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ももクロはジャンヌダルク!?新曲『Heroes』は全アイドルへの応援歌

2024年5月8日ももいろクローバーZ(以下ももクロ)7枚目のアルバム『イドラ』が発売された。

発売に先立つ4月14日にアルバムのリード曲『Heroes』のMVが公開されたのだが、これがとても良い!

かなり反響も大きくて、公開後約2週間ほどで200万回超の再生数を叩き出した。

僕自身も何度も見返しているのだが、楽曲の良さ・MVのできの良さへの感動とは別に「ももクロってなんかいっつも戦ってるな」という感想を抱いた。

ちなみにMVの中で武器を持つももクロ役の子供たちに『Z女戦争』を重ねたモノノフ(ももクロファンの呼称)さんも多く見受けられた。

怪物に対して身近なものを武器にして立ち向かうももクロ役の子供たち

いきなり話は変わるが、ももクロはアイドルとしては珍しくアルバム制作に力を入れている

そもそも他のアイドルと比べももクロはシングルの発売自体が少ないと言われている。
所属するレコード会社でさえ1年以上もシングルが発売されていないことに気づかず慌ててシングルを発売した、なんてエピソードもあるくらいだ。

早々に握手会を辞めてしまったことがシングルCDの発売が少ない一因ではあるが、ももクロは活動の中心をライブに置いており、定期的に曲数の増加が必要となる。そのため複数の曲を収められるアルバム制作に重点を置いているのではないだろうか。
「握手会のためのシングル」よりも「ライブのためのアルバム」へシフトした、というわけだ。

しかし、ただアルバムを発売するだけではファンの支持は得られない。
そこでより面白くするためにはコンセプトが必要となってくるのだが、これまでのアルバムを思い返してみると、それとは別に薄っすらと「ももクロは常に何かと戦ってるよな?」という考えが浮かんできた。

さらにアルバムを発売をする度にももクロは戦いのフィールドを変えてきたような気もする。

そのあたりを僕なりにアルバム毎に紐解いてみようと思う。



1st Album『バトルアンドロマンス』

vsライバル ~2011.7.27リリース~

名盤の呼び声高い通称『BAR』
タイトルは天龍源一郎が旗揚げしたプロレス団体「Wrestle and Romance(WAR)」のオマージュ

文字通りタイトルに“バトル”を謳っているこの1stアルバムが発売されたのは2011年7月。時はまさにアイドル戦国時代の真っ只中であった。

その前年の2010年に『行くぜっ!怪盗少女』を引っ提げてももクロはメジャーアイドルが集うバトルフィールドに殴り込みをかけた。
(これをきっかけにアイドル戦国時代が始まったと言っても過言ではないだろう。)

多少デビューは前後するがそのフィールドには、一強と称された大国「AKB48」、「モーニング娘。」を大将とし「スマイレージ」「Berrys工房」等を要するハロプロ勢、フジテレビを後ろ盾とした「アイドリング!!!」、エイベックス所属の「SUPER GIRLS」、他にも「ぱすぽ☆」「東京女子流」「NMB48」「SKE48」「HKT48」等々、錚々たる面々がひしめいていた。

そんな状況の中で発表されたのがこのアルバムである。
当時はまだ今ほど一般の知名度もなく、知る人ぞ知るサブカル的な扱いだった彼女たちの1stアルバムは全国のCDショップ店員が選ぶCDショップ大賞に輝くこととなる。

アイドル戦国時代にあって「バトル」と名の付くアルバムを武器とし、局地戦で勝ち名乗りを挙げた瞬間でもあった。


2nd Album『5th DIMENSION』

vs自分 ~2013.7.24リリース~

顔を隠した衣装がファンを驚かせた

このアルバムの発売よりも前にアルバムタイトルを冠したツアーを敢行。

ライブ前半はこの時点で未発表のアルバム収録曲を披露。しかもペンライトは禁止(代わりに手首に巻くサイロバンドが配られた)、衣装はメンバーカラーもなし、顔が隠されているのでいわばシルエットのみ(まあ比較的分かりやすいのだが)、当然お客さんは曲も初めて聴くというメンバーにとっては歌とパフォーマンスのみで勝負しなければならないという試練が課された。
バトル漫画によくある「修行編」のように、いわば能力を向上させるために「自分たちとの戦い」に挑んだわけだ。

つまり戦いのフィールドを敵との戦いから内なる「戦い」に“次元上昇”したエポックメイキングな一枚と言えよう。

この次元上昇する様はまるでブルース・リーの『死亡遊戯』のよう、と言えば分かる人には分かってもらえるかな?
→五重塔の1階で敵を倒した後、まだ見ぬ敵が待つ2階に上がって行く、っていうあの感じね(笑)


3rd Album『AMARANTHUS』

4th Album『白金の夜明け』

vs人生 ~2016.2.17同時リリース~

左:『AMARANTHAS』 右:『白金の夜明け』

2枚合わせて全28曲(インスト含む)が収められたアルバム。

この2枚のアルバムは「起きてみる夢 寝てみる夢」がテーマと発表されていた。(正直このテーマは個人的にはいまいちピンと来ていなかった…)

人間の誕生の瞬間を歌った『WE ARE BORN』、死を歌った『バイバイでさようなら』に代表されるように2枚のアルバムを通じて人間の一生が想起されるような内容となっている。

そもそも生命の誕生は生存競争を勝ち抜いた結果だし、そしてまた生きるということも戦いだ。

というわけでこの2枚のアルバムを通じてももクロは避けることのできない人間の根源的な戦いへの賛歌を歌った、とこじつけられなくもない、というお話。


5th Album『MOMOIRO CLOVER Z』

vs世間 ~2019.5.17リリース~

『MOMOIRO CLOVER Z』初回限定盤A

結成日の5月17日発売。セルフタイトルを冠した4人体制となって初のアルバム。

このアルバムを語る上で紹介したい映像作品が2つある。

1つ目は『5th ALBUM「MOMOIRO CLOVER Z」SHOW at東京キネマ倶楽部』

ストーリー仕立てのショーが展開された

2つ目は大ヒットしたミュージカル映画『THE GREATEST SHOWMAN』だ。

『THE GREATEST SHOWMAN"

『5th ALBUM「MOMOIRO CLOVER Z」SHOW at東京キネマ倶楽部』はタイトルの通りこのアルバムの収録曲を、東京鶯谷のライブハウス・東京キネマ倶楽部にて”ショー仕立て”で行われたライブ映像となる。

※ちなみに東京キネマ倶楽部はかつてキャバレーだった建物を居抜きでライブハウスとして使用している。

冒頭ドラァグクイーンのスカートの中からメンバーが登場したりとかなりトリッキーな演出が全体を通して施されており、観終わるとこのライブがなぜこの出演者なのか、なぜこの演出なのか、なぜ東京キネマ倶楽部で行ったのか、など様々な疑問が湧き出てくる。

細かい説明は省くが、その疑問が『THE GREATEST SHOWMAN』を観るとすぅーっと解けていく。

どこにも言及されてはいないが、僕はズバリ、このライブが『THE GREATEST SHOWMAN』をモチーフにしていると確信している。

『THE GREATEST SHOWMAN』のテーマはズバリ!「”世間の偏見”との戦い」だ!

本人たちが自覚しているかしていないかに関わらず、ももクロも様々な偏見と闘ってきた。

アイドルへの偏見、紅白卒業宣言への偏見、メンバー脱退へのありもしない作り話、三文カストリ雑誌に書き立てられる嘘…等々

『THE GREATEST SHOWMAN』では髭面の女性が何を言われようと「これが私!(This is me!)」と高らかに歌い上げるが、ももクロは

ほら前を向けばキミが
いてくれるからぼくら
もっと繋いでいけるんだ まだまだ足りない
開幕のベル鳴れば 走り続けろ
Show must go on!

『ロードショー』の一節

とアイドルとしての矜持を高らかに歌い上げる。

このアルバムではディスコサウンドをサンプリングした『ロードショー』、リズム感が気持ちいい『The Diamond Four』、大人っぽい色香を漂わせる『レディ・メイ』等、明らかにテクニカルな面でも成長を遂げている。

ももクロはこの1枚で”世間の偏見”に打ち勝つ底力をまざまざと見せつけた。

ちなみに7枚目のアルバムタイトルの『イドラ』という言葉はラテン語でアイドルの語源とされており、「偏見」という意味もあるそうだ。
むしろ偏見との戦いは今なお続いているということなのかもしれない。


6th Album『祝典』

しばしの休息、癒やしの時 ~2022.5.17リリース~

飯嶋久美子氏が手掛ける衣装が印象的なジャケット

6枚目のアルバム『祝典』は唯一「戦っていない」作品、というのが僕の印象だ。
(ジャケットの4人はまるでアベンジャーズのようではあるけれども)

2020年に発生し世界に猛威を振るったコロナ禍がやや落ち着きを見せ始めた2022年のリリース。

世の中では医療従事者を筆頭に世界中の人々がコロナと闘っていた。
(今なお闘っている人がいることも忘れてはいけない。)

そんな闘っている人たちや疲弊した人たちに、ももクロがそっと寄り添い、時には優しく包み込むような作品が『祝典』というふうに僕は解釈している。

謂わば戦いに疲弊した人たちに癒しと休息、祈りを捧げる教会のような作品と言えよう。

人は強くないけど
でも一人じゃないから
Take my hand take my hand
私も強くないけど
でも君がいるから
Gimme your hand gimme your hand

収録曲『HAND』より

大丈夫さ 大丈夫って
お疲れ様って君がくれた言葉だよ
孤独の中で鳴るBeatっ!
大丈夫さ 大丈夫だよ
1人きりじゃないよ
君がくれた弱さがほら、
強く僕の中で生きているよ

収録曲『孤独の中で鳴るBeatっ!』より

7th Album『イドラ』

vs厄災 ~2024.5.8リリース~

女神をモチーフとした衣装は前回に引き続き飯嶋久美子氏が担当

初めに記した通り、このアルバムのリード曲『Heroes』
MVではももクロの4人が「人々から花を奪う”怪物=厄災”と戦う様」を描いている。

ここで描かれている”厄災”とは今世界中で起きている「戦争」「自然災害」「コロナ禍」を暗喩していることは容易に想像がつく。

2012年2月に行われた「ももクロ試練の七番勝負 vs国際情勢」で戦場カメラマンの渡部陽一氏が言った

「世界はアイドルを必要としています。そして世界はももクロを必要としています。2012年は世界を舞台に活躍してほしいと思います。世界中の街でももクロを見かけたら、僕が写真を撮ります」

音楽ナタリーより引用
https://natalie.mu/music/news/64021

という言葉が干支1周分の時を経てより現実味を持って甦る。

2012年2月5日東京キネマ倶楽部にて行われた「ももクロ試練の七番勝負 episode.2:vs国際情勢」

ただ本人たちは「私たちが地球を救う」なんて大それたことは考えていないと思う。

考えてみればこれまでも彼女たちが望んで戦いに挑んできたわけではない。
悪い大人たちに唆されて戦いのフィールドに放り込まれてしまった、という方が正しいような気がする。

まるで「自分でも気づいていない特殊能力を持っているが故にいつの間にか戦いに巻き込まれ先頭に立たされてしまった漫画の主人公」のようだ。

そこでふとこの曲のタイトルが『Hero』ではなく『Heroes』と複数形になっているのは、彼女たち4人のことを指していないのでは?という考えが頭を過ぎった。
(実際には彼女たちももクロ4人のことを指しているんだけど)

大きな意味で「厄災に立ち向かい、世界を救うのがアイドル」ということを表現しているのであれば、アイドル=ももクロである必要はない

世界中を覆うこれだけ強大で未曾有の厄災に対しては、ももクロもスタプラもハロプロも48グループも坂道もその他全アイドルがその力を結集し立ち向かった方がより強大な力となる。

『Heroes』という楽曲は、私たち「ももクロ」が先頭に立つからみんなで力を合わせて戦おう!という全アイドルたちへのエールなのではないだろうか?

そしてそれがアルバムタイトルを『イドラ』(=アイドルの語源)とした理由であり、『Heroes』と複数形になっている理由でありその楽曲をリード曲とした理由なのではないか、という気がしてならない。

もちろんこれは妄想に過ぎない。
でもももクロ陣営はいろいろな仕掛けを随所に織り込んでくるのでこんな風に妄想したり、楽曲やMVを考察したりするのが「ももクロ」の楽しみ方の一つであることはモノノフ諸兄であればご理解いただけるのではないだろうか。

2024年5月17日に16周年を迎えたももいろクローバーZ。きっと彼女たちは持ち前の明るさと笑顔でこれからも様々な戦いのフィールドを駆け抜けて行くことだろう。

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