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一、序 わがやどに 蒔きしなでしこ いつしかも 花に咲かなむ よそへても見む (わが家の庭に蒔いたなでしこは、早く花になつて咲いてほしい。恋しいあの方と思つて眺めてゐよう) 平安時代の歌人、伊勢の私家集である『伊勢集』に収められた歌です。彼女は三十六歌仙の一人、「百人一首」の、「難波潟 短き葦の…」の歌はご存知の方もをられませう。 前回、撫子の花をお話ししました。この季節に、その小さく、美しく咲く姿を見た方もをられるのではないでせうか。時は神無月、十月となりま