日産 衝撃の利益9割減!販売不振は本当なのか?
日産自動車(以下、日産)の第2四半期の純利益が9割越えの減益。そして通期の純利益見通しは未定―――。すでに第1四半期の時点で昨年と比べて利益を大幅に減らしていたが、連続での減収減益決算だったためか、各メディアはこぞって大きく取り上げた。悪い決算が出た理由として、世間は「そもそも売れる車が無い」、「経営陣が悪い」など好き勝手言うけれど、果たして正しいのだろうか。本当の原因は他にあるのではないだろうか?今年度の上期決算発表の内容を踏まえ、JBC報道部の独自目線で分析する。
上期純利益は94%減だが、販売台数は実はそこまで減っていない。
日産の2024年上期の純利益は192億円である。対して、昨年度上期の純利益は2,962億円であり、約94%減収ということになる。この数字だけを見ると、確かに車が売れていないのではないかという印象を受ける。では実際の所、販売台数はどの程度減ったかというと、162万台→159万台でおよそ1.6%減。確かに3万台という数字は大きいが、これが業績が傾く原因になる程減っているかと言われると少し違う。ちなみに他社と比べると、トヨタは販売台数が2.8%減っており、昨今の情勢を踏まえる健闘したと言える。再び日産の売上高を振り返る。6,063億円→5,984億円と1.1%減。100億円も減っていない。つまり車は売れている。それなのに純利益は大幅減。一体何故なのか?
純利益大幅減の要因①:米国市場の販売奨励金の増加
日産は理由の一つとして、米国市場のインセンティブ(=販売奨励金)の影響を挙げている。実はこの問題、2020年の事業構造改革計画「Nissan NEXT」においても、カルロス・ゴーン会長時代の拡大路線の弊害として挙げ、インセンティブ削減を目標として掲げていた。一度は削減が進んでいた(コロナの影響もある)が、ここへ来て再び増加傾向に転じてしまった。この問題は4年が経っても未だに解決していない問題で、正直まだやっているのかという印象だ。しかしながら米国では新型車の攻勢が既に始まっている。「キックス」・「QX80」や「アルマーダ(別名:パトロール)」そして「ムラーノ」など。販売奨励金を削減するチャンス到来といったところか。特に「QX80」は日産の高級ブランド「インフィニティ」のフラッグシップ車種で、台当たり1,000万円クラスの所謂「ドル箱」である。評価も上々であれば台数も出て売上に貢献しそうだ。ところがそうは問屋が卸さない理由がもう一つある。
純利益大幅減の要因②:上がらない生産効率
「QX80」やアルマーダを生産しているのは子会社である日産車体(厳密には更に子会社の日産車体九州)である。その日産車体も、経営不振に悩まされているのだが、2024年上期の決算報告で「需要に対して供給が追い付かない」旨の言及があった。ここがミソで、高級車を発売し受注も好調だが、肝心の生産が上手い事行かず、台数が捌けていない。加えて、それを挽回する為に休日も工場を稼働しており、人件費が嵩む。それでも上手く生産が出来ない為、結果として利益を大幅に減らしてししまっている。思えば、GT-RとフェアレディZもそうである。特にGT-Rは職人がエンジンを手組したりする関係で、R35のデビュー当時からそう易々と生産できる車ではないと言われていた。しかしながらフェアレディZはれっきとした量産車。一時期は受注停止する程の超人気車でありながら、生産上の問題から販売台数は依然として少ない。つまり、利益を出せる車を技術上の理由で大量生産できていないということである。技術上その大量生産ができないということは、工場自体が対応しきれない=工場設備が古いor故障など、が推察できる。それによって生産効率があがらず、販売台数も思うように伸びない訳だ。
結論
本記事における日産の純利益が減った理由を要約すると、
・米国市場のインセンティブ(販売奨励金)が増加した。
・工場の技術的課題(生産効率が悪い)により、生産台数が上がらず特に高級車が作れていない。
ということである。日産は販売不振ということではなく、本来あるべき生産台数になれば、必然的に業績は回復する。そしてこの課題に対して、既に日産の経営陣は対策を講じ始めており、冒頭に述べた「売れる車が無い」・「経営陣が悪い」という指摘が的外れである、というのが結論である。
もちろんこれは、独自の分析から結論付けたものであるところは注意してもらいたい。読者の方々には、こういう見方もあるのだというのを提供できたのならそれで良しとしたい。
そこは大目に見てもらえればと思う。
コラム:販売台数ランキングのからくり
最近の販売台数ランキングは、最早トヨタ一強と言うべき状況になっています。登録車はヤリス、カローラ、果てはアルファードまで。10車種中8車種がトヨタ。軽自動車が入ると多少状況は変わりますが基本トヨタ。競争という観点から見ると率直に酷い状況。他のメーカーは何をやっているのかと言いたくなる。
ただ、先程も少し触れましたが、他のメーカーは受注が全く無いかと言えばそうでもない。むしろ同じように納期が延びている車ばかり。
同じように人気で何故ランキングに差が出るのか。答えは生産能力の差にあると考えています。
本編の生産効率の話をする為についでに3メーカーの国内工場の年間生産能力の差について調べましたが、日産:約120万台、ホンダ:82万台に対し、トヨタは驚異の337万台。日産比約3倍、ホンダ比4倍以上。すごい。
同じように注文が入っても捌ける台数が違うのだから、それはランキングに出ますよね。
つまり、販売台数の差=工場の生産能力の差で≠評価ではないということです。一方で人は人気な物に集まる、バンドワゴン効果がありますから、さらにトヨタ人気が過熱する構図になるわけです。
ところで技術の日産、販売のトヨタとはよく言ったものです。ホンダは「革新のホンダ」あるいは「エンジンのホンダ」とも言う。
このままトヨタの独走が続くのか?或いは、牙城を崩す者は現れるのか―――。