あだ名刑事
刑事ドラマなどでは、刑事達はお互いをあだ名で呼び合っていたりする。本当に刑事達はお互いをあだ名で呼び合っているのだろうか。
例えば、このようにだ。
「今日から赴任してきた新人の二階堂三郎君だ。早速で悪いが、君のあだ名はジーンズを穿いているから『ジーパン』だ」
「あっ部長、『ジーパン』はもういます」
「そうか。じゃあジーパンつながりで『ケミカルウォッシュ』だ」
憐れ、二階堂三郎君は穿いてもいないのに、ケミカルウォッシュと呼ばれるのだった。でも、まだ良かったのかもしれない。
「今日から君は『ブイチューバー鯖子ちゃん』だ」
「今日から君は『象の落し物』だ」
「今日から君は『10代しゃべり場』だ」
「今日から君は『お達者倶楽部』だ」
「今日から君は『一人ジャクソン5』だ」
などと言われたら、二階堂君は立ち直れない。
きっと、捜査会議でもあだ名で呼ぶことになっているだろう。
「『警視総監御子息誘拐事件』解決のために君達に集まってもらった。今日から動員された人も多いから、改めて今までの進展を簡単に報告してもらう。じゃあ、まずは、誘拐現場周辺の地理に関して。ストーカー、報告してくれ」
ストーカーっていうあだ名もどうかしている。
「えー、周辺は住宅地となっておりまして、……」
ストーカーの恐ろしく詳細な報告が続く。
「最後になりますが、私は警視総監宅の向かいに住む女子高生を以前からよく観察しておりますので、この辺の地理はお任せ下さい」
誘拐犯の前にストーカーを逮捕しろ。
「ご苦労。次は、マカロニ、聞き込み結果を報告してくれ」
「えーと、ですね。警視総監宅の隣に住む主婦の話では……」
マカロニの足を使った捜査の成果が報告される。
「あっ、最後に御子息はマカロニグラタンが好物らしいです。向かいの女子高生もマカロニグラタンが好物との事です」
そんな報告いらない。それから、ストーカーは女子高生の情報をメモするのを止めなさい。
「それでは、メールで寄せられた情報の報告を。エロサイト、頼む」
「捜査本部のメールには、エロサイト宣伝スパムが多く寄せられるのですが、中には目撃情報のメールが……」
電脳刑事、エロサイトの理路整然とした報告が皆を驚かせる。
「メールは、スパムも含めて全部読みました。サイトにもアクセスして隅から隅まで調べましたよ。えへへ」
何が「えへへ」だ。
「よし、証拠品についての報告。超魔術」
超魔術は、ズボンのポケットから大きなバールの様な物を取り出す。
「このバールの様な物で、ですねえ。警視総監宅のドアを……」
そのバールの様な物、どうやってポケットに入れたのだ。
「えー、種も仕掛けもありません。ハンドパワーです」
「じゃあ、最後にワオキツネザル、何かあれば補足してくれ」
「わお!」
あだ名で呼び合う捜査会議、怪しい事になっている。参加者も怪しい。警視総監の子供を攫ったのは、多分この中の誰かだ。比較的普通のマカロニが、逆に怪しい気がする。