「MASAKI TAMURA - POWER JAZZ」 リリース記念 インタビュー 前半
Jazzy Sport KyotoのJSKミックス・シリーズ第三弾は、京都Crossoverシーンを代表するイベント「Do it Jazz!」を主催する傍ら、Worldwide FMのサテライト番組、「WWKyoto」やTsubaki FMも運営するMasaki Tamuraが満を持して登場!Tamura氏がDJになるまでの経緯〜今回のMix CDのコンセプトについてを前編、後編の全2回に渡りインタビューしました。
- MASAKI TAMURAの音楽遍歴 -
JSK: 音楽を意識して聴き出したり、レコードを買い始めたきっかけを教えてください。
MASAKI: 小学生の頃に親の車にカセットデッキがあり、フォークが好きで井上陽水さんの曲が流れていて初めて音楽を意識し、CDからカセットに曲を入れてコンピレーションを作ったりしてました。中学高校になると同級生に音やカルチャー好きな友達が大勢いて、教えてもらったり、一緒にCDショップへ行ったりしてました。古着屋さんの店員さんに音楽教えてもらったり、その流れでJET SETで背伸びしてレコードを買っていたりしました。高校生の時にバンドもやってて、もちろんバンドもチームで作れる楽しさは最高でしたが、一人で世界を作れるDJ(実際は一人で作れることはないんですけど、スタッフとかお客さん、音響さん含めて出す世界)っていいなあと思ってたのでレコードを集めていました。
JSK: 音楽を聴き始めた当時、どうやってレコードを買ってたんですか?
MASAKI: 特に今と変わらずですが、レコード屋さんに直接足を運んで買ってました。当時は通販システムのハードルも高かったので、今よりお店によく行ってたかもしれません。JET SETの5Fにあったオンドには入り浸ってて、何枚試聴してもいい人になってました (笑)。 おっちゃんがやってるレコード屋さんや開放倉庫でお宝さがしもよくしてました。学生だったのでお金がない分、足で稼いで "安いけどええやろ!"みたいな価値観を養えたのはよかったですね。あとみんな四条や三条辺りでレコード買ってたりしたので、人とは違うところで買いたいってのがあって、近所にメンソウルレコードっていう名店があり、値付けも今思うとすごく良心的で掘り出し物が多かったので学校帰りに一人で寄って色々買ってました。京都はレコード屋さんが多くあって素晴らしいです。
JSK: ターンテーブルを買おうってところに行き着いたのはいつ頃ですか?
MASAKI: たしか18-19才位のときにバイトでまとまったお金が入った時ですね。親が持ってた70年代くらいのビンテージのレコードプレーヤーがあって、それで最初は聞いてたんですが、繋げないし、ピッチも変えれないので。もちろんオーディオプレーヤーとしてはすごくいいものなんですけれども。友達が持っていたり、タンテ買う前からイベント行ったりしてたので音楽を繋ぐってことはなんとなく知ってましたが、買ってからはやはり実際に触ると楽しくて、近所にタンテ持ってるやつが少なくて実家の部屋に友達遊びに来て夜な夜なB2Bをしてました。温厚な亡き祖父にうるさくて怒られたのはいい思い出です。
JSK: レコードを買っていく中で大きく衝撃を受けたアーティストはいますか?
MASAKI: 初めて買ったJazz/Crossover系アーティストのアルバムがKyoto Jazz Massiveの「Spirit Of The Sun」でした。当時は高校生だったと思いますが、ロック、HipHopが主流の中、なにか違うのないかな?と思って色々探してた時、RoniSizeの「Touching Down」ってアルバムを聞いて、いいなって思い、当時Jazz/CrossoverとDnBはとても近い存在だったというのもあり、そこからJazzに辿り着きまして。そしてFuture Jazzを探しにJet Setにいったら京都タワーのジャケットが見えて、「Kyoto」と「Jazz」って書いてあるし買おう、って思って買いました (笑)。スタイリッシュでクールな質感がとにかくかっこよくて「Jazz」をキーワードにしていこうと思ったきっかけです。
あと、レコードとは違いますが、須永辰緒さんのミックステープシリーズ「Organ b」を集めてて、70年代あたりの世界各国のこんなにかっこいいJazz,Brazil,Latinがあるんだと知り、当時はレコードのキャプションに「Organ b収録」とか書かれててそれだけでレコード値段が凄く高くなってて、なかなか買えませんでしたが、中古盤を買い集めるきっかけになったと思います。
JSK: 当時の「Organ b」シリーズの影響力は絶大でしたよね。海外アーティストはどの辺りを聴いてましたか?
Theo Parrishの「Yellow Double Lines」というLive Mix CDは、生音と打ち込みを並列にミックスしていくスタイルに完全にやられて聞きまくりました。ジャンルで分けて音楽をそれまで聞いていたところ、そんなものは後から作られたものやし、もっと自由にしてもよい、というソウルメッセージを注入され(笑)。よりクロスオーヴァーなレコードの買い方が出来るようになったと思います。
あとはJazzanova。「In Between」というアルバムがあるんですが、ドイツっぽい硬質なビートにセンス抜群のサンプリングが入ってきて、かつ抜け感がある曲ばかりで、衝撃を受けました。そのJazzanovaが出したMix CD「Circles」の一曲目がまさかの日本人ジャズアーティスト白木秀雄さんの"祭りの幻想"って曲が入ってて、これまた衝撃で。日本人ジャズの価値観が180°変わったというか。とにかく海外のいいレコードを買うって感覚から日本ジャズも集めて聞いてみようというきっかけになりました。
最後にWorldwide FMのボスで、もはや充分メジャーな存在ですが、ジャズDJ界のレジェンドであるGilles Peterson。黎明期から今まで第一線で常に世界の音楽を拡げていこうとする姿勢、アーティストとしてレコードを沢山出してるわけではないんですが、クレジットとかにプロデュースとして載っていたりレーベルのオーナーとして登場してくるので、けっして自分が前面に出なくてもここまで音楽を拡げれるんだ、という部分で影響を受けました。
JSK: DJに興味持ち始めてから最初に行ったクラブ・イベントは?
MASAKI: まわりの友達の影響でWHOOPEE’SのHIPHOPやDnBのイベントに行ったりはしててもちろん刺激を受けいてましたが、初めて自分の感覚にはまったのは京都木屋町にあったクラブCOLLAGEにて須永辰緒さんがメインDJだった「Jazzy Space」。COLLAGEの暗い階段を上ってちょっと危険な香りのする中、生音のJAZZがバンバンかかってて、フロアとか暗くてほぼ見えないんですが、かっこいい大人の人達が乾杯とかしてて。それまで打ち込み系イベントに行ってたのですが、生音でガンガン踊る光景に衝撃を受けました。もう一つはMETROで開催されてた「Cool To Kool」。初めて行った時にTruby Trioがゲストで、JazzからHipHop,Soul,House,そしてDnBまで縦横無尽のDJ Playは圧巻でした、近いうちにMetroで復活するという噂もあるので楽しみです。
JSK: DJやりだしたのは何歳頃で、当時はどんなレコード買ってたのですか?
MASAKI: 19才頃に初めて、Jazzyなホーンが入ってるようなDeep House/Jazz Crossoverや旧譜の生音Jazz,Brazil,Latinを買ってました。最初の頃は自分でイベント主催はしてなくて、DnBのパーティのサブフロアでハウス、テクノチームの人達と一緒にやってたんですけど、そこでJazzとかもかけてて浮きまくってたんですが、海外ゲストにほめられたのはいい思い出です (笑)。 その後、20才頃京都 Metroで「Touchin’Bass」というパーティーを始めました。そこでも生音Jazz等をかけてたら、同年代くらいのお客さんハウス好きだったんで生音全然うけなかったですが (笑)、そのプレイを見てくれてたブーチーズの平野さんやネオン山田さんらと出会ってCOLLAGEで先輩のイベントに呼んでもらうようになりました。
JSK: DJとしてもキャリアが動いていく中で、自分の拘りやミックスのスタイルを確立したのはいつ頃ですか?
MASAKI: この前、DJ初めて二年くらいの時に作ったMix CDを見つけて、今でもかける曲をいれてたりするのであまり変化はないんですが、、選曲の幅はドンドン広がっていってます。基本「Jazz」というテーマはずっとこだわり続けてます。
JSK: イベント「DoitJazz!」を始めたきっかけは何だったのですか?
MASAKI:当時のCOLLAGEでは沖野好洋さんも同じジャズ系でイベントされていたのですが、また違ったゲストを招待したり、生音ジャズによりフォーカスしたいと思い、仲間たちと「DoitJAZZ!」を立ち上げました。その時は生音ジャズばっかりかけてました。今年15周年なので15年前ですね。COLLAGEのオーナー山口さんにはこれからどうやったら盛り上げていけるか、という相談に乗ってもらったり、90年代のクラブの様子やJazz DJとはという事かを教えてもらいました。大阪でのオーガナイズの経験を生かして、関西圏のジャズDJやバンドを招待したり、ジャズダンサーさんとコラボレーションしたり。COLLAGE閉店後は京都メトロに場所を移し、海外ゲストも積極的に招待していき、アート方面の方々とも繋がって行ったりして。なかでも現在開催中のKYOTOGRAPHIEとのコラボレーションした時は最高でした。Blue Noteのカバージャケットの写真を撮影していたFrancis Wolffの展示があったんでイベントでもアーカイヴを使用させてもらうことが出来て。John Coltraneの"Blue Train"っていうジャズ好きなら有名なアルバムがあるんですが、そのジャケットで使用された写真を京都メトロの大画面スクリーンに映しながら、ジャズで踊れたのはやってきてよかったなと思える瞬間でしたね。今では選曲はCrossoverになって来てますが、今でも初心を忘れないように年に一回「Doit生JAZZ!」として生音ジャズ限定のイベントも企画してます。
JSK: DJのキャリアを培っていく中で印象深かった出逢いは?
元JaponicaのバイヤーであるShinyaくん、Yoshito Kimura君やYOTTUら学生時代からのDJ達との出会いがなかったら今の活動はないので、当時から一緒に切磋琢磨し続けている仲間たちには感謝です。
大阪シーンでも活動するきっかけになった櫻井喜次郎さんにはNOONのパーティ「Bossanova Underground」のオーガナイザーも任され、体育会系な(笑)ノウハウを叩き込まれました。そしてKyoto Jazz Massiveの沖野好洋さんには京都メトロでオーガナイズしている「DoitJAZZ!」にも海外ゲストの話をまかせてもらったりと世界を拡げてもらいました。ここ何年かはなかなか大阪で活動する機会が少なくなってきてますが、また僕なりに恩返しができることがあればやって行きたいなと思ってます。
海外ゲスト公演を積極的に開催するようになって出会ったDegoさんは、京都観光をアテンドしたり、フットサルしたり(笑)。音楽以外のところでも行動を共にさせて頂きましたが、一挙一動のこだわりや音楽に対する考え方等とても影響を受けました。
JSK: 今現在の活動を教えてください。
このMix CDに対してコメントを書いてくださったKyoto Jazz Massiveの沖野修也さんとは出会ってイベントを作るところから、今ではKyoto Jazzy Creative Council (KJCC)というクリエイティヴ・チームとして一緒に行動させてもらって、KJCCでの活動や、WWKyotoを通して世界で活躍するDJの考え方を学んでます。シーンを作るためにはDJをする以外まで考えないといけない。DJいいのは当たり前、そこからどうするか、という行動をしていく必要があると強く思えるきっかけを与えて頂いてます。
Do it Jazz!/KJCCの田村正樹が発表するMix CDは、所謂Spiritual Jazzの本流を中心に選曲されたものである。しかしながら、十分に今日性を獲得しているのは、80年代ジャズや日本制作盤を取り入れているだけだなく、この10年で発達して来たオブスキュアー・ミュージックの感覚をしっかりと身に付けているに他ならない。又、ダンサブルなDJプレイでも定評のある彼が、本気でリスニング向けにシフトしても”踊れるジャズのイデア(本質)”を決して失っていないところが本作の聴きどころであろう。その両立は、”良い意味で”中堅であるからだとも言えるし、本人の資質が持つ潜在的な特性なのかもしれない。つまり、十分な知識を蓄えながら、好奇心と挑戦を失わないことが田村正樹の個性なのだと思う。厳密には仲間ではあるけれど、一批評家としてその姿勢に賞賛を送りたいと思う。 沖野修也(Kyoto Jazz Massive/Kyoto Jazz Sextet/KJCC)
JSKマネージャーのYukari BBさんも、京都に引っ越されてから出会って今ではKJCCの活動も一緒にしていますが、東京のシーンで活動されてきているので、色々な人たちを紹介して頂いたり、こうやってローカルで活動するDJのMIXシリーズを企画したり、フラットな目線で盛り上げようとされていて、MIX CDをリリースるきっかけを作って頂き本当に感謝です。
それから、二年前に京都のサテライト番組として始めたTsubaki FMは、創始者であるMidori Aoyama君が、知り合う前から同世代の若手で東京でがんばってる奴がいると聞いていたのですが、実際会って意気投合、一緒に盛り上げていこうってなって、彼が呼ぶ海外ゲストの京都公演を担当したりして関係性を築いてきました。Tsubaki FMもドンドン面白くなってるのでご期待ください。
僕もこの世界では中堅といわれる年齢になってきて、今まで先輩たちが作ってきたことや、教えてもらったことを、下の世代に伝えてサポートしていく立場になってきたのかなと思ってます。地元京都が盛り上がるようにもうひと踏ん張りがんばります。
後編 - 今回のミックスのコンセプト - へ続く
Speaker: Masaki Tamura
Interviewer & Editor: Yukari BB (Jazzy Sport Kyoto)
〈RELEASE PARTY INFO〉
MASAKI TAMURA - POWER JAZZ
Format: Mix CD
Cat#: JSKMIX-003
Release Date: Jazzy Sport Kyoto: 10月8日 / 一般発売: 10月15日
Distribution: Jazzy Sport Distribution 独占流通
Artwork Design: die (Jazzy Sport)