闇落ちキャラに共感した日
曇りのち雨のとある日の夕刻、私はコンビニに用があったため、学校から帰ってすぐ、雨が降っているが外出することにした。
学校からの帰り道、傘を持っていない知人がいたため、持っていた折り畳み傘を貸すというちょっとした慈善エピソードがあったのだが、それはまた別の話。
家の玄関にあった壊れかけのビニール傘を片手に、コンビニに向かっていたのだが、とにかく寒い。
着ていたお気に入りのダウンパーカーのジップを一番上まで上げ、顔の下側が風に当たらないように工夫しなんとか目的地にしていたコンビニに到着した。
さて、なぜコンビニに用があったのかというと、和歌山滞在中、テニス教室開催のお礼にいただいた2000円の無料券の期限がその日までになってしまったからなのである。
この券の類は、2000円を分割して都度都度支払いに充てることはできず、一度に使わなければならない。
つまり、2000円を超える買い物をするのが定石なのである(想像)
コンビニで2000円を一度に…
なにを買うのがベストなのか、長い間考えていたところ
呪術廻戦の最新刊が2冊同時に出たという噂を耳にした。
ちょうどいいやん!と思い、
それを買い、あとは食べたいスイーツなどを買おうと作戦を立てていた。
発券機でチケットを発券し、マンガはどこだ と店内を捜索したのだが、見つからない。
それどころか本コーナーにはジャンプやファッション雑誌が数冊しか並んでいない。
「なんでやねん」と漏れ出る声と共に別のコンビニに行くことにした。
別のコンビニまでは300メートルほど。
外の寒さに凍えながらマンガを楽しみに歩いた。
第2のコンビニに着き、同じように店内を捜索した。
ワンピースやハンターハンターなどの漫画は細々と陳列されていたが、お目当ての呪術廻戦はなかった。
落胆した。
ただ、別のコンビニに行くほどの気力と体力はなかったので、あきらめてそのコンビニで2000円分、自分が食べたいものを買うことにした。
15分は悩み続けただろうか。
なかなかのメンバーをそろえることができたような気がする。
コンビニで自由を与えられると人は思考と行動が鈍くなるのだと学習した。
レジに持っていき、お会計をお願いし、「2060円」という表示を見て、得意げに先ほど別店舗で発見した2000円券を提出しようとしたその瞬間、その券に「発券した店舗のみで有効です」
というデカデカと印刷された文字がちらっと見えてしまった。
慌てて、「すみません。このお会計キャンセルさせてください」と言い、申し訳ないと思いながら店を出た。
となると、私がその券を使わなければならないコンビニは、先ほど発券した呪術廻戦のない店舗である。
あぁ…
自分の確認不足と、雨の降る寒空に嫌悪感を抱きながら、例のコンビニに向かった。
道中、どうやってこの券の効用を最大限高められるか考えながら歩いた。
答えは出なかったが、案外すんなりと例のコンビニに着いた。
とりあえず店の外にある傘立てに傘を挿し、思考を続けながら入店した。
ここでも悩み続けること15分。さっきの店舗にはあったものがなく、なかったものがある。
呪術廻戦がない今、妥協は許されない。そう思いながら今後使うであろう商品を選び、お会計に向かった。
「2450円」だった。
450円の端数。商品を一つ多く買いすぎてしまったのである。
これじゃあ2000円券を使った後に400円の買い物をしたのと同じではないか。
この悔しさを胸にいつまでも続く雨の寒空の中、歩いて帰ることにした。
のだが、店の外にある傘立てに挿しておいた傘がない。
間違いなく傘がなくなっている。
思考が一瞬停止すると共に、脳がピキついた(そんな動詞はない)
私が一体どんな愚行をしたというのか。
なぜこんな仕打ちに合わなければならないのか。
そもそもだれが取っていったのか。
考えてもきりがないネガティブが私を襲った。
本来、私の傘がある場所の横に、似たようなビニール傘が挿さっていた。
もしかしたら、その傘の持ち主が私のものと間違えたのかもしれない。
しかし、それを使って帰っては、違ったときにまた新たな被害者を生んでしまう。
そしてそれがまた続いてしまうかもしれない。
そうした負の連鎖を止めるべく、苦しみに悶え耐えながら私は雨に打たれ、家に帰った。
私の確認不足もあり、いろいろなことに悩まされたこのコンビニの一件。
この悲しみと怒りのはけ口はどこなのだろうか。
そんなことを考えていたら、ふと、世の中の悪役たちはこういったことから闇落ちしていくのではないかと思うようになった。
私は傘で済んだため闇落ちしなかったが、これが大切な人やものであった場合、確かに闇落ちするのも納得がいく。
不可逆的な理不尽に会い、闇落ちしていくキャラクターたちの心情を理解するのもたまには良いのかもしれない。
まずはダースベーダーから攻略していこうと思う。