マガジンのカバー画像

草木と生きた日本人

20
執筆者:玉川可奈子/和歌(やまとうた)を嗜む歌人(うたびと)・作家 (画像:大宇陀 又兵衛桜)/月一連載
運営しているクリエイター

2024年10月の記事一覧

草木と生きた日本人 山菅

一、序  わがやどに 蒔きしなでしこ いつしかも 花に咲かなむ よそへても見む  (わが家の庭に蒔いたなでしこは、早く花になつて咲いてほしい。恋しいあの方と思つて眺めてゐよう)  平安時代の歌人、伊勢の私家集である『伊勢集』に収められた歌です。彼女は三十六歌仙の一人、「百人一首」の、「難波潟 短き葦の…」の歌はご存知の方もをられませう。  前回、撫子の花をお話ししました。この季節に、その小さく、美しく咲く姿を見た方もをられるのではないでせうか。時は神無月、十月となりま