喜ばなくていい。早くチーズ揚げ持って来い。

「すみません、注文なんですが」
「はい」
「えっと、前から好きだったんです。付き合ってください」
「はい、喜ん……で」
思わぬ告白に頬を赤らめる女性店員。素敵な誤算に乙女心もときめく。

色々な感情で注文を受ける店員。こちらも負けずに色々な感情を込めて注文したい。

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