見出し画像

お洒落とは無縁な僕の生活(22)

 令和五年三月三十一日(金)

 今日は久しぶりに友人と映画を見に行くことになった。少し前に話題になっていたインド映画の『RRR』である。ミニシアター系の映画館で復活上映をすることになったらしく、見逃していた僕と友人で見に行くことになったのだ。
 中毒になる人はなる映画らしくて、とある知人は「もう三回も見に行った」と言っていた。それだけハードルは上がってしまうが、いずれにしても楽しみだ。
 昼間は台本を執筆し、パステル画を描いた。ここ最近は仕事の台本がいまいち捗っていない。やっぱり「やるべきこと」になってしまっているからか。自主的にやる「やりたいこと」とはまた違っていて、モチベーションが上がらないことが多い。もちろん、軌道に乗り、やる気がぐんぐん上がってくるときもあるが、いつもではないのだが困りものだ。この日はなんとか少しだけ書いた。それだけでも自分を褒めたい。
 パステル画はより色使い、細かな描写が出来るようになってきている気がする。自分の絵を見て惚れ惚れする。うぬぼれかもしれないが、それが大事だ。「悪くないじゃん」とほくそ笑む。
 お昼過ぎに家を出て、街中で友人と合流し、映画館に入った。この映画館は床材などにヒノキを使っている映画館で、館内にヒノキの香りが漂っている。それが心を落ち着けるが、いかんせんマスクをしながら映画を観るのはさすがにちょっと辛いので(映画は3時間ほどある)、上映中だけはマスクを外した。
 一応、すでに規則的にはマスク無しでもいいのだろうが、誰一人としてマスクなしで歩いている姿がないため、そこは日本人的空気を詠む感覚で、マスクをしてしまう。もっと自由にマスク無しで出歩けるようになれば良いのだろうけど、きっと日本は諸外国よりは一年二年ほど遅れるのだろうな、と感じている。それはそれで、慎重なのは日本の良さだとも思っているけど。
 映画が始まると、その勢いにすぐに飲まれた。まさに勢いで作っているような映画。いろいろと突っ込みどころはあるけど、それを帳消しにしてしまうほどのパワー、リズム感に溢れている。人物も(特に主役二人は)面白くて、なるほど人気が出るのもうなずける作品だった。つい笑っちゃいそうになるが、それも含めてこの映画の良さなんだろう(さすがに『INTERVAL』とでかでかと文字が出たときには吹いてしまった)。
 映画を終えたあと、ピザとパスタの店に夕食を食べに行く。そこで映画について語り、色んな話をした。ちょっと愚痴めいたことも言ってしまった。その友人は創作に関して理解の深い人で、僕の話をよく聞いてくれる。だからついつい、こっちもたくさん話してしまうのだ。もちろん、その人はその人で、別の悩みも抱えている。どちらも基本的には人生は楽しく謳歌しているが、ときにこういうことを考える、という悩みというのか、愚痴というのか、思考を話すことはある。そちらどちらも、分かるよ、とうなずく。それが心地良い。この世界でひとりぼっちじゃないことを実感させられる。
 友人と別れ、帰路につく。その最中も、話していたことを反芻して、いろいろ考えていた。
 やっぱり作っている時間が幸せだ。評価とか、上手い下手とか関係なく、ただ何かを作っている時間。その時間こそに、僕の幸福はあるような気がした。もちろん、それ以外にもこうして友人と語らったり、映画を観たり、ドラマを観たりするような時間にも。
 そういう時間を大切にしたいと思えた、夜だった。

パステル画91枚目「車窓の風景」

いいなと思ったら応援しよう!