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What Is This Thing Called Love? / Jazz de 恋バナ No.69

 生涯で800曲以上もの曲を作ったコール・ポーターの初期の代表曲のひとつ、「What Is This Thing Called Love?(邦題:恋とはなんでしょう?)」。1929年のミュージカル「Wake Up and Dream」の挿入歌として歌われ、後にジャズミュージシャンたちが数多くカバーし、ジャズ・スタンダードとなった。


 僕はつまらない人間だった。ある日突然、”恋”が窓から飛び込んできて、退屈な僕の心がワクワクした。幸せな時間も束の間、”恋”は去ってしまった。この奇妙な気持ちはなんだろう。誰にこの謎が解けるのだろう。なんだかコケにされてしまったのかな。ある素晴らしい日にあなたを見た。そしてあなたは、私の心を奪って、捨ててしまった。天上の神に問いかける。”恋”とは一体なんなのか?

 「恋」も「愛」も英語ではどちらも「Love」になる。直訳すると「これは愛と呼ばれるものですか?」になるが、平凡な人生に突然やってきたトキメキ感情に振り回される様は、双方向性の「愛」ではなく、「恋」が正解だろう。手持ちの新明解国語辞典(第七版)で「恋」を引いてみる。

【恋】特定の異性に深い愛情を抱き、その存在が身近に感じられるときには、他のすべてを犠牲にしても惜しくないほどの満足感・充足感に酔って心が高陽する一方、破局を恐れての不安と焦燥に駆られる心的状態。

 楽曲の方も、短い曲ながら何度もキーが変わり、長調と短調を行き来する複雑な恋愛模様を描いている。私のおすすめは、サラ・ヴォーンが1963年に録音した『Sassy Swings The Tivoli』のバージョン。スリルと疾走感が堪らない。

川本睦子


Way Out West 2024.6月号


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Jazz de 恋バナ|川本睦子
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