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蕁麻疹と過ごした数年間は大変だったけど無駄ではなかった話(3)

合同会社JC1の小林柚香里です。前回の続きです。
 
上の数字は、私が支払った医療費です。もちろん健康保険を使ったので、実際にかかった金額はこの3倍以上、300万円以上です。何の前触れもなく突如発症する蕁麻疹。それと付き合った3年間の間に、これだけの医療費がかかったのです。

蕁麻疹専門医のいる病院へ


最初は近所の病院の皮膚科で出された抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤が効いていたのですが、そのうち蕁麻疹が出る頻度も上がり、治るまでに時間がかかるようになってきたので、主治医の紹介で、蕁麻疹専門外来がある大学病院に通うことになりました。
 
蕁麻疹専門の先生の最初の診察で、「私の患者さんは、全員1年以内、長い人でも1年半でステロイドは離脱できているから、安心して!」と言われて、とっても心強かったことを覚えています。
 
慢性化する蕁麻疹は、ほとんどのケースが原因不明だと告げられました。原因がわからない以上、対症療法以外に手立てはなく、症状が悪化するにつれて次々と薬が増えていきます。
 
抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤にステロイド内服薬やビタミン剤が追加され、さらにその副作用を抑えるための胃薬、肝臓の薬、コレステロールを下げる薬も増えていき、毎日数種類の薬を1日3回服用していました。
 
病院で薬をもらう日は、普通のバッグには入らない量なので大荷物になります。それを見た人から「薬屋さんみたい」と言われたこともありました。
 
40歳になる頃には、仕事の方も順調に忙しさを増し、1日20〜25個ある会議の合間にお弁当を10分で掻き込む、というような日々が続いていました。私自身は、特にストレスは感じていなくて、忙しいけれど責任ある仕事を楽しんでいたという面もあったのですが、父を亡くした日を境に、全身に「島」のようなボコボコした蕁麻疹が出るようになり、私の蕁麻疹は慢性化していったのです。

慢性蕁麻疹とステロイド点滴


慢性化とは、薬がないと蕁麻疹が止まらない状態です。私のケースではステロイド以外の薬では抑えられなくなっていました。
 
副腎皮質ホルモンであるステロイドには様々な副作用があり、感染症の合併、消化性潰瘍、糖尿病、高脂血症、高血圧、骨粗鬆症、肥満、多毛、座瘡、不眠、精神症状など、どれも聞くと怖くなるものばかりです。それ以外にも、横紋筋融解症という、筋肉が分解されて腎臓障害につながるような副作用がある薬も含まれていました。
 
ホルモンを長期に渡って体外から補給すると副腎がサボるようになってしまい、からだがホルモンを作らなくなります。そうすると不要になった副腎が萎縮して機能不全になることもあるし、急に体外からのホルモン補給をやめると重度の反発反応が出て、命に関わることもあるそうです。
 
だから、毎週の診察前には必ず尿検査をし、血液検査のために採血されます。(大量の薬を排出するために頑張っている)腎臓や肝臓に悪影響が出ていないか確認するためだと言われました。血液検査の結果が出るまで1時間ほど待ってから診察です。その後点滴ベッドに移動し、再度針を刺されて点滴を受けます。
 
注射は苦手ではない方ですが、毎週最低2回は針を刺されるわけですから、採決時や点滴時の血管確保が上手な看護師さんは天使です。一度、点滴の時に不慣れな方が担当になってしまいました。両肘の内側で失敗し、さらに左手首で失敗し、最後に天使が現れてやっと右手首で血管確保に成功した時には、ハレルヤ!と叫びたかった!
 
点滴以外にも毎日ステロイド錠剤を内服するのですが、これを減薬する時は数週間に数mgずつ、長い時間をかけて減らしていきます。でも、何かをきっかけにブワッと勢いを増した蕁麻疹が出てしまいます。これを「再燃」と呼びます。
 
そうなると、まずステロイドを点滴して押さえ込む。そして、内服する量も増やして、落ち着いてきたらまた少しずつ減薬。減薬のスピードが早すぎると再燃するので、できるだけ再燃しないように、慎重にステロイド減薬を進めるのですが、私の蕁麻疹は何度も再燃を繰り返して、一向に完治する様子を見せなかったのです。
 
主治医からは「蕁麻疹が口の周りに出たら、気管が閉じてしまう可能性があるので、すぐ救急病院で点滴を受けてください」と言われていました。つまり、窒息死の危険がありますよ、ということです。
 
さすがに窒息死は困るので、多い時には週に2〜3回、ステロイドの点滴を受けにいきました。大抵は深夜でしたが、日中に会社を抜けて行くこともありました。
 
もしも救急病院にポイントカードがあれば、盲腸の手術無料チケットに交換できるくらいポイントが溜まっていたことでしょう。
 
(次回へ続く)