シールの魅力

スーパーなどで閉店時間が近付くと「2割引」や「50円引き」と書かれてたシールが、刺身や弁当に貼られる。個人的にはこのシールを「おつとめシール」と呼んでいる。おつとめシールが貼られた弁当には積極的に手が伸びるし、おつとめシールが貼られた刺身は食べたくなくても買った方がいいかと思ってしまう。
おつとめシールは、商品の値段を下げるだけでなく、不思議な魅力を持っているんだと思う。おつとめシールの魅力、スーパーだけにその力を止めておくのは勿体無いのではなかろうか。

自分なんかには吊り合わないだろう、高嶺の花だろうと諦めていた美人秘書の若林さん。今日は額に「2割引」のおつとめシール。どうやらチャンスが巡ってきたようだ。後で食事に誘ってみよう。

年老いたおじいちゃんの命の灯が消えようとしている。100歳の大往生だ。
「わしは、充分生きた。心残りはない」
「おじいちゃん、駄目よ。まだ死んじゃ」
パートでスーパーに勤める40歳の孫娘が取り出したのは、おつとめシールだ。おじいちゃんの額に貼った「8割引」。枯れたおじいちゃんが、8割引の年齢で蘇る。
「ボールは友達。さあ、行くよ」
サッカーボールを抱えて飛び出していったおじいちゃん。2回目の20歳だ。

学校の帰りにいつも吠え掛かってくる近所の犬。何だかいつもより激しい吠えている。噛みつかれたら、肉ごと持っていかれるのではないのかという勢い。犬の額に張られていたのは「2割増」。狂犬2割増、誰が貼ったのだろう。

自称ぽっちゃり系のOLの丸和さん。それはぽっちゃりの範囲外だろうというぽっちゃり具合。しかし、今日はいつになくスレンダーボディーだ。誇らしげに覗かせている腹に貼られたシールは「3%引き」。
明らかに嘘だ。見えない所に貼られたおつとめシールは「4割引き」、3%引きで見栄をはる。

様々な能力を持つおつとめシール。買いたくもない刺身を買ってしまうのも無理はない。

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