6.アセクシャルとビアンバー

近年私を苦しめた場所。
ここ数年の話だが、
そもそもアセクシャルという言葉があまり浸透していなかったので、でも男性を好きになれないというコンプレックスは相談しにくい社会だった。

飲むのは好きだし…

そんな気持ちで、きっとこの苦しさを理解してもらえるんだと思った。

男の人を好きになれない仲間として。

でも実際は違った。
女の人なら好きになれる人と
誰も好きになれない人は違うのだ。

初めは「良い人がいればね〜」と猫を被っていた私だが、フリーのお客さんと仲良くなるように紹介されたり、どんな子がタイプかと聞かれたり、話題はすべて恋愛だった。

今は仕事が楽しくて、と濁してもすぐまた恋愛の話をされる。

アセクシャルだと言わざる得ない状況になった。

「そのうち良い人が現れるんじゃない」
「好きな人に出会ってないだけ」

この言葉を言われた時、あり得ないくらい腹が立った。

異性を当たり前に好きになって、恋愛になんの違和感もなく生きている人なら気持ちが理解できないのは仕方ない。

異性を好きになれなくて、良い男に出会っていないだけと言われて傷ついた経験のあるレズビアンが、今度はアセクシャル相手に同じことを言うのか?

結局どこかで普通の恋愛ができないことにコンプレックスがあるんじゃないかと私は思った。

ビアンバーでは同性の恋愛が当たり前で、自分が普通の人だと思える。

アセクシャルがマイノリティで、レズビアンが普通。

かつて当たり前の恋愛ができるとマウントを取られていた過去があるから、今度はマウントを取る側にまわりたいのだと感じた。

いじめをする人が、過去にいじめや虐待を受けていた率が高いのと同じ。

プライドの高い私。
マウントを取らせないためだけに男と付き合い結婚までした私だからこそ、レズビアンの人のその発言に隠れた驕りに反応してしまう。

「山田さんならすぐに良い人現れるよ。私人の幸せな話好きだから、恋人ができたら教えてね」

よくビアンバーで会うお客さんに言われた言葉。

平日は仕事が楽しくて、休みは友達や親と遊んできたという話をさっきまでしていたが、恋愛史上主義の相手からしてみれば、それは幸せには入らないらしい。

そのお客さんは数か月後最愛の恋人から振られていたけど、それでもまだ恋愛がしたいようだった。

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