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夏の日

注)
あくまでも私が感じた思いを綴っただけのレポートであり、記憶が曖昧なこともあって、時系列や発言の一字一句正確ではない部分もあります。優しい気持ちで読んでいただけると幸いです。尚、公演中の撮影は一部を除いて禁止されていた為、公式からの写真を使用させていただいております。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。




『何を歌うかな?楽しみ~』

という友達の言葉。

「雨上がりの空を見ていた~」

間髪を入れず、僕は最初のフレーズを歌い出す。

オープニング曲は「たしかなこと」、きっとこの曲が歌われると思っていた。

まだ梅雨が明けていない空の下での夏フェス、朝からポツポツと降る雨が小田さん出演前にピタリと止み、雨上がりの空に小田さんの声が解き放たれる、そんなシーンをここに来るまでの僕は勝手に思い描いていた・・・





スキマフェスの開催が発表された時、参加しようかどうか悩んだ挙げ句、僕は諦めることにした。

大好きな小田さんが出演するといっても、どれくらいの時間で何曲歌うのか?

7月の空の下での夏フェス、自分自身の体力的な問題もあったし、一番の問題は先立つものを工面できるのか?という事だった。

そんな思いで諦めたスキマフェスなのだが、7月1日にタイムテーブルの発表があり、思ってた以上に出演者一人一人の持ち時間が長いことを知る。

こんな事なら申し込みをしておけばよかった、と思う僕の元に友達から連絡が来たのはスキマフェス開催の数日前だった。


『機材開放席が販売されてるけど、スキマフェスどうする?』


心は決まっていた。


友達からの連絡が来る数日前、夏のボーナスが支給され、妻からお小遣いをいただいた僕は、

「なんの迷いもなくあなた(参加)を選んで」





フェス当日、名神高速を走る僕らの車は京都手前で渋滞に巻き込まれるものの、渋滞を抜けてからはスムーズに新名神、伊勢湾岸道、知多横断道路を走り続ける。

セントレアまでの渋滞は予想してた以上に影響はなく、混雑程度だった為、事前予約していた駐車場には予定通り到着し、荷物をまとめて会場へと向かった。

駐車場から蒸し暑い通路を抜け、会場となる建物入口に辿り着いたが、予想を超える長蛇の列。



早足で駆け寄り、リストバンドを着けてもらう列の最後尾に並んだものの、時が経てども経てども、牛歩くらいしか進まない状況の開演1時間前。


この流れなら開演には間に合わないだろうと覚悟を決めた時、急に列の流れがスピードアップし、座席に着席したのが開演5分前だった。




スキマスイッチの前説、司会から始まったスキマフェス、トップバッターの「ゆず」は盛り上げ上手、会場全体に一体感を作りながら、みんなを笑顔へと変えていく魔法をかけ、ステージを去って行く。


その流れに沿って、SUPER BEAVER、JUJU、マキシマム ザ ホルモン、コブクロと、スキマスイッチへのお祝いの言葉と共にステージ上で最高のパフォーマンスを繰り広げる楽しい時間の流れは早く、夏の曇り空は夕闇へと色を変えていく。

次は待ちに待った小田さんの出番なのだが、開始予定時刻を過ぎても始まる様子はない。

マイク、サウンドチェックが行われている中、今か今かと待ち続ける客席は既に総立ち、明らかに今までの出演者とは違うスタイルで待つ客席の様子は、最後尾ブロックにいた僕の目から見ても明らかだった。

そして、モニターに小田和正の文字が浮かび上がった瞬間、会場から起きた拍手はどの出演者の時よりも大きく、世代を超えて待ちわびた観客により「歓喜の号砲」が打ち鳴らされ、スポットライトに照らし出された小田さんの姿。


ギターを抱えた小田さん、この日の衣装は白シャツにグレーのパンツといった見慣れたスタイル。

会場のみんなが息を飲んだ瞬間、

「テレレンレーン」

僕が予想していたイントロが流れる。


『雨上がりの空を見ていた』


小田さんの声が空に解き放たれた瞬間、会場にどよめきが起こる。

透き通った優しい歌声、初めて小田さんの生歌を聴いた人のみならず、コンサートに何度も何度も足を運んだ人でさえ、自分の心の中の気持ちが知らず知らずに表現された証。

その瞬間から小田さんの歌の世界に引き込まれ、歌詞のひとつひとつが身体の中へと浸透し、血液の中をかけめぐり、脳へと伝わっていく。

これこそが小田さん最大の魅力であり、作り上げられる楽曲、そして歌声が長年愛される理由でもあると僕は思う。


『どうも~』

大きな声で挨拶をする小田さん。

『スキマフェス楽しみにして参りました。』

『今日は楽しく楽しくやりたいと思ってます。』


この日の為に小田さんに会いに行った人が多数いると思う中で、この曲の歌詞はプレイヤー側、オーディエンス側どちらの目線でも受け取ることの出来る曲。

本来はプレイヤー側の思いだけれども、それを深々と知るエピソードがある。

僕が大好きなスタレビの根本要さんが、夏フェスに参加する小田さんの体調面などを心配して

「小田さん、フェスとか大変でしょう?大丈夫なんですか?」

と、尋ねた時に小田さんは、

「要、断る理由が見つからないんだよ」

そう答えた事をライブ中のMCで話してくれた事がある。


その言葉の捉え方は人それぞれだと思うけれど、「オファー = 自分の歌を聴きたい人がいる」という解釈の中で、その人達に「会いに行く」という恥ずかしがり屋さんの小田さんらしい言葉だと僕は感じた。

だから、今日もその思いを伝えるためにステージに立っているんだ!と理解して、歌詞ひとつひとつを噛みしめながら聴いていた。


そんな2曲目「会いに行く」の歌い終わりに小田さんによるメンバー紹介も終わり、ここでホストであるスキマスイッチが登場。



スキマとのお天気の話の中で、長い沈黙が続く・・・

この事故レベルな場面に、会場の皆さんは「大丈夫かな?」って、なったと思うけれど、

『スキマには心から感謝しております』との小田さんの言葉に、スキマスイッチの大橋さんも「こちらこそ勉強させていただいてます」とのやり取りを終え、次の曲へと。


3曲目は切ないバラード「夏の日」


この曲が大好きな友達がやわらかい笑顔でしっとりと聴いている。それを横目に見ながら、星の見えない曇り空を見上げ、僕もしっとりと耳を傾けた・・・・




2018年9月、大阪城ホールでのコンサートに参加した僕は、歌いながら歩いてくる小田さんにマイクを向けられた。


『いつしか 眠りについた君を見つめれば キラめく星は 空にあふれている』


無我夢中で歌った僕の右肩を、優しい笑顔の小田さんがポンポンと叩く。

あの日の興奮は未だに忘れられなくて、イントロが流れると何度も何度もよみがえる。


そんな大好きな曲「キラキラ」が4曲目に歌われたが、歌詞が飛んだりして、少し残念な場面となってしまった。




ここで、改めてスキマスイッチが登場したのだが、先程のミスを気にしてなのか『これ以上やると恥をかくだけなので早く帰ります』と自虐的MCで笑いを誘う。


そして、期待してたスキマとのコラボ曲は「ラブ・ストーリーは突然に」


佐橋さんが作ったギターのカッティング音から始まる印象的なイントロ、ここから始まるラブストーリーを小田さんとスキマが歌いあげていく。

ステージ上をゆっくりと歩き、手を振ったり挙げたり、お辞儀をしたりと客席へのパフォーマンスもこなしていく。


みんなが知る代表曲は会場のボルテージを上げ、更に更に沼深く小田さんの世界へと誘(いざな)われていくも、歌い終わった小田さんの口から次の曲が最後になることを告げられる。



最後の曲は「今日もどこかで」


小田さんの歌声にあわせて、観客席からも小さな歌声が聴こえる。僕も大好きな曲なので、小さな声で小田さんの呼吸にあわせて歌う。


『誰かがいつも君を見ている』


サビの部分、会場が一体となり、ひとりひとりの手が右へ左へと美しい弧を描く。

その手の先に星の輝きは見えはしないが、きっと参加したみんなの笑顔はキラキラと輝いていたはず。

そして、これから先もその笑顔はキラキラと輝き続け、音楽という力のもとに自分らしく生きていく糧となる。



最後、歌い終わった小田さんが言葉を発する前、最後尾ブロックから僕が叫んだ『小田さ~ん』の声は、小田さんに届いただろうか?


そんな事はどうでもいい事だけど、小田さんの歌声、メッセージは会場にいた人だけでなく、小田さんを愛する人、音楽を愛する人全てに届いたと思う素晴らしい夏フェスだった。



そんな素晴らしい、僕が過ごした『夏の日』の記憶・・・・


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