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【感想】旦那デスノート現象を見つめた映画:犬も食わねどチャーリーは笑う【犬チャリ】

前置き


この映画を見てよかったと思いました。
制作に関わった人達は、"旦那デスノート"が何故生まれ、根付いたのかを見つめ、日本の夫婦について眼差しを向け、真摯に向き合った作品だと私は感じたからです。また、"旦那デスノート"という存在のことも暗に批判してるように捉えられる文脈もあって、私は、嬉しかったです。
それはそれとして
私は旦那デスノートって呼ばれない度にどんな場面でも「旦那デスノート」って言えと突っ込みます。野暮だろうとやります。
よろしくお願いします。

開幕、私は裕次郎の特徴を見て震えた。

裕次郎はホームセンターの副店長である。
一方、広人はマリッジブルーで悩んでいた。イカした弁当を作ってくれる妻が肉の塊に見えてセックスできないらしい。

裕次郎「そもそもセックスレクによるイライラや落ち込みは(中略)つまりセロトニンさえ増やせばセックスなんてなくていい」
(また始まった……という様子の広人)

おい
私と同じ考え方じゃねえか!(未婚の女だけど)

裕次郎(ダラダラ、セロトニンについての豆知識を語る)
(はいはいという風の広人)

インターネットの検索欄に打ち込まれた『旦那』の検索サジェストを見て裕次郎は呟きます。
裕次郎「旦那 死んで ……死ねじゃなくて"死んで"なんだ」

目のつけどころがいいね。

広人「妻の意に反して、病気とか事故で、"死んで"しまえってことですよね?」
裕次郎「……こわっ」

夫は夫なりの悩みがあるが、
日本の妻→夫への眼差しの闇の方面がネットで炙りだされているという説明パートである。こういう話TVで見たな。

ミノヤマ「うちは5年よ セックスしてない年数」

異性から突然性のカミングアウトされる気持ちになれやこのおばさん。
ほんでこのオープンミノヤマ、旦那デスノートを紹介する。

おいおいおい待て待て待て。
いいねボタンが普通のいいねボタンになってるなぁ?
元ネタ、つまり現実にある方は

死ねばイイね!です。


現実の旦那デスノートより

HN、チャーリーの投稿が流れる。それは妻の日和のものだった。

日和「(前略)ご注文のキーマカレーに 栄養満点冷凍マウスのミンチを入れて差し上げます」

やべー!!!!!!!!きったね!!!!!!!

キーマカレーに、チャーリー。チャーリーとは、裕次郎の家で飼われているフクロウの名前だった。
ので……裕次郎は察してしまった。

ここでイカした感じで
タイトルが入る。

いや、旦那デスノートって、書けや。

予告でも出てたが、日和はコールセンターで働いてた。これはしんどい仕事だ。コールセンターというのは、問題がなかなか解決しなくてイライラしてる客に暴言を吐かれることもある。問題解決の道までを、自分で導き出せない人は存在する。機械とかムズいよな。わかる。(クソ客に向かって)

ここで彼女の上司、葛城登場。別の人を叱る。
「何回同じミスすれば気が済むわけ?」

はい。私は仕事で何回でも同じミスをする人間です。私は特定の傾向を持った仕事の習得が非常に遅いです。
ちょっとまってくれ。これって面白い映画じゃなかったの?予告詐欺なの?(開始13分)
しんどい社会しか見えねえんだけど。オープンミノヤマでしか笑えなかったんだけど。
(ここで私は外をぐるぐる歩き回って気持ちを落ち着けました。
でも私の心には本物のデスノートとLがいるので、続きを見ることが出来ます。良かったね。)

日和~~~!!!人が怒られてるところ見るのってすっげえしんどいよな!わかる~!

日和「私、"いい意味で"って言葉苦手なんです。ほんと都合のいい言葉だから」
まじでごめん。(常用者)今後はうまく言えるよう頑張るわ私……。

葛城、こいつはクズ男です。女の身体を急に触り、嫌だといってる言葉をあえて使う。
日和ドン引きです。私も引いたよ……。

そして場面は変わり、夜、日和は、堀越という男と話していた。
塚越「"旦那デスノート"の投稿を是非うちで出版させてほしいんです」でたわね。本あるよね。私は新品で買ってやりました。急ぎで欲しかったからです。
堀越「あなたにしか書けない文章で――日本中のダメ旦那を成敗しませんか?」
すげえ!!!!!!悪魔の囁きってやつじゃん!!!
なんかさ、自分の思わぬ才能が開花したとか感じた時ってさ……めちゃくちゃ気持ちよくないですか?
社会に認められたって感じて嬉しいですよね。わかる。
日和「考えさせてください」
お前……真面目だね。好き。

一方、裕次郎は茫然としながら投稿に目を通す。恐らくチャーリー氏によるものです。自分の悪気ない行動がすっごい敵視されて文章のネタにされるキツさ。私もXのアカウント晒されたことがあるのでわかるよ~。
あと私は靴下をしょっちゅう失くす人間です。うえーん(泣)

ところで、裕次郎はシゴデキ副店長です。多分本当にホームセンターの物品が好きなんだと思います。私この店員さん居たらすげえ嬉しい。これが彼の才能なんですね。でも家ではこの才能は全く発揮されないんですよね。

日和のターン。友達と話してます。

日和「晶…私、本出すかも。(中略)"デスノート"の」
旦那デスノートって書け。

晶「ほんとに?えっ すごいじゃん?」
日和「出版社の人が私をメインにするからって」

この映画におけるデスノートは、私が愛してやまないDEATHNOTEではありません。旦那デスノートの、デスノートです。晶は日和が旦那デスノートというサービスを利用していることを知っている。ちなみに晶は子持ちです。子供の面倒見ながら話してます。

その夜。
【悲報】日和、義母より孫ハラを受ける。

クソ旦那のお母さんから孫見せてって言われるの、きつそう。
ただでさえ産むの大変なのにな。産んでなくても大変なのに、なんでなんだろうな。私達って。

塚越からの電話。
塚越「(略)今晩、"デスノート"の出版メンバーで集まるんですが……」
ちゃんと旦那デスノートって言え。略すんじゃねえぞ。

26分43秒……ここで私は寝込んでしまいました。
これから偽物の"デスノート"の連呼が始まるかもしれないという悪い想像をしてしまったので。
言葉というものは、時代と共に変わります。
また、ネットでは突然ミーム化されて全く別の意味を持ってしまう、みたいなそういうのもあります。
私もこの片棒を稼ぎ、同じ罪を背負った覚えがいくらでもあります。私はネットミームが好きだから。
デスノートは死のノートではなく、恨みつらみを書いて人を呪うための場所……という風に今では変わってしまったのだろうか。
でも、これを私は黙って見過ごせない。たとえ徒労に終わろうとも、時代の流れに飲み込まれようとも。
私が馬鹿にされようとも、デスノートは、顔と名前があれば絶対に死ぬ死神の為のノートであってほしい。

何故なら、本物のデスノートは、とても美しいことを私は知っている。
私はデスノートに立ち向かったキャラクター、そして彼らを生み出した制作陣の努力の結晶を魂に刻んでいる。
この旦那デスノートのことを、私は自分が死ぬまで偽物言い続きます。それ以降の歴史は次の人が作るので、わかりません。

本物のデスノートがどんなものか気になる方は、私が実際に使った形跡があるのでこちらをご覧ください。

作品に戻ります。

さて、日和は夕飯を作ってる間に裕次郎からの『今晩飯いらねLINE』が来たので、塚越の要請にこたえることになりました。

突然、"旦那デスノートのイカれたメンバーを紹介するぜ!!"が始まります。
ここ面白い。いい演出だと思います。

ところで、私はアマプラで字幕を付けながら見ていますが、
みんなハンドルネームで集まってるので喋る度にハンドルネームが出ます。
(猛毒散布)が突然表示されたときウケました。
そんな個性豊かな女達が捲し立てるように旦那の悪口をいいます。姦しいとはまさにこのこと。日和、ドン引き。あなたの感性を私は肯定したい。

裕次郎のターンに切り替わります。
彼は昔を思い出しました。
色々あって、カレー雑学を披露しています。
やっぱこの人は、ASDを意識して描かれていると見ていいと思うな。
そして「あっ……」となって自虐します。あるあるすぎ。
んで、めっちゃ話したいお話聞いてくれると、それだけで嬉しいよね。わかる。
そんな過去を思い出しながら裕次郎がカレーを食っているのを、彼の勤務先で彼のことをチラッチラチラッチラしていた女が見つけます。
鈴見汐音さんです。
鈴見「あ!副店長!」
ここの演出いいな~すごいと思う。

裕次郎は日和と結婚してもうすぐ4年かぁ。

鈴見「今時 結婚が女にとって最上の幸せだなんて思ってません」
こういう価値観や主張が出るようになったのは、私の感覚だと2010年代後半くらいかなぁ?もうちょっと前からかもしれない。
でもその価値観は、今当たり前のように主張、共有されていると私はSNSを見ていて思います。

日和のターン。
おい日和……お前マジか……。

女達が受ける男や社会からの無意識のしわ寄せやプレッシャーを描きつつ
男は男で悩んでんだよなぁ~みたいな。
答えのない問題をこの映画では描いているんだなぁと思いました。

日和「"デスノート"で吐き出してさえいればそれでいいんです」
旦那デスノートって言え。

?「"デスノート"のこと(略)」
旦那デスノートって言え。

裕次郎のターン。
汐音、やっぱりカスだな。どんな理由があれど、既婚者を狙う独身って私はカスだと思います。
なんていうかこういう風に、悩み苦しむ人の心の隙間にそ~っと入ってきたのが現実にある"旦那デスノート"なんだろうなって思います。例えタップしたのが、自分だとしても。
……汐音は男版旦那デスノートの暗喩やろこれ。

そこに日和が合流し――不協和音が始まろうとしていた。
この映画、ここから面白くなる(確信)

とある様子を見た日和。
日和「やっすい」
すごい、音程が完璧すぎる。100000点です。素晴らしいね。

日和の上司葛城と日和の会話。説明口調だが、なかなか面白い。

過去の回想。裕次郎と日和のなり染め。
裕次郎は不器用なコミュニケーションを取るが、彼なりの実直さを出せる人だ。だからこそ、日和は惹かれたのである。
でもなんか、結婚してみたら「おもてたんと違う~!!!」てなったんだろうな。
結婚生活はASDには難しいと思う。近所の人や互いの実家や親戚との、繊細な人付き合いを、求められる。
裕次郎の実直さは、繊細さは無いが、良くも悪くも、人の心を大きく動かす力がある。
……とこの映画では描かれている。(クソポジティブ思考)

日和は悩んでいる時に、雑学王裕次郎と出会い、そのしょーもない雑学で笑って、力が抜けて、心が救われた。
裕次郎も自分なりのコミュニケーションをちゃんと受け取ってくれる存在と出会えて、さぞ嬉しかったのだろう。
そしてこの時の成功体験を覚えていて、日和の元気がない時に雑学を披露するのである。

そして時は現在に戻る。

裕次郎「このチャーリーって日和なんだろ? こんなひどいこと書いといてよくいつも笑ってられるよな」
日和「こんなこと書いてるから笑えてんのよ」

あ、予告で見たやつだ。 開 戦 。 (ホラ貝の音)

裕次郎「(前略)あれだろ なんかどうせ "いいね"とかもらっていい気になってんだろ?」
日和「こんな汚い書き込みしてる私を みんなが肯定してくれるんだよ!

そう、旦那デスノートというサイトには孤独じゃないことを教えて貰え、更に承認欲求が満たされるシステムが搭載されている。
それが『死ねばイイね!』である。表現が過激だからこそ、より一層、その力強さや結束力、中毒性が強いと私は見ている。

しかしこの映画では普通のいいねにされている。大衆受けがいいように、丸くされている。

日和、ごめんな……これがASDは共感性に欠けるってことだ。異性なら尚更だ。
日和と裕次郎の過去の問題、私なら裕次郎と同じ選択肢を取る。
余計なこと言って傷つけるくらいなら、と。裕次郎もきっと、過去にそういうことがあったはずだ。余計なこといって傷つけたと感じた経験が。

日和のターン。日和はまだ、本を出すか悩んでいた。
晶「"デスノート"勧めたのも私なんだし」
旦那デスノートって言え。

あー、これは日和のキレ方、ちょっと理不尽なところがあるね。
日和は日和で不器用なところがあるのだ。これに関しては、私はうまく言語化出来ないな。

そして日和は、決断した。

こっからの演出面白いな。フクロウのチャーリーが可愛い。

場面転換。
ごめんなさい。人の不幸を描いてる場面なんだけど、めちゃくちゃ面白く演出されてるから、普通に笑います。
草。

?「"デスノート"見て結婚に絶望しちゃってんだよね」
旦那デスノートって言え。

そりゃまぁ、そうだろうな。私も登録者の投稿に関してはタイトル以外読んでいない。
全く興味がないと言っていい。
私が興味あるのはあくまで運営者のみであって、願いは彼からデスノート・死神という表現を取り上げることのみである。
運用されているコミュニティに集う人々の存在を肯定は出来るが、寄り添うつもりは一切ない。
閑話休題。

そして地獄みてえな場面の完成。面白過ぎる。これ、フィクションだから笑えるんだよな。

この地獄を生み出してるのは、女性特有の重い事情を受け止める覚悟をしなければならない男性陣に理由があると、女性の私は考える。
なんだと思いますか?実際に映画を確認して見てみてください。私は"この女性"がこうなる理由がわかります。だって私女だもん。

なんだこのシュールな地獄絵面。面白過ぎるわ。なんかもうこれ見れただけで良かったと思うくらい面白い。

あ、あかん!!!!!!
こういうのASDが苦手な場面や!!!ASDはこういう状況に弱い!!!!!
裕次郎頑張れーーーーーー!!!!!!!!!!!

ああ。凄い。
素晴らしいなこの映画……。
制作陣ありがとう……。(拍手)

そして衝撃の事実が明かされる。
お前これフィクションだから無罪で済まされてるんだからな。
地獄から、脱出――。

しかしこの映画は、まだ続きます。

いやこの映画面白い。この世の不条理さをこういう形で描くの、見てて楽しいし上手いと思う。世の女性達が抱えているもの……固定観念……常識と名付けられたもの……本当に複雑に絡み合っている。
そしてお互いと、何より自分自身。
日和と裕次郎はまだ、戦い続けなければならなかった。

裕次郎とオープンミノヤマの場面。
ミノヤマ「"デスノート"ってさ――」
旦那デスノートって言え。

そしてなんやかんやあり――

制作陣「誰かと共に生きるって、こういうことだと思わない?温かい祈りを込めて」

映画終了

結論


この映画は面白いです。星5評価するなら、星4です。見てよかった。最初は怖くて、デスノートって呼ばれてて辛い思いもしたけど、ちゃんと最後まで見てよかった。そんな説得力のある作品です。
しかし
現実で暮らす私達は、今も女性の弱った心に入り込もうとする"旦那デスノート"、もっと言えば更に追い打ちをかける死神の声というブログの存在を許してはいけないのである。
とはいえ
コミュニティを取り上げることのリスク、また彼女達の心情を思うと、
やっぱり私はサイトからデスノートに関する表現の使用が失くなるを願いにしていこうと思った。
あとは頭のいい人に託します。

それはそれとして
この映画も、結局は予告という形で旦那デスノートの宣伝と本質を隠すようなことをしてしまったことを私は忘れていない。


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