10.アセクシャルと正社員

はじめて履歴書に書けるような仕事をした。

面接の際はまだ籍を抜けていなかったので、既婚者ですけど離婚調停中と話した。

元夫は離婚の話はすんなり受け入れてくれたものの、お互い離婚の知識がなく、役所も仕事中の時間帯しか空いていないから、手続きに三ヶ月くらいかかった。

やっと正式にバツイチになれたのは年明けの1月頃だったかと思う。

当然職場でも彼氏はいないの?と聞かれることもあったが、離婚したばかりでひとりを楽しみたいというと、かなり説得力があるのはそれ以上は言われない。
やはり結婚という経験は役に立つのだ。

水商売をやめてフルタイムで働き始めて、新しいことも覚えるからしんどかったけれど、
普通の企業ではセクハラの認定が厳しいから、あまり突っ込んだ話はされないのが楽だった。

まだ30にもなってないのにバツイチなんて苦労したんだわ…と勝手に思ってもらえるのが嬉しかった。

会社には恋愛脳の人間は意外に少なくて、もしかして今まで私がいた世界のレベルが低かっただけで、本当は世の中恋愛以外を楽しんでいる人も多いのではないかと希望を持てた。

会社で仲の良い人も男女問わずできたため、
プライドなど抜きでちゃんと楽しいと思えるようになったのかもしれない。

社内には結婚している人も恋人がいる人もたくさんいたが、みんなそれぞれ趣味や夢中なことがあって、恋愛の話をする人はほぼいなかった。

思えば恋愛脳の人は、趣味がない人が多かった気がする。
知らない恋人の話をするより、自分が好きなことを話してくれる人のほうがずっと魅力的だ。

やっと私はひとりの女ではなく、ひとりの人間として生きていくことができるようになった。


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