
なぜお金持ちは更にお金持ちになるのか。「21世紀の資本」
今回も、お金に関する本を紹介させていただきます。
「どうして一部の人だけがどんどんお金持ちになっていくのか?」という疑問を持つこと、ありませんか?
そんな疑問を解き明かしてくれるのが、今回ご紹介するトマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』。
この本を読むと、富の流れや経済の仕組みが見えてきて、自分の資産形成に対して新たな視点を持つことができるのではないでしょうか。
700ページ以上ある大著ですが、何とか私なりに重要と思うポイントをまとめましたので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
では見ていきましょう!
資本主義社会の現実: 富はどうして一部に集中するのか?
本書では、現代社会における大きなテーマ
「なぜ富が一部の人々に集中するのか?」
という疑問に正面から答えています。
ピケティが示した結論はシンプルです。
「お金持ちは、さらにお金持ちになる」。
どうしてでしょう?これには、
「資本収益率(r)」と 「経済成長率(g)」
の違いが大きく関わってきます。
「r>g」
ピケティが強調するのは、
「資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回ると、富の集中が進む」
という現象です。
この状況を式で表すと「r>g」という不等式になり、一度は耳にしたことがあると思います。
資本収益率とは「持っている資産から得られる収益」、たとえば不動産からの家賃や株の配当金のことで、本書の中では毎年5%程度上昇しているとのことです。
一方、経済成長率は、「国全体の経済がどれくらい成長しているか」を表すもので、著書の中では毎年1~2%程度しか上がらないと指摘しています。
身近な例
ここまで説明されても、イマイチよくわからないという方もいらっしゃると思います。
次に身近な例を挙げて、どうしてこの二つの違いが格差を生むのかを説明していきます。
たとえば、あなたが銀行に預けたお金が毎年5%で増えるとします。
この利子の増えるスピードが、国全体の経済成長よりも速いと、お金をたくさん持っている人は、その利子だけでどんどん資産を増やすことができます。
※現在は超低金利なのであり得ませんが、あくまで例です。
一方、収入は給料だけで、貯金もない人はどうでしょうか。
給料は経済成長率に左右されるため、年間2%程度しか上がりません。
この3%の差が、ピケティの言う「r > g」という公式の意味です。
結果として、持たざる者(資産を持たない人々)は追いつけず、富の差が拡大していくのです。
戦争が富の集中を一時的にリセットした
では、これまで常に格差が広がってきたのでしょうか?
実は、20世紀には一度、格差が縮小した時期があります。
それが、第一次世界大戦と第二次世界大戦の影響によるものでした。
戦争は、国家や企業、そして個人に深刻な影響をもたらしました。
戦争で多くの資本が失われ、結果として「富のリセット」が起こったのです。
例えば、工場やインフラが破壊されたり、国家が資産を使い果たしたりすることで、一時的に富の差が縮まりました。
さらに、戦後には各国政府が富の再分配を進めるために、富裕層へ高い税金を課したり、社会保障制度を充実させたりしました。
この結果、富が再び一部の人に集中するのを抑え、戦後の数十年は格差が縮小した時期となったのです。
しかし、これも一時的なものでした。
戦争後の経済復興とともに、再び富は特定の層に集まり始めたのです。
つまり、平和な時代には、資本主義の本質である「富の集中」が再び勢いを増していったのです。
現代における格差の再拡大: アメリカの例
では、現代の状況はどうでしょうか?
ピケティは、特に「アメリカ」における富の集中が顕著であると指摘しています。
1980年代からの金融の自由化や減税政策によって、資本を持つ富裕層がますます豊かになりました。
たとえば、ウォールストリートの金融機関やシリコンバレーのテクノロジー企業(代表的な企業としてAppleやGoogle、Metaなど)のように、ほんの一握りの人々が巨額の富を築いています。
特に、これらの企業の株式を保有している人々は、資産を急速に増やしています。
一方で、一般の労働者の所得はあまり伸びていません。
この状況が続けば、富がますます少数の手に集中し、多くの人々が取り残されてしまうでしょう。
格差を抑えるためにピケティが提案する解決策
では、この格差の拡大を止めるためにはどうすればいいのでしょうか?
ピケティは、「累進資産税」を導入すべきだと提案しています。
簡単に言えば、お金をたくさん持っている人には、より高い税率で課税し、そのお金を再び社会に還元する仕組みを作るべきだという考え方です。
ただし、これは一国だけで行うのは難しく、「国際的な協力」が不可欠です。
なぜなら、もし一国だけが厳しい税制を導入したら、富裕層はその国を離れてしまい、税金を逃れるために他の国へ資産を移してしまうからです。
日本でも、人気の経営者やYouTuberなどが税金の少ないドバイなどに移住した、という話をよく耳にしますよね。
ピケティの提案は、確かに格差を縮める方法としては理想的ですが、実現には多くの課題が残されているというのも、また事実です。
本書の主張を読み違えてはいけない。
ここまで読んでいただいた方に注意してもらいたいのは、ピケティは決して「投資をしろ」といっているわけではないという点です。
著者の発言や、本書の内容は、投資商品などを勧める企業などの営業トークとして用いられることがよくあります。
しかし、先ほど説明したようにピケティは貧富の差を縮める対策として、政策として
「累進課税を進めて、富を再分配すべし」
と訴えているのです。
あくまで経済学の本であり、投資指南書ではありません。
よって、「ピケティが投資進めている」という論調で投資商品を進められた場合は、十分に気を付けてください。
ピケティはそんなことを言っているのではありませんから。
まとめ
ピケティの『21世紀の資本』は、富の集中がどうして起こるのか、そしてその結果として経済格差が広がる理由を歴史的に解き明かしています。
彼が示す「r > g」という原則は、現代社会でも格差を理解する上で非常に重要な鍵となります。
20世紀の戦争で一度は縮小した格差も、現代では再び広がりつつあります。
ピケティは、この格差を是正するために国際的な税制改革を提案していますが、その実現には困難が伴うことも確かです。
それでも、この本を読むことで、どうして格差が生まれるのかや私たちの社会が直面している経済の課題を理解し、将来の方向性を考えるためのヒントを得ることができるのではないでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。