フサリズム

最近は見なくなったような気がするが、お洒落なフサフサがフードに付いたコートやジャンパーがある。着ている人がフードを被ることはなさそうなので,フードの存在自体も疑問だが,一番の疑問はフサフサだ。あれは何に使うのだろう。

道の片隅で雨に打たれて震えている子犬。そんな子犬を優しく包むのはフードのフサフサだ。お洒落なお兄さんはコートを脱いでフードのフサフサで子犬を包む。子犬の頼り切った眼差しがお兄さんを包む。そして、お兄さんと子犬が醸し出す優しい空気が道行く人々を包み込む。
お洒落で優しい。かつフサフサ。完璧なお兄さんだ。

スープにちょっと塩味が足りない。そんなときはフードのフサフサを千切ってパラリとスープに散らす。足りない塩味を補い、素材の味と素敵はハーモニーを奏でるフサフサ。ほんのり漂う磯の香りが嬉しい。

鬼達を退治した桃太郎。鬼達が村から奪った宝物を納めた蔵の扉を開けると、中に入っていたのはフードのフサフサだけ。
鬼達はフサフサを集めて何がしたかったのか。今でも謎だ。

動物園で檻から虎が逃げ出した。逃げ惑う客。襲い掛かる虎。動物園は阿鼻叫喚の巷と化す。暴れる虎を止めたのは、いつもは冴えない飼育係だ。
「フサフサチョップ」
冴えない飼育係のフサフサチョップが虎に炸裂。虎は大人しく檻に戻って行った。

仕事で嫌な事があった。一人、電気を消した部屋でフードのフサフサを触ってみた。何だか少し元気が出た気がした。

いろいろな用途があるフードのフサフサ。実は乾燥させたもずくから作られていることは内緒だ。

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