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ロービジョンフットサルとは? 見えにくさが生む究極のチームスポーツ

「なんだ。普通のフットサルか・・・・・・」
いいえ、それは・・・・・・
いろんな「見えにくさ」が重なり合う、究極のチームスポーツ。”ロービジョンフットサル”

皆さんの周りに、目が「見えにくい」人はいますか?

日本眼科医会の調査(2007年)によると、日本における視覚障がい者(約164万人)の中で、全盲の人は1〜2割(18.3万人)に過ぎず、ほとんど(144.9万人)が弱視者であると推定されています。また、近年は、高齢化やスマートフォンの普及などにより、視力や視野に支障をきたす人が増加傾向にあり、弱視ではなくても、「見えにくくなってきた」という人はいるかもしれません。つまり、「見えにくい」という状態は、実は身近な存在と言えるでしょう。

今回は、そんな弱視者が「見えにくい」状態のままプレーする、もう一つの視覚障がい者サッカー”ロービジョンフットサル”を紹介します。

 ロービジョンフットサルは、フットサルをもとにしたスポーツである点はブラインドサッカーと同様ですが、アイマスクは装着せず、音の出ないボールを用います。一見すると、少し下手なフットサル。しかし、知れば知るほど奥が深い、究極のチームスポーツなのです!

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そもそも弱視とは?

ロービジョンフットサルは、主にB2・B3の選手たちがプレーします。

【視力の3カテゴリー】
・B1:全盲から光覚(光を感じられる)まで
→ブラインドサッカー国際ルール 
・B2:矯正後の診断で、視力0.03まで、ないし、視野5度まで
→ロービジョンフットサル
・B3:矯正後の診断で、視力0.1まで、ないし、視野20度まで
→ロービジョンフットサル
※国内のルールではB2,B3の方もブラインドサッカーをプレーできます。

一般的に「目が悪い」というと視力が低い状態を想像するかもしれませんが、弱視者の「見えにくさ」は少し異なります。B2・B3の選手たちはどんな見え方をしているのでしょうか? 下の画像をご覧ください。

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ぼやけ、欠け、にごりなどさまざまな症状があり、さらに、これらの症状が掛け合わされて、さまざまな見えにくさが存在します。B2・B3の選手たちは、このような見え方のなかでプレーしているのです。

“個性が重なり合う”ロービジョンフットサル

弱視の選手たちの見えにくさが、プレーにどう影響するかをもう少し詳しくみていきましょう。

ロービジョンフットサルの選手たちは、それぞれ異なる「見えにくさ」を抱えています。そしてそれぞれの「見えにくさ」は、個人の得意なプレーと苦手なプレーにつながります。

①ぼやけて見える選手の特徴

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+相手の位置/味方の位置がわかる
+マークを見失いづらい
ー遠くから来るボールに反応しづらい

②中心だけが見える選手の特徴

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+遠くから来るボールにも反応できる
+相手ボールなのか、味方ボールなのかが把握しやすい
ーマークを見失いやすい
ー視野の外の状態がわからない

③だぶって見える選手の特徴

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+マークを見失いづらい
ー逆サイドの状況を把握しづらい
ー敵・味方の判別が難しい

④視野が欠けている選手の特徴

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+遠くから来るボールにも反応できる
+相手ボールなのか、味方ボールなのかが把握しやすい
ー視野の外の状態がわからない

ここで重要となるのは、一人ひとりの「見えにくさ」がちがうということです。

自分の得意を活かして、チームメイトの不得意をカバーする。
自分の不得意を、チームメイトの得意にカバーしてもらう。

個人がそれぞれ異なる「見えにくさ」を抱えながらも、チームで声を掛け合い、互いの「見えにくさ」をカバーし合いながら勝利を目指す。ロービジョンフットサルは、まさに「個性が重なり合う」スポーツなのです。

ロービジョンフットサルの持つ価値

ロービジョンフットサルはブラインドサッカーと同様に、混ざり合う社会の実現につながる大きな力を持っているスポーツです。

障がい当事者にとって、ロービジョンフットサルのような競技は、人生を豊かにする一助となります。弱視でも、持てる視力・視野を最大限生かして自分らしくスポーツを楽しむことができる。同じ境遇の仲間がいる。そんな希望を与えてくれます。

30代で目の病気が発覚し、弱視となった辻選手のインタビューはこちら
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また、ロービジョンフットサルは、パラリンピックの競技種目でもあるブラインドサッカーのような派手さはありませんが、障がいの有無にかかわらず全ての人に、気づきを与えてくれる競技でもあります。

身体や精神に障がいがない人にも、「○○が苦手」や「○○しにくい」ということはあります。そんな中でも、仕事や学校で、異なる個性を持った同僚と力を合わせて成果をあげることが求められる場面もあるでしょう。個人の「見えにくさ」をチームで乗り越えていくロービジョンフットサルの考え方が、私たちの日常生活やコミュニティでの他者との関わりに役立つはずです。

ロービジョンフットサルを通じて、個性を重ね合わせて共に生きることの素晴らしさを、社会全体に発信していけるはずです。

ロービジョンフットサルを盛り上げるために

そんなロービジョンフットサルですが、チーム数や競技人口が少なく、競技の認知度も高くないのが現状です。今年7月に開催した「第15回ロービジョンフットサル日本選手権」の参加チームは3チームのみ。思うように活動ができないチームや競技者が少なくありません。

ロービジョンフットサルの現状を変えていくためには、まずはたくさんの人に、この競技の魅力を“知ってもらうこと”が大切です。

なにも知らずに初めてロービジョンフットサルを見た人からは、「普通のフットサルと同じだね・・・・・・」といった声が聞かれることがあります。しかし、この競技を深く知るほど、「見えにくさ」への考え方が180度変化するでしょう。

ロービジョンフットサルの価値を広めていくためには、皆さんの力が不可欠です。
・SNSでの情報の拡散する。
・知人・友人にロービジョンフットサルについて話してみる。
・イベントに参加してロービジョンフットサルを体験してみる。
ブラサカみらいパートナーとしてJBFAの活動をサポートする。

どんな方法でも、 一緒にロービジョンフットサルを盛り上げていただけますと幸いです!

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編集後記

最後までお読みいただき、ありがとうございます。ブラサカマガジン担当の貴戸です。ロービジョンフットサルの普及が進まない原因として、社会的に弱視への理解が不足していることも挙げられます。白杖を持った弱視者が、わずかな視力を頼りにスマートフォンを操作していると、「本当は見えてるんじゃないの?」「嘘ついてるんじゃないの?」という心無い言葉を浴びせられるという話も聞きます。これは白杖=全盲の人が持つものという誤った認識が原因となった出来事です。
また、暗いところや夜だと極端に見えにくい“夜盲症”という症状を持つ人もいます。彼らは場面によって見えにくさが変化するため、「どうしていつもは見えるのに、いまは見えないの?」と思われてしまうこともあります。
このように、「見えにくい」という障がいは外見ではわかりにくいうえ、人それぞれ症状が異なるため、なかなか理解されません。

日本における視覚障がい者のほとんどが弱視者であることを考えると、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現するためには、弱視に関する理解を深めることは不可欠です。ロービジョンフットサルは、その一助となるはずです。ぜひ、ロービジョンフットサルのみらいのために、JBFAとともに歩んでください。

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