LIGA.i開催にあたって
前文
この10年間で、日本のパラスポーツ界の環境は大きく変化しました。
2013年に東京パラリンピックの開催が決定して以降、日本国内ではパラスポーツの注目度は高まっていきました。パラスポーツの大会やイベントが盛んに開かれ、メディアや広告でもパラアスリートを目にした方が多かったはずです。
東京2020パラリンピックは、新型コロナウイルス感染拡大による1年の延期を経て、2021年に無観客で開催されました。
多くの人がパラスポーツに関わったこの10年間、パラスポーツは社会にどんな変化を起こすことができたのでしょうか。そして、東京2020パラリンピックが社会に残したものはあるのでしょうか。
「パラスポーツの魅力を感じられた」
「パラスポーツの選手の凄さを感じられた」
「多くの人がパラスポーツの大会を観に来るようになった」
そんな声があがる一方で、このような声を聞くことも少なくありません。
「ブラインドサッカーはパラスポーツだから、サッカーには敵わない」
「私はプロのアスリートではないから」
「パラスポーツの大会で、このくらいお客さんが来てくれれば上出来」
パラスポーツの限界。
プレーする選手たちやクラブチームも、大会運営をする競技団体も、そして社会も、無意識に現状に満足してしまっているのではないでしょうか。私たちは、パラスポーツが持つ無限の可能性に蓋をしてしまっているのではないでしょうか。
JBFAが目指す「視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会」を実現するためには、選手・クラブチーム・競技団体・ファンそれぞれが、無意識に決めてしまっている「パラスポーツの限界」を超えていかなければなりません。
日本のブラインドサッカーが新たなステージへ挑戦するときが来ました。
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選手たちへ
アスリートとして、大きな注目を浴びる舞台でレベルの高い試合に挑むこと
ブラインドサッカー男子日本代表の選手たちは、この10年間で目覚ましい進化を遂げてきました。自国開催のパラリンピックでメダルを獲得するという大きな目標を設定し、パートナー企業、ブラサカ関係者、そしてなによりブラサカファンの皆さまから、たくさんの応援をいただきました。
注目が高まり周囲からの期待が大きくなるぶん、必然的に日の丸を背負う選手たちには大きなプレッシャーがかかります。毎日のトレーニング、食事の管理、長期合宿や海外遠征など・・・・・・。プライベートも犠牲にしながら、ほとんどの時間をブラインドサッカーに費やすなかで、彼らは自分自身と向き合って進化をしました。
ポジティブなプレッシャーがかかる環境に身を置いて、高い競技レベルに挑戦することは、アスリートの自己変革につながります。
そんな自己変革の機会を、日本代表選手たちのようなトップアスリートだけでなく、国内クラブチームでプレーするブラサカ選手たちにもつくること。つまり、大きな注目を浴びるなかでレベルの高い試合ができる舞台を用意し、そこでプレーする選手が増えること。それこそが、日本ブラサカ全体の底上げにつながるはずです。
クラブチームへ
ブラインドサッカーの持続的な発展にむけた、地域のクラブチームの組織力強化
現在ブラインドサッカーの国内クラブチーム数は、31チーム。
ブラサカ競技者の受け皿は地域のクラブチームです。クラブチームは、地域で過ごす視覚障がい者にとって大切なコミュニティになり、また視覚障がい者と健常者がチームメイトとして同じ目標に向かって混ざり合う場にもなります。
さらに、地域のクラブチームは競技普及の基盤でもあります。地域での体験会や盲学校との連携など、草の根レベルでの普及活動をそれぞれの地域で行っています。
そんなクラブチームの組織としての成長が、ブラインドサッカーの持続的な発展につながります。定期的なチーム練習の開催、練習環境の充実、サポートスタッフの人数、運営体制の安定性など。クラブチームとJBFA、さらには地域のステークホルダーも加えて、クラブチームの組織力をアップしていけるように努めていきます。
JBFAへ
国内大会でも、会場の一体感をつくりあげる
写真は、ワールドグランプリ2019 日本vsスペインの一戦。
青空のもと全席有料チケット販売をしたスタンドが満員に。日本のゴールに会場が一体となった空間は、日本ブラサカにとって特別なものとなりました。
しかし、国際大会を毎年日本で開催することはできません。ブラインドサッカーを”スポーツとして”根付かせるためには、国内大会でもワールドグランプリ並みの盛り上がりをつくっていかなければなりません。
国内大会で有料チケット販売を行って、会場演出にもこだわり、あの空間を継続的に再現すること。それは、JBFAの一つの夢であり目標です。
社会へ
サッカーのようにブラインドサッカーを楽しめるように
これまで「ブラインドサッカーを観に行く」という行為はどういうものだったでしょうか。
やはりそれは「Jリーグの試合を観に行く」こととは、良くも悪くも異なるものだったはずです。
サッカーについてそうするように、ブラインドサッカーについて仲間と語り合ったり、試合会場で非日常感を味わったり、特定のクラブチームや選手を応援したりする。
ブラインドサッカーでもそんな楽しみ方もできるように、JBFAは情報発信や会場演出に力を入れていきます。
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ブラサカ初のトップリーグ・LIGA.i(リーガアイ)の設立
近年のブラインドサッカーの盛り上がりにより、2003年には4チームだった国内のクラブチームは31チームに増え、チーム・選手たちの価値観も多様化しています。
競技志向のチームもあれば、エンジョイ志向のチームもある。
積極的に広報活動をしたいチームもあれば、誰もが安心して参加できるような環境づくりを重視したいチームもある。
全国的な大会に参加したいチームもあれば、地域での活動を最優先とするチームもある。
それらの多様化したニーズに応えるために、2022年にJBFAは国内大会のフォーマットを再編します。
そこで新設するのが「LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ」です。
今年この大会に出場するのは、競技力(過去大会の戦績)・組織力(練習の開催頻度やメンバーの人数)などの出場条件を満たした4チーム(埼玉T.Wings、free bird mejirodai、パペレシアル品川、buen cambio yokohama)です。
競技レベルの高い4チームによる戦いは、どの試合も激戦となること間違いありません。試合は国際競技規則に遵守した形式で行い、ブラサカ日本代表の強化にも資する大会となります。
さらに、LIGA.iでは興行性を重視していきます。有料チケット販売をすると同時に、これまでのパラスポーツにはなかった会場演出で非日常な空間をつくりだします。
満員のスタンド。ピッチで繰り広げられる国内最高峰のプレー。選手たちに思い切りスポットライトを当てながら、会場にいる全員でつくりあげる一体感。ブラインドサッカーを、視覚障がい者と健常者が混ざり合う、最高のエンタメにしていきます。
選手たちが誇りを持ってプレーできるトップリーグに。
子どもたちが憧れるトップリーグに。
ファンが思いっきり楽しめるトップリーグに。
日本のパラスポーツ全体を引き上げるトップリーグに。
「LIGA.i」で新しいブラサカシーンをつくる。
一人ひとりが、LIGA.iで変わる。パラスポーツの限界を、一人ひとりの「i」が超えていく。
「LIGA.i」でブラインドサッカーにしかできない社会変化を起こす。
視覚障がい者と健常者が“当たり前に”混ざり合う社会へ向けて、LIGA.iは、ブラインドサッカーと社会の距離をぐっと近づけていく。
一つ先の、新リーグはじまる。
▼大会情報はこちら▼
◎大会日程
①LIGA.i2022 第1節
7月18日(月・祝)浜松アリーナ(静岡県浜松市)
②Shinagawa LIGA.i2022 第2節
7月24日(日)品川区立総合体育館(東京都品川区)
③KPMG LIGA.i2022 第3節
9月23日(金・祝)フクシ・エンタープライズ墨田フィールド(東京都墨田区)