鮭の訴状

裁判関連のニュースを見ると「訴状を読んでいないからコメントできない」、「判決文をよんでいないからコメントできない」などと書かれていることがある。それでは、訴状や判決文はいつ読むのだろうか。それとも読まないで引き出しの奥に大切にしまっておくものなのか。

休み時間に呼び出された川北君が校舎の裏に行ってみると、クラスで一番かわいいとの評判の若林さんが立っていた。
「これ……。後で読んでね。……学校で皆に見つかると冷やかされそうだから」
俯きつつ差し出したのは、判決文だ。それを影で舌打ちしながら見ていたのは、若林さんに恋心を抱く丸和君。クラスに戻ってきた川北君に詰め寄る丸和君。慌てる川北君が語る。
「判決文を読んでいないからコメントできない」

近海で捕れたピチピチの訴状を開き、塩を塗って1週間天日で干す。その後、秘伝のくさい汁に漬けて、さらに1年天日に干して乾燥させる。これで味、香り共に最高の訴状ができあがる。
しかし、近年は地球温暖化のため、訴状漁獲高が落ちてきたことが深刻な問題だ。漁師は訴状について語る。
「訴状を読んでいないからコメントできない」

畑で早朝に収穫した朝採りの判決文に昆布を巻いて、味噌を混ぜた糠床に30年寝かせるとできあがる判決文の古漬け。石川県のある村に伝わる郷土料理だ。村で一番の名人との呼び声が高いおばあちゃんは、古漬けのコツをこう語る。
「判決文を読んでいないからコメントできない」

東京で開催された「訴状2020」。
100m訴状、借り物訴状、パン食い訴状、訴状入れ、見所は盛り沢山だった。しかし、コロナの影響で盛り上がりはイマイチ。関係者達は悲鳴を上げる。
「訴状を読んでいないからコメントできない」

ニュースの裏で起こっている知られざる出来事。ニュースの裏の引き出しにしまってある訴状を読めば、時代が見える。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?