マガジンのカバー画像

草木と生きた日本人

20
執筆者:玉川可奈子/和歌(やまとうた)を嗜む歌人(うたびと)・作家 (画像:大宇陀 又兵衛桜)/月一連載
運営しているクリエイター

2023年11月の記事一覧

草木と生きた日本人 黄葉

一、序  磯の上に 立てるむろの木 ねもころに 何か深めて 思ひそめけむ (『万葉集』巻十一・二四八八)  (磯のほとりに立つてゐるむろの木の根のやうに、ねんごろに何故こんなにも心を深くあの人を思ひ始めたのでせう)  『万葉集』に収められた名も無き民の歌。そして、磯の上むろの木。この歌は、大伴旅人の歌、  鞆の浦の 磯のむろの木 見むごとに 相見し妹は 忘らえめやも (巻三・四四七)  (鞆の浦の磯のむろの木を見るたびに、一緒に見た妻を忘れることはないでせう) が