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近所のおばちゃんとエリザベス女王。

この日曜、英国女王のプラチナ・ジュビリーの様子をYouTubeで観ていました。『くまのパディントン』とのティータイム、2人がティーカップとスプーンで「ズンズン チャッ」とやって、QUEENとアダム・ランバートのステージへと誘われました。合間に2012ロンドン五輪の女王と007の共演(ついでにミスター・ビーンの幕)も見直してみたりして、「70年間女王でいるって、なんてタフ!」という感想に尽きました。

それから買い物に出かけると、商店街で知り合いのおばちゃんに会いました。ずっと山のふもとで、ひとりで焼肉店を営んでいたおばちゃん。再開発で店を移転してからは、お弁当と丼だけの焼肉店をやっていました。850円のカルビ弁当は、20cm☓17cmほどのアルミのパックにガスの炊飯器で炊いたホクホクの白飯を敷き詰め、その上に自家製タレをかけたカルビをぎっちり載せる。合わせのキャベツは別パックに入れて、たっぷり4分の1玉分くらい。さらに自家製タレの予備も付けてくれます。甘みが程よいコクのあるタレは、大量のニンニクを刻んでいるところは見たことがありますが、何がほかに入っているかは知りません。これをセットにして、「食べきれんかったら冷蔵庫に入れて、食べる時にお皿に移してチンすればいいわ」と2食分超のボリュームのお弁当を持たせてくれました。このおおらかなおいしさ。『ごはんを大盛りにするおばちゃんのいる定食屋はおいしい』という書籍* なかったっけ。

2017年のカルビ弁当。グーグルフォトから見つけた。

しかし5年ほど前に店をたたんでからは、おばちゃんには町でたまに会うくらいになってしまいました。この日曜も久しぶりの遭遇。毎回カートを押しています。この日2回めのリハビリ帰りだったそうで、聞いてみるとひとりでスーパーに行って帰ることがリハビリ。自主リハビリでした。「おばちゃん、もう90になったわー」と元気な大きな声で教えてくれます。私は「おばちゃん、エリザベス女王は96よ」と頭にあったことを唐突に伝えてしまった。リアクションはなかったわ。でもさすがだな。85歳くらいまで現役で、お店の売りは上質なお肉だったので、業者の方との信頼関係を維持して(業者の方が代替わりしている可能性は高い)いた。今も自主リハビリを続け、町を歩けば焼き肉店のお客さんだった人から声をかけられる。

このおばちゃんとの最初の出会いは、20数年前、タウン誌の取材で私がお邪魔した時だったと思う。夏のことで、お店に着くなり、麦茶と水ようかんを出してくださった。水ようかんをよく覚えている。「取材」ということで、ちょっと構えていたんだと思う。その構えをもてなしに変えて、背筋を伸ばして待っていてくださった。

アガサ・クリスティのどれかのミステリーに、「年を取った人が弱いなんてとんでもない。彼らはいろんな出来事を勝ち抜いて(やりぬいて)きた戦士なんだよ」というセリフがあって、賛同します。以前、取材させてもらった旅館の女将、80歳なので疲れさせてはいけない、と恐る恐る伺った当時30歳代半ばだった私。しかし取材を終えて、へとへとになっていたのは私だけでした。

エリザベス女王も焼肉店のおばちゃんも旅館の女将も、本当にタフな戦士だと憧れています。

※『ごはんを大盛りにするおばちゃんのいる定食屋はおいしい』は、正しくは以下の通りです。著者はなんと島田紳助さん。


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