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When October Goes / Jazz de 恋バナ No.75
「ムーン・リヴァー」、「枯葉」、「酒とバラの日々」など、数多くの不朽の名曲の作詞者、ジョニー・マーサー。1976年に脳腫瘍で亡くなった彼は、いくつかの未完の歌詞を残していた。晩年のマーサーと交流があった歌手バリー・マニロウは、マーサーの妻ジンジャーからそれらを託された。1984年、マニロウは「When October Goes」に自身のメロディをつけ、10枚目のアルバム『2:00 AM Paradise Cafe』に収録した。
10月が過ぎると雪が舞い始め、煙る屋根の上を、飛行機が飛んでいくのを見つめる。黄昏の空の下、子供たちが元気に家路を走る。ああ、なんて無邪気なんだろう。かつて私もそうだったのに。そして10月が過ぎると、同じ夢を見る。あなたが私の腕の中にいて、幸せな年月を過ごす夢。私は顔を背け、抑えきれない涙を隠す。ああ、10月が過ぎていくことが、こんなにも辛いとは。
NYブロードウェイで働き始めたばかりのジョニー・マーサーは、22歳でコーラスガールだったジンジャー・メルツァーと結婚。それから10年が経ち、キャリアの絶頂期を迎えたマーサーは、当時19歳だった国民的女優ジュディ・ガーランドと道ならぬ恋に落ちる。周囲の猛反対もあり、二人は破局。ガーランドは別の作曲家と結婚してしまう(すぐに離婚)。未練たらたらのマーサーは、いろんな楽曲を通じてガーランドへの想いを綴ったとされる。
「When October Goes」が書かれた時期は定かではないが、亡くなる前年の11月に書かれたものなのかもしれない。偉大な作詞家が過ごした最後の秋、窓から見えた情景に、今は亡きガーランドを想ったのかもしれないと思うと、なんとも胸が締め付けられる。そして、そんな想いを知りながらも、最期まで添い遂げた妻ジンジャーの献身愛にも涙。
川本睦子
Way Out West 2024.11月号
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