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The Christmas Song / Jazz de 恋バナ No.54

Way Out West 2022.12月号

 暖炉には焼き栗、鼻先までかじかむ寒さ、何処かから聞こえてくる賛美歌、ぶくぶくに着ぶくれた人々…。

 みんな大好きメル・トーメ(vo)の「ザ・クリスマス・ソング」の歌い出し。1945年の真夏にメル・トーメが作曲家ボブ・ウェルズの家を訪ねた時、涼を取る手段としてクリスマス・ソングを作ろうと、たったの40分で曲が完成したというのは、有名なエピソード。そして1946年にナット・キング・コールによってリリースされ、今日まで歌い継がれるヒットソングとなった。私は Verve のクリスマス・オムニバス(1996)に入っている、シャーリー・ホーンのバージョンが好き。

 七面鳥やクリスマス飾りなんかは、寒い季節を明るくするための装飾だってみんな知ってる。ちびっ子たちが目をらんらんにさせて、眠りにつけそうにもないね。だってサンタさんがプレゼントをたくさんソリに乗せてやって来るんだもの。子どもたちはみんな、本当にトナカイが空を飛ぶのかを確かめたいんだ。こんなにみんなが楽しみにしているからこそ、このシンプルなフレーズを伝えたい。言い尽くされた言葉だけども、1歳から92歳までの全ての子どもたちに何度だって伝えたい。
 メリークリスマス!

 これは恋愛の曲では無い。しかし、この曲には深い人類愛を感じる。曲を作ったメル・トーメはユダヤ人。ユダヤの人たちはクリスマスの時期には「ハヌカ」という独自の行事を行い、クリスマスを祝うことはない。だからか、この曲の歌詞には宗教色はなく、季節の様子と人々への愛が歌われているように思う。数ヶ月前にナチスドイツが降伏し、ようやく第二次世界大戦が終わろうとしている時代背景も無関係ではないかもしれない。

 兎にも角にも、メリークリスマス!今年も色々あったけど、みんな頑張って生きました。来年もよろしくお願いします。

川本睦子


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Jazz de 恋バナ|川本睦子
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