外出できない余暇を豊かに過ごすたった一つのコツ
外出できず、普段と違う過ごし方を過ごしている方は多いだろう。特に在宅ワークになった業種の方々はデスクとバスルームとベッド以外の移動がない日も多いと聞く。そういったストレスフルな日常を過ごされている方々に、まずは医療従事者としてお礼を言いたい。あなた方の在宅ワークにより、社会に広がる感染の可能性は僅かとはいえ確実に減っているのだ。
だから今回はそのお礼に、行動の自由がなくても、充実した余暇を楽しめる方法をお伝えしたい。これを読んだ人がより豊かな自宅生活を楽しみ、広げ、あわよくば物足りなさを感じて不要不急の外出をしている方の自宅ライフを豊かにすることで、より多くの人が外出を自粛できればと思っている。
外出自粛は権利の侵害ではありません。外出を減らす事で社会全体での感染を減らすための協力です。妊婦に席を譲る事は、妊婦以外が席に座り続ける権利を侵害しないように、道徳と同じものです。そして外出自粛は回り回ってあなたとあなたの大事な人が死ぬ確率を少しでも下げる数少ない堅実な方法なのです。あなたの窮状はわかります。そして同時に世界も窮地にいます。どうか家にいてください。
もったいをつける必要もないので最初にtake home messageから伝えると、人間が充実した一日と感じるのは、その1日に「製作」があったか、という事である。絵心のある人間なら絵でも良いが、そういう人は既に豊かな余暇を過ごしていると思うので、何の特技もない人でもできるものを列挙する。
料理
料理は立派な制作だ。誰だって最初は初めてだが、料理にルールはない。謎の調味料を大量に入れたり、こだわった料理や素材に初手でチャンレジしない限り、食べられる範囲に必ず着地する。それが不安な人はググればいくらでもレシピは出てくる。食べログなら食レポが100以上あるやつを選べば、普通か美味しいかのどちらかにはなる。不味くはならない。レシピにある照りを出せ、とろみをつけろ、という言葉も、最初は無視してよい。というか作ってる途中で美味しそう!と思う瞬間があればそこで料理を中断し食べ始めて構わない。それが料理だ。料理する時間は生活をしていく上でのサンクコスト、つまりどのみち失われる時間なので、その時間を楽しい「製作」の時間に代えるのは一番賢いやり方だ。
アイロンをかける
アイロンは良い。たいていの人は別に服にしわがあっても死ぬわけではないが、しわがなくパリッと折り目のついた服は着ていて気持ちがいい。服がなくなったらカーテンにアイロンをかけるのも楽しい。これを読んでる人はアイロンとか絶対にめんどくさい!と思っていると思うし自分も最初はそう思っていたが、そこに存在したしわが消え、何もない所に折り目ができるというのはアイロン台の上の天地創造で、自分は全知全能の唯一神の疑似体験ができるのだ。アイロン台の上だけとはいえ、しわと折り目の生殺与奪に関する全権限を持っているというのはなかなかの非日常だ。この創造的行為を製作と言わず何と呼ぼうか。
歌を歌う
好きな曲を聴きながら声に出して歌う。それも歌詞を見ながら。一回で終わりじゃなくて、満足のいくまで何回でも。形に残らないものだって、自分で能動的に何か満足のいくもの、美しいモノを作り上げたらそれは製作だ。お気に入りの曲を見つけて、いつ歌っても完璧になるまで歌おう。そしてこの新型コロナウイルスの流行が終わったら、みんなでカラオケに行って披露しよう。
動画の投稿
カラオケに行くのが待ちきれない人は、動画をとって投稿するのもいいだろう。何も歌手を気取ってyoutubeにアップする必要はない。tiktokでもインスタでもサビの1フレーズでも替え歌でもいい。でもアップすると決めたら得心の行くまで凝ろう。何度リテイクしてもいい。奇跡の1ショットが撮れるまで繰り返して日が暮れても、それで満足のいく1本が撮れたら十分に充実した一日に思えるだろう。
洗濯
まぁ洗濯は、まぁ日常でも回すし全自動洗濯機だと製作感は確かにない。しかしソファのカバーやカーテンなどはどうだろうか。いつか回さなくちゃ、しかしまだ大丈夫だろ、と思っていた大物をまとめて洗うというのは気持ちがいい。今思いついたけど、次カーテンを洗う時は布をギリシャ人みたいに体に巻き付けてテルマエロマエのコスプレやってみたいと思っている。
ネジを締める
これは馬鹿にされがちだけど、絶対に充実するやつ。日頃からぐらぐらしている家具や自転車のパーツはないだろうか。あるならばリストアップして、ドライバをもって1日で全部締めて回ろう。ネジを締めるというとても簡単な作業なのに、ぐらつきがない、あるいは緩む心配がなくなったというのは、何かを作り上げたかのような達成感がある。
勉強
学生だけに限った事ではない。より知識を深めた自分を作り挙げるという意味で「製作」の要素は強い。幸いな事に今多くの学問系のコンテンツが無料で公開されており、気になるけど体系的に学ぶ時間がなかった人にとっては時間もコンテンツもありまさに福音である。学生時代は勉強とテストを同一視してテスト勉強は嫌いだった人でも、学ぶこと自体は案外苦痛ではないものである。またニュートンが主要な発見をしたのもペストで大学が休講になっていた時期であり、今の時期に独学した者から人類を推し進める発見をする人が一人くらいは出るかと思うと期待が止まらない。
ベランダ
自宅にベランダがあるならば活用しよう。多くの人はベランダが未開拓だが、その開拓を始めれば時間がいくらあっても足りないし、目に見えてベランダが快適になるのは達成感がある。その第一歩はウッドタイルを敷く事である。自宅のベランダは最初から石みたいなタイル敷きだったが、あるのとないのでは大違いだ。ながらく放置していたベランダだが、ウッドタイルを敷いてから、防腐・撥水の塗料を塗ったり、ウッドデッキに似合う椅子を置いたり、朝ごはんをそこで食べたりと進化が止まらない。
筋トレ
ボディメイクこそ製作の本髄ともいえるかもしれない。1日筋トレするだけでその日には充実感があるし翌日には筋肉痛が達成感を教えてくれる。一か月筋トレすれば目に見えて筋肉がついてくる。筋トレのやり方がわからないならyoutubeにはいろんな筋トレオタクが動画をアップしている。曜日を決めてやりこむことで、前はきつかったメニューがどんどん楽になっていく感覚が体でわかるのも醍醐味だ。女性の方で運動した事がない人は筋肉がつきすぎたらどうしようと思うかもしれないが、その心配はいらない。同じ重さなら脂肪は筋肉よりかさばる。だから筋トレで体重が変わらない場合見た目は細くなるし、運動習慣のない女性がそう簡単に筋骨隆々にはなれない。
文章を書く
文才はいらない。何なら人に見せなくてもいい。キーボードでもいいし、万年筆でもいい。アマプラでもネトフリでも映画を見たら感想を文字にしてみる。あるいは今日考えた事、あるいは窓からの景色を眺めながらそれを小説にするとしたらどう描写するだろうか、というのでもいい。考えて、自分が納得する美しい文章を作ろう。他の人がどう思うかなんて関係ない。もちろんそれがキラキラしている必要だってない。今の不安な気持ちや焦りや絶望、怒りだってよい。無限の白紙を前に自分の感情に名前を与えて、書き出す事で関係性を整理していくと、途方もない感情に思えたものが存外に単純に思えてきたりするものだ。そしてまた書き出してもなお深刻な問題に見えたものも、来週にその文章を目にすると、些末な事だったりする。まずは好きに文章を書きだそう。twitterのように文字数制限もない。あるいは人に見てほしいものが出来上がったら、noteやFBに投稿しよう。ただしその時には攻撃的な発言には気を付けて。少し似ているけど、俳句や短歌も楽しい。満足のいく一句というものはなんど見ても口にしても気持ちのいいものだし、季節や状況が変わった後に見返すと、タイムカプセルのように当時の情景が蘇る。文章というものは腐らない。いつかまた、コロナが終息したら、そのタイムカプセルを開けよう。ネットに公開してもいいし、あるいはそっと自分だけで独り占めしてもいい。文を書くというのは作ったものがかさばらず、かつ簡単に保存できるという点で究極の製作だ。
私の偏ったライフスタイルでも、ざっと上げるだけでこれくらい挙がる。「半分くらい家事だろ!」と思う人もいるだろう。その通りだと思う。しかしどうせやるなら、そこに「製作」の要素を見つけ、楽しくやるに越したことはない。製作とは、義務を離れた途端、娯楽になるし、製作から娯楽が失われれば義務作業になってしまうのだ。
我々が誰であるかを忘れたか。ホモサピエンスである以前に、我々はホモ・ルーデンスだぞ。遊びは文化に先行し、人類が生んだあらゆる文化はすべて遊びの中から生まれた。 遊びこそ、娯楽こそが、人間活動の本質である。その本質を外出自粛は奪う事はできない。生活の中に、自宅の中に、家事の中にすら、娯楽はある。そして効率よく簡単に娯楽を見つけるコツとはそれが「製作」の要素を持っているかなのだ。
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