マガジンのカバー画像

草木と生きた日本人

23
執筆者:玉川可奈子/和歌(やまとうた)を嗜む歌人(うたびと)・作家 (画像:大宇陀 又兵衛桜)/月一連載
運営しているクリエイター

2024年3月の記事一覧

草木と生きた日本人 桜 上

一、序  ももしきの 大宮人は 暇あれや 梅をかざして ここに集へる (『万葉集』巻十・一八八三)  (ももしきの大宮人は暇があるからでせうか、梅を髪にさしてここに集つてゐますねエ)  前回は梅の花についてお話ししました。  二月五日、東京では久しぶりに雪が降りました。雪の降る日、そして翌日の積つた雪、さらに雪と梅の花の咲く姿を見て、前に紹介しました、  我がやどの 冬木の上に 降る雪を 梅の花かと うち見つるかも (巻八・一六四五)  (私の家の冬枯れの木に降り積ちた