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一、序 磯の上に 立てるむろの木 ねもころに 何か深めて 思ひそめけむ (『万葉集』巻十一・二四八八) (磯のほとりに立つてゐるむろの木の根のやうに、ねんごろに何故こんなにも心を深くあの人を思ひ始めたのでせう) 『万葉集』に収められた名も無き民の歌。そして、磯の上むろの木。この歌は、大伴旅人の歌、 鞆の浦の 磯のむろの木 見むごとに 相見し妹は 忘らえめやも (巻三・四四七) (鞆の浦の磯のむろの木を見るたびに、一緒に見た妻を忘れることはないでせう) が