経営する事の難しさについて語ってみよう。⑨
経営者としての最大の要諦は会社の成長=個人の成長が一致している事である。革新的なアイデアをベースとした企業なんてほとんど無い。既存サービスをバージョンアップしたりイノベーションしたりして競合他社に僅かでも秀でている事で存在価値が生まれるのである。そのサービスによってクライアントは勿論、スタッフの価値を向上させる事がとても重要なのである。経営者はこれらのアクションが常に相互に作用しているかを監視し、場合によっては軌道修整し、常に上昇させるのが役割だ。そこに、十分な資金や環境を適宜配置するのも経営者の役割だ。しかし、そのサービス自体を構築し上手く機能すると、陳腐化している事に気づかない事が往々にしてある。少し具体的な話をしよう。僕の父は婦人服の製造販売業を営んでいた。主にミセスを対象にオリジナルで製品を作り、基本的には小売店に直販するビジネスモデルだった。創業したのは40歳。母は35歳。1970年代初頭の高度成長時代で繊維業界はまさに日本躍進を支える重要な基幹産業だった。そして父の事業が破綻したのがその30年後。UNIQLOが台頭しMYCALが倒産した時代だった。景気不景気や暖冬冷夏等の様々な要因による浮き沈みはあったものの破綻の最大の理由は、父の加齢というのが僕の分析である。主要な顧客も高齢化し廃業や縮小。製品も過去の成功体験を元にした類似品。父とスタッフとの年齢差によるコミュニケーションの齟齬等。父なりに努力していただろうし悩んでいたと思う。父は、いつか状況が変わると考えていた様に思う。しかし、実は10年も前から会社は生き絶え絶えの状態だったのだ。運悪く心臓疾患による緊急出術もあり、会社の清算に舵を切った。父の事業の清算を手伝ってみて、ビジネスにも寿命というものがあるのだと判った。この体験があったからこそ、僕にもいよいよこの時期が来たのだ。本日はここまで。