
ズレて並んだフォークとナイフ
わたしは学生バイトから始まって
卒業してからも長年ホテルなどで
婚礼やパーティのサービスをする仕事をしていた。
結婚式のサービスというのは
当時のわたしにとっての天職だったようで
10年近く勤めて、
半分以上は会場の責任者として
お仕事をもらえるくらいに
とにかくその仕事に没頭していたし
たくさんの思い出がある
そんなわたしのサービス時代の体験の中でも
すごく印象に残っていることがある。
婚礼などのフルコースの時は
ナイフやフォークをキレイに
テーブルセットをするのも
サービスマンの仕事なのだけど
ある時
あるベテランの先輩から
こんなセットは全然ダメだって
おこられたことがあって
で、ちゃんと見本を見ろよ
って言われたので
一生懸命に
そのお手本の通りに並べているつもり
なのだけど
全然オッケーが出なくて
結局、その先輩が直してくれたんだけど
やっぱりどう違うのかわからなかった
それからも新米だったわたしは
いろんなところでやり直しを喰らって
その度に目を凝らしては違いがわからない
という事を繰り返してきたのだけど
何年か経って、
やり直しを言われなくなって
今度は自分が新人スタッフの指導をする立場になってみたら驚いた
すごくガチャガチャに見えるのだ
で、慌てて指導をするんけど
当時のわたしのように
やっぱり新人さんは
ピンと来てないようだった
わたしはその子の気持ちがよくわかった
過去の自分がそうだったから
これ以上言って、仕事が嫌になっても
かわいそうだということで
その時はいったんよしとして
後から手直しを加えて
その場は終わりにしたのだけど
でも、今の自分からすると
どう見ても揃ってなくて気持ちが悪いし
それがわからなかった時の感覚は
もうわからなくなっていた
同じものを見てても
人によって見える世界は
全然違うことがあるんだ
っていうことに
ものすごく新鮮な気持ちで
気づいた瞬間だった
そして、それは訓練で
感性とか能力を育てることで
世界が変わることもあるけど
人によってはその能力が全くなくて
どんなにがんばってもちっとも見えるように
ならない世界があるってことも知った
1mmのズレがハッキリと見えて
ものすごく気持ち悪く感じるし
その1mmを補正していって
完璧に近づけようとする世界がある
主にこれはプロの世界だと思う
その一方で
10cmズレてたって全くわからない
気にならない世界線の人もいる
いい悪いとかじゃなく
そういう性分っていうことなだけなんだ
そして、男女の世界って
こういうお互いには気づかないズレが
あちらこちらにある世界のように思う
男が考えてることが女には理解できないし
女の当たり前が男にはちっともわからない
そのことを責めていたらキリがなく
終わらない戦いの始まりの世界
もちろん、男女の性質も
それぞれグラデーションだから
すごくわかりあえる男女もいるし
同じ女同士でも世界が違う人もいる
だから、余計にわかりあえないことを
すごく悪いことで
治すべきバグのように感じてしまうけど
結婚式のテーブルに並んだ
フォークとナイフみたいに
本来持ってるスペックと役割が違うだけだし
別に美味しい食事をするのに
フォークとナイフが
そろってなくちゃいけないわけじゃない。
だけどそれでも
フォークとナイフを上手に使って取る食事は
なんだか世界に華やかさと心の豊かさと
可能性の広がりをくれるように
そのことに気づいて
お互いの違いを赦しあって
尊重して支え合ってフォローしあって
この世界で1番身近な異種族を
愛していくこと
それが世界平和の第一歩で
この世界を愛と豊かさで
いっぱいの祝宴で満たしていく
秘訣かもしれないって思うよ
