ゼリー寿司

回転寿司ではゼリーが載せられた皿が、コンベアで回っていることがある。誰がどんな気持ちで、ゼリーを皿に載せ、コンベアで送り出すのだろう。基本はアルバイトなのかもしれないが、中には寿司職人などもいるのではないだろうか。本当は寿司を握って載せたいのに、ゼリーを載せる。きっと、複雑な気持ちで載せられたゼリーなのだろう。

寿司職人を志して東北の寒村から東京に出てきた青年。村に残した年老いた父と母。いつかは父と母に自分の握った寿司を食べさせたいと思う青年が載せるゼリー。

新人寿司職人コンクールで準優勝した腕を持つ寿司職人が、「何で俺がゼリー係なの?」と納得できない気持ちを抱えて載せるゼリー。

長い間、寿司一筋に懸けてきたが、不況の煽りを受けてリストラ寸前。寿司を握らせてもらえず、たまにゼリーを載せることだけが仕事の年配の寿司職人。そんな彼が家族を思って乗せるゼリー。

もう何年も寿司を握っておらず、ゼリーを乗せるだけの仕事。もう寿司職人を廃業してゼリー職人へ転向しようかと悩みながら乗せるゼリー。

複雑な思いとゼリーが載せられた皿が、今日も何処かの回転寿司屋で回っている。

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