写真にっき06
6月末のインドネシアはかなり寒く、朝日が出るまではダウンジャケットを着て、震えながら待った。
日本での朝日は何回も見ている。朝帰りの胃を焦がすような朝日だとか、正月の地元の何年も変わらない朝日だとか。
周りに日本人はいない。いるのはここがどこなのかイマイチわかっていない(わたしも含めて)観光の多種多様な人間と謎深き仏教遺跡が作る異様な雰囲気。
バックパッカー宿の使用人にボロブドゥール遺跡に行きたいと伝えたら、連れてってやるよ!明日、朝、4時だ!と言われただけだった。
英語がほとんど伝わらないけど、初対面からあったかい人だったから何も疑問を持たなかった。
まさか宿からバイクで1時間半も走るとは思ってなかったけど。
バイクが駐車場っぽいところに入って、停まった。
ここ、歩け!ここ、朝日!と言われ、歩いて登り始める。
そこで使用人に見送られた。
分かれ歩き始めると、途端に不安になった。しかも1人で真っ暗の山道を登ってる。
よくわからんけど、朝日が見れるらしい。
言われるがままに1人で20分程トレッキングをした。外灯がない。本当に真っ暗だ。足元が見えない。ひょっとしたら使うかもしれないと放り込んでいたポケットライトに自分は天才だと思った。
どんつきまで登ると人が沢山いたからそこに混ざった。
ここにあたしを知る人間は誰一人いない。心細くなった。本当に頂上なのかもわからなかった。みんな声を殺し、ヒソヒソ話をしていた。
ヒソヒソ話をする相手がいないからますます心細くなった。
誰かが側で寝ていて、先に起きてしまったので気を使ってボリュームを下げているけど特別な何かがこの先に待っていて今日は寝起きからテンション高いって感じの、それも冬のこしょばくてシャンとした、そんな空気だった。
空が白くなってきた。
タバコを吸いながら待った。
空が少しずつ、スピードを上げて色を変える。
出てきた太陽はとても、とても、ものすごく、静かで、暖かかった。