9.アセクシャルと結婚
私はわりと早いうちに結婚した。
今は離婚して独り身である。
結婚する理由はただ一つ。
プライドの高い私がマウントを取るためのものだった。
結婚前に19歳、20歳とで彼氏はできたものの、
どうしても続けることはできなかった。
彼氏ができることは普通の人間に擬態できるメリットがあるけどそれだけ。
私にとっては気持ち悪い、つらいと言う気持ちに耐えなきゃいけない。
今思えば向こうだって私を本当に好きではなかったと思うし、長く続かないのは当然。
それに彼氏ができたところで遅れていたレールに乗るだけ。
何も凄いことではない。
でも結婚なら?
20ちょいで結婚すれば周りより早い、マウントを取れる武器になる。
友達の中で人として尊敬できる男性がいて、こちらから話を持ち掛け籍を入れた。
初めてお昼の派遣事務職もはじめた。
優しくて真面目で、話も面白いし料理も上手い人だったので、私の虚栄心は一時的に満たされた。
でも私に結婚なんて無理だった。
相手の親がなにより嫌いで、嫁として夫を支えたりも未熟な私にはできない。
数年で別々に暮らすことを願い出た。
マウントを取る多幸感よりも一人の心地よさが勝ったのだ。
お昼の仕事も辞めて水商売に戻った。
たまに連絡をして会って、やっぱり人としては最高なんだよなと思いながらも、やはり普通の幸せは無理だと思った。
何より結婚を周りに報告した時の「今が一番幸せな時期よ〜」と言われた時に、こんなになんのトキメキもないマウントを取るだけの幸せが、私の人生の最高潮なのかと思った時の虚しさが受け入れられなかった。
最近正式に離婚をして、相手も私に対しては友達のひとりとしての認識を持っていたので、本当にあっさり話は進んだ。
もう私はアラサーで、さすがに次のステップに進まなくてはいけない。
水商売の世界でも寿命が来た。
離婚をして専業主婦も通用しない。
初めてちゃんと働くことを考えた。
そして世の中でアラサーバツイチというステータスが、最も私の望んでいた状況であることも実感し始めた。
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