重量オーバーと心のオーバーキャパ:シドニー駆け込み移住者の帰国奮闘記
3か月しかシドニーに住んでいないのに突然1ヶ月も日本へ戻ったワタクシ。
日本で家族・親戚、そして友人と時間を過ごし、物資調達に奮闘し続けた次第であるが、帰りの日が近づくたびに不安になることがあった…
…それは…
・・・預け荷物の重量である。
後先考えずドッサリあれもこれも買込んだワタクシ。まるで何かにとりつかれたように一心不乱に買い物かごへとブツを詰め込むワタクシ。毎回の買い物の量は少なくとも、一つにまとめれば膨大な量になり重量オーバーにならないか、通関で止められないか等様々な懸念を抱いていた次第である。
特にオーストラリアの通関は非常に厳しいと聞いており、香港から移住をした際も持ち物について相当な懸念を抱いていた。今回もサプリや常備薬など、様々な種類の錠剤をドッサリ持ち込み、何の薬かわかるよう英語の説明も準備はしていたが、没収されたら…などと勝手に心配を続けるワタクシ。
また、前途の通りワタクシはまだ3か月しかシドニーに住んでいないのに、そんな時点で1ヶ月も日本へ戻ってしまったものだから、シドニーに対し全く地元感がない。なんなら、移住前の「新しい街でちゃんとやって行けるだろうか」というソワソワ感に襲われる羽目になるのである。
画して、夜中出発の飛行機に乗り込みシドニーへと旅立ったワタクシ。オフラインタイムをこれでもかと楽しむため、あらかじめダウンロードしていた映画をシコタマ見るつもりが、
…ふたを開けてみれば約10時間のフライトで7時間は眠り続けた。
ときに、香港行きとシドニー行きで飛行機の雰囲気はびっくりするほど異なる。香港行きの場合、手荷物が一人分の制限を倍くらい上回るような大量の荷物をもって現れる乗客が大勢いる。当然自分の真上のキャビネットは他人の荷物に占拠されるため、皆我さきにと搭乗を試みて、我先に荷物をキャビネットへ押し込もうとする。そのキャビネット争奪戦はまるで戦場である。
一方シドニー行きではそこまで驚くような荷物を持ち込む人たちは見受けられず、且つ、乗客も特にピリピリもせずゆっくりノンビリ譲り合って平和に飛行機に乗り込む。
そしてそれは下りるときも同様である。
香港便の場合、我先に降りようと、着陸後ベルト着用サインが消えると、一斉に通路へとなだれ込み、荷物を下ろし始め小競り合いも生じる。
しかし、シドニー便の場合、とりあえず荷物を降ろしてみようかな~という人もいれば、扉が開くまで座っててもいいか~という人もいて、とても平和に事が進む。
シドニーへ無事たどり着き、「医薬品だの違法品だのの持ち込みがある」という欄にチェックを入れ、申告するレーンに並んだワタクシ。何故、違法なものと医薬品が同じカテゴリーにされていたのかいささか疑問ではあるが、あらかじめ、薬、サプリ、お菓子、パンなど、一つの手提げ袋にまとめて挑んだ。
丁度目の前で、アジア系の声のバカでかいおばちゃんが食料品の持ち込みでバトり、他の荷物もあけてすべてくまなくチェックされているのを目撃し、冷や汗をかくワタクシ。
すると、検査のカウンターのある列の段階で、申告書を見せると「何を持ってきたんですか?」と聞かれ、スッと一つにまとめた手提げを提示したワタクシ。
えぇ、煮るなり焼くなり好きにするがいい!
と、腹をくくったのもつかの間
「フム・・・出て良いですよ」
と言われ拍子抜けするワタクシ。
「え、、、でも・・・え?」と、戸惑いながら念のため、検査カウンターのおばちゃんに話しかけるも「だからもう出て行っていいよ」とあしらわれる始末。
一方で申告ない人たちは、大勢列に並び、犬に臭いを嗅いでもらうのを待っているのだが、ワタクシは手提げにまとめたものをチラ見された程度で、残りの荷物は検査すらされてない。
なんなら、申告ない人たちよりもとっとと簡単に出され…
ちょ、チョット!このサプリだと言って持ち込んでいる錠剤が何か…イケナイ奴(雑)だったらどうするつもりよ!!
などと思いかけたが別に不服があるわけでも、悪いものを持ち込んでいるわけでもないのであるが…ただ、これまでの不安は一体どこへ…という無駄にやるせない気持ちに苛まれるのであった。謎
空港から脱出し、岐路につくも、やはりまだ地元感がなく、大丈夫かなぁ・・と心配になるワタクシ。
駅のエレベーターで、たまたま乗り合わせたおばちゃんがフレンドリーに話しかけてきたり、別の駅で同じく乗り合わせたおじちゃんが話しかけてきたりするのを見て、やっぱりここは心良い人たちが多いなぁ…と実感し、あらため、この街にお世話になることを意図したワタクシ。
しかしそんなワタクシも、さすがに自分の家の近くまで来ると不思議と「地元に戻ってきた感」が芽生えている事に気が付き、少しずつ自分の新しい居場所が出来ているんだなぁ…と思った今日この頃なのであった。