バイキング王に俺はなる
「バイキング形式の食事」。この呼び方は完全に名前負けだと思う。
「バイキング」とは、8-11世紀にかけて略奪を繰り返し、ヨーロッパを震撼させた海賊達のことだ。斧を持って村人達の首を片っ端から刈っていくイメージの海賊だ。
一方、「バイキング形式の食事」は、各種の食べ物が盛られて並べられている皿から客が自由に取り分ける形式の食事で、パーティーなどでよく見られる形式の食事だ。和やかな雰囲気で、思い思いに好きな食べ物を「オホホ」と笑顔で皿に盛るイメージだ。
「バイキング」と「バイキング形式の食事」のこのイメージの違いは何だ。「バイキング形式」の食事は、「バイキング」の名に相応しくないのではないだろうか。食事は手掴みで取りら皿は使わずにそのまま口へ運ぶ。手にしたジョッキからこぼしながらラム酒を飲み「ガハハ」と豪快に笑う。それくらいの勢いがあって初めてバイキング形式の食事とよべるのではないだろうか。
そんな疑問を孕んだバイキング形式の食事だが、「○○形式の食事」には、バイキング形式の他にも様々な形式があることは知られていない。
「ステーキをご注文のお客様、裏に牛が居りますので、お好みの肉を切り取ってお持ち下さい」
「えっ」
「ご心配されなくても、対牛用の武器は当店でご用意させていただきましたので、得意な武器をご使用下さい。それから、そちらの鴨南蛮そばをご注文のお客様、当店の前に湖がございますので、そちらで鴨を撃ってください.」
ハンティング形式の食事だ。いつでも新鮮な食材から料理を提供。食材を狩るのにいかに苦労したか、そんな新鮮で採れたての話も食事と一緒にテーブルに上る。新鮮な食事と新鮮な話題の提供、それがハンティング形式の食事だ。
ところで、熊鍋を注文した田中さんがいつまで経っても帰ってこないのだが、どうしたのだろう。
「すみません、お客様。ここで着ているお洋服をお脱ぎください」
「えっ」
「当店は、全裸で食事をして頂いております」
裸族形式の食事だ。ウエイター、シェフ、客、全員全裸。隠している物は何もない。客と店員、客と客、みんなが隠す事なく、本音でぶつかり合うための演出、それが裸族形式。しかし、店の隅でウエイター同士どっちが大きいとか小さいとか、そんな事でぶつかり合うのは厳禁だ。
「お待たせいたしました。カルボナーラをご注文のお客様、こちらがもつ煮込みでございます」
「えっ」
「それからピッツァマルゲリータをご注文のお客様、シェフがお客様のことを気に入ったとのことで、梅干しのお粥、半ライス、特製おじやのご飯三種盛でございます。良かったですね。あ、サーモンとキノコのリゾットをご注文のお客様、シェフが作りたくないとのことで、料理はありません。しかし、それではあまりにも可哀想ですので、お客様には、私が個人的にレゴブロックを差し上げます」
シェフの気まぐれ形式の食事だ。客の注文は気にしないシェフが、気の向くままに作る。客よりもシェフのことを一番に考えた、シェフにとことん優しい形式。それがシェフの気まぐれ形式だ。
普通のレストランでも見かける「シェフの気まぐれサラダ」などのメニュー、レゴブロックが出てくるかもしれない。
会社で勤務時間中にこんなくだらない文章を書いている自分。仕事以外のことを一番に考え、文章を書く。気まぐれ形式の仕事だ。
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